キミに告げる、そのときに

 教室では、いつも寝ているフリをしていた。だからだろう。誰も、必要以上に話しかけてこなかった。
「あっ、野々宮さんが起きてる」
 声がした方へ顔を向けると、クラスの中心でよく笑っている子がいた。確か、名前は折宮来夏(おりみやらいか)だった気がする。自己紹介の時の話はあまり聞いていなかったせいか疑心暗鬼の中、名前を呟く。
「えっ、名前覚えてくれてたの?」
 名前が合っていて、心の中で息をつく。だけど、また誰かに声を掛けられる。
「ほんとだ。野々宮さんおはよ」
 そう折宮さんの後ろから現れたのは、えっと誰だっけ。さすがに、折宮さんのことはギリギリ思い出せたけど、それが二度も起きるとは思わないし。迷った末、名前を聞くことにした。
「あー、俺ね?俺は水嶋伊都(みずしまいつ)。これからよろしく」
 名前を覚えていなくて、不快にすると思っていたけど彼は快く名前を教えてくれた。
「ふふ、私は覚えてもらえてたよ」
「どーせ、まぐれだろ。お前だってギリギリまで忘れられていただろ」