文化祭初日を終えて、俺と鈴はあの公園を訪れている。なかなか話せるタイミングがなくてどうしようかと悩んでいたが、彼女の方からメッセージで誘ってくれた。
今日は向かい合ってではなく、隣に座っている。あまりない光景に少しドキドキする。それは彼女も同じみたいで、お互い目線が合わない。
長い沈黙を破ったのは鈴だったのだが、それは演劇のことではなかった。
「本当に、私で、いいの? 私が先に告白まがいなことしちゃったんだけどさ……」
相変わらず目線は合わないままだが、彼女の顔はものすごく赤く染まっている。
「俺は、本気だよ」
彼女の瞳をしっかり捉えて伝える。夏に吹く風は熱いのに、とても涼しく、なんなら冷たく感じる。俺も人のことを言えないくらい顔が赤いのだろう。早く逸らしてしまいたい。でもそれは許されないような気がして、なんとか我慢する。
「で、でも私めんどくさいよ? だってほら、まだやっぱり嫌がらせとかされてるから、せっかく抜け出した君を巻き込むのは申し訳ないし、すぐ嫉妬すると思うし、それに、それに……」
あたふたとする鈴は、呼吸を忘れているかのように矢継ぎ早に言葉を並べていく。そんな彼女が可笑しくて、愛おしくて、つい笑ってしまう。
「そんなの、関係ないよ。君が、好きだから」
恥ずかしさも忘れて、しっかりと伝える。この自分勝手な俺の気持ちを受け止めて欲しいから。
「ずるいよ……、バカ……」
嬉しいのか、悔しいのか、目が少しずつ潤んでいく彼女。そしてそのまま、俺の胸元に抱きついてくる。
「私も、大好きだよ。暁斗くん」
その言葉を聞いた俺は、彼女と出会えた奇跡を噛み締める。
大嫌いだった自分を、変えてくれた人。
でも、本当の自分も好きでいてくれる人。
そんな人との、今までの思い出が次々と蘇る。
演劇が大好きで、部活の日はいつも目を輝かせる君。
俺や他の人ばかり気にかけて、自分のことは後回しにしてしまう君。
なかなか「苦しい」、「辛い」を言わない君。
本当はものすごく緊張していても強がる君。
頭が良さそうなのに、どこか抜けてる君。
俺のことを、いとも簡単に変えてしまった君。
はにかんだように笑って見せる君。
花の咲くような、煌々と輝く綺麗な笑顔の君。
その全てが愛おしくて、大好きで、絶対に手放したくない。
なんとしても、守り続けていたい。
ずっと、そばで見続けていたい。
演技で埋めていた日々を、君は「優しい役」と言ってくれた。
でも、今ならわかる。
君と共に過ごしたあの日々——苦しみ、泣いて、笑い合ったあの日々は、「演技」なんかじゃない。
誰にも、「演技」だなんて言わせない。
「絶対に、離さない」
思ったことをつい口にしてしまうと、お互いの抱きしめる力は、より強くなった。
今日は向かい合ってではなく、隣に座っている。あまりない光景に少しドキドキする。それは彼女も同じみたいで、お互い目線が合わない。
長い沈黙を破ったのは鈴だったのだが、それは演劇のことではなかった。
「本当に、私で、いいの? 私が先に告白まがいなことしちゃったんだけどさ……」
相変わらず目線は合わないままだが、彼女の顔はものすごく赤く染まっている。
「俺は、本気だよ」
彼女の瞳をしっかり捉えて伝える。夏に吹く風は熱いのに、とても涼しく、なんなら冷たく感じる。俺も人のことを言えないくらい顔が赤いのだろう。早く逸らしてしまいたい。でもそれは許されないような気がして、なんとか我慢する。
「で、でも私めんどくさいよ? だってほら、まだやっぱり嫌がらせとかされてるから、せっかく抜け出した君を巻き込むのは申し訳ないし、すぐ嫉妬すると思うし、それに、それに……」
あたふたとする鈴は、呼吸を忘れているかのように矢継ぎ早に言葉を並べていく。そんな彼女が可笑しくて、愛おしくて、つい笑ってしまう。
「そんなの、関係ないよ。君が、好きだから」
恥ずかしさも忘れて、しっかりと伝える。この自分勝手な俺の気持ちを受け止めて欲しいから。
「ずるいよ……、バカ……」
嬉しいのか、悔しいのか、目が少しずつ潤んでいく彼女。そしてそのまま、俺の胸元に抱きついてくる。
「私も、大好きだよ。暁斗くん」
その言葉を聞いた俺は、彼女と出会えた奇跡を噛み締める。
大嫌いだった自分を、変えてくれた人。
でも、本当の自分も好きでいてくれる人。
そんな人との、今までの思い出が次々と蘇る。
演劇が大好きで、部活の日はいつも目を輝かせる君。
俺や他の人ばかり気にかけて、自分のことは後回しにしてしまう君。
なかなか「苦しい」、「辛い」を言わない君。
本当はものすごく緊張していても強がる君。
頭が良さそうなのに、どこか抜けてる君。
俺のことを、いとも簡単に変えてしまった君。
はにかんだように笑って見せる君。
花の咲くような、煌々と輝く綺麗な笑顔の君。
その全てが愛おしくて、大好きで、絶対に手放したくない。
なんとしても、守り続けていたい。
ずっと、そばで見続けていたい。
演技で埋めていた日々を、君は「優しい役」と言ってくれた。
でも、今ならわかる。
君と共に過ごしたあの日々——苦しみ、泣いて、笑い合ったあの日々は、「演技」なんかじゃない。
誰にも、「演技」だなんて言わせない。
「絶対に、離さない」
思ったことをつい口にしてしまうと、お互いの抱きしめる力は、より強くなった。


