たまにはいいでしょ、って? 珍しいこと言うじゃん。お外で「仲良し」するの、いつもは苦手なタイプなのに。君って気まぐれなところあるよね。それに、意外と頑固だし。……君のそういう一面、あの大学で知ってた人ってあたしだけじゃないかな。

「まぁ別に、たまにだったらいいけど……」なんか、ちょっと悔しい。付き合ったばかりの頃、君のほうがあわあわしてたのに。今はあたしのほうが余裕ないみたいじゃん。……まぁ、でも。「へへ……なんだか懐かしいね、こういうの」

 たまにはいいでしょ、かぁ……。君のほうから当たり前のように提案してくれる関係。こんな日常を築けるようになれたこと、未だに信じられねぇ〜って思ったりするの。あたしだけかな。……ねぇ、君はどう? 

「ねぇ。見てみて、あたしらの影」

 こんなふうにくっついたら、ほら。あたしの影、君のに丸ごと隠れちゃった――辺りはすっかり薄暗いけど、町中の影はまだ、夜に統べられることなく伸び続けている。

 出会ったばかりの当初、お互いの身長って同じくらいだったのに。大学生って、背ぇ伸びるのかな。

 そんなことを考えていたら、僕らが付き合うようになったのもこれくらいの季節だったなーって君が言うから。つい、些細な幸せを噛みしめる。

 すごすぎない? 二人だけの思い出を待ち合わせ場所にして、あたしらはいつだって時を超えられちゃうんだよ。

「ずっと、このままがいいな……」

 思わず口から溢れてしまった。響き方がもう、《《全心》》から生まれた本音なんだって、ありありと物語ってる。

 すると君が、僕もだよって応えてくれて。それから続けて、そんなふうに素直なの珍しいね、夕暮れ時だから? なんて、デリカシーに欠けた言葉も付け足して(いつもそう。君って一言余計か、言葉が足りなすぎる)。

「そうね。きっと夕日のせいかな」

 そう。夕日と、君のせい。君があたしを変えちゃったんだよ。まぁ、出逢って五年も経ってみましたけども――この影みたいに変わってしまったこと、いくつかあるだろうけど。変わってないことのほうが、きっと遥かに多いんだろうなぁ。


「あのさ。明日もし晴れたら、久しぶりにデートしようよ。お互い仕事が忙しくて、なかなか予定合わせられなかったし」

 あたし史に残る最高の閃きを持ちかけてみる。
えっ。君がデートプラン考えてくれるの?……んふふ、ありがとっ。じゃあ一緒に考えようよ。