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「俺のMBTI、なんだと思う?」


 つり気味なわたしの猫目は、まんまるになって驚きが滲んでいるだろう。駅前の噴水広場ではじめましての待ち合わせ。それから駅の近くの適当なカフェに入って案内された席について、彼はコートを荷物入れに丸めて置いて、わたしも同じく丸めて自分の背中と背もたれの間に隠して、ふうと一息、第一声。全員がわたしと同じ反応になるに違いない。

 MBTI自体、わからないわけはない。16パターンに分けられる性格診断だ。韓国では自己紹介にMBTIを入れ込むほど主流で、その流行の波は日本にも訪れていた。

 わたし自身、MBTIは得意だ。得意、という言い方は正しいかわからないけれど、MBTIで診断されるアルファベット4文字とそれに対応した日本語での特徴も一致している。この人は主人公っぽいな、あの人は擁護者かも、と考えるのも苦じゃない。

 が、しかしだ。MBTIマスター(仮)のわたしをもってしても、初対面で自分のMBTIを尋ねてくるのはいかがなものか。「私、何歳に見える?」に近しいものを感じる。まして、わたしたちは昨日の夜にマッチングアプリで無事マッチしトントン拍子で翌日、つまりは今日、会おうということになったのだ。

 どこに行くか、何をするかすら決めていなかった。ただ時間が合ったから会ってみた。関係値マイナススタートからMBTI、この時点で彼自身への評価もマイナスだ。無意識でもポイント制にしてしまうのは、マッチングアプリの良くないところだと思う。