「呪われた姫……?」

陽翔はその言葉を噛みしめる。

「詳しく聞かせてもらえるか?」

アリシアは少しだけ迷った様子を見せたが、やがて静かに語り始めた。

「私は……母の血を受け継いでいます。母は、かつて滅びた魔族の王国の王女でした。」

魔族——それは、人間と敵対し、幾度となく戦争を繰り広げた存在。

「だから、私は“魔王の血”を継ぐ者として、王国では異端視されてきました。父王は私を庇ってくれましたが、ついに……暗殺未遂事件が起こり、私は逃げざるを得なくなったのです。」

「なるほどな。」

陽翔は腕を組み、考え込んだ。

「で、お前はこれからどうするつもりだ?」

アリシアは静かに首を振った。

「……わかりません。ただ、私は生き延びるしかないのです。」

「ふむ。」

陽翔はしばらく考えた後、口を開いた。

「面白いな。」

「……え?」

「俺が、お前を守ってやるよ。」

「なっ……!?」

アリシアの瞳が驚きで見開かれる。

「なんで……?」

「理由は簡単だ。俺はこの世界のことをもっと知りたいし、何より……俺は強い。この力を持て余すのも勿体ないからな。」

陽翔はにやりと笑う。

「それに、お前みたいな“面白い存在”を放っておくのは、もったいないだろ?」

アリシアは呆気にとられたように彼を見つめた後——

「……ふふっ。」

小さく笑った。

「あなたって……変な人ですね。」

こうして、転生賢者 神崎陽翔 と 呪われた姫アリシア の旅が始まった。

この世界の裏に渦巻く陰謀も知らぬまま——。