恋する空

はじめは無視していた有馬さん。次第に苛立ち始め、僕の体を離すとガウンを羽織り、むすっとした表情で玄関に向かった。彼がいなくなった隙に、サイドテーブルの上にあった携帯を握り締めた。
「ちょっと待て‼」
「煩いな。貴方に用はないの」
ドンと荒々しくドアが開いて、お姉ちゃんが入ってきた。普通、この状況なら怒り狂って、飛び掛かってくるのに・・・。なんで、そんな、悲しい眼差しで僕を見るの?
「ほら、突っ立ってないで、真尋を連れて行くんでしょう?」
ドアの向こうにもう一人、誰かいるみたいだった。
「真尋、これを羽織って。さっさとこの家から出て行きなさい」
お姉ちゃんが、手にしていたシャツを肩にそっと掛けてくれた。
『何で!?僕の事、嫌いなのに、どうして、こんなに優しくしてくれるの?』
「あなたの事は嫌いよ。でも、弟なのは確かな訳だしーー」
生まれて初めてお姉ちゃんが弟って呼んでくれた。恥ずかしのか、すぐに顔を逸らしてしまったけど、すごく嬉しい。
「ほら、早く‼」
お姉ちゃんに急かされ姿を現した人はーー。
『・・・先輩・・・なんで・・・?』
予想もしていないことにすごく驚いた。まさかこんな格好を見られるとは・・・。恥ずかしくて下を向いた。寒くもないのにシャツを持つ手がブルブルと震える。
「真尋は渡さない‼俺のだ‼」
有馬さんが喚き散らしながら先輩の前に立ち塞がった。
「彼が震えているの分かりませんか⁉貴方が好きなら、あんなに怯える事はないはずーー」
先輩は有馬さんに睨み付けられても動じる素振りを一切見せなかった。彼の体を払い除けると、僕のところに来てくれた。目のやり場に困ったみたいで、ちょっとだけ頬を赤らめていた。
「じろじろ見なくていいから」口を尖らせながら、タオルケットで体をグルグルと巻いてくれた。
『ひ、一人で歩けます』
ふわりと体が宙に浮いて、気付いたときにはお姫様抱っこされていたからびっくりした。