まずは情報を集めるため、近くの街を目指すことにした。

森を抜け、丘を越えると、遠くに城壁に囲まれた都市が見えてきた。

「……あそこが最寄りの街か。」

陽翔はそのまま進もうとしたが、ふと前方から悲鳴が聞こえた。

「きゃあっ!」

駆け寄ると、そこには数人の盗賊に囲まれた一人の少女がいた。

彼女は長い銀髪に透き通るような青い瞳を持ち、身にまとう純白のドレスは汚れながらも品の良さを感じさせる。

「助けて……!」

「おいおい、こんな美人が一人で森を歩いてるとはな……。こりゃあ、運がいいぜ。」

盗賊たちがにやつきながら少女を取り囲む。

陽翔は溜息をつきながら歩み寄った。

「おいおい、あんまり品のない真似はするもんじゃないぞ。」

「……誰だ、テメェ?」

陽翔は無言で手をかざした。

「《炎槍フレイム・スピア》」

その瞬間、巨大な炎の槍が出現し、盗賊たちの足元に突き刺さる。地面が爆ぜ、炎が周囲を包んだ。

「な、なんだと……!?」

「くっ……おい、逃げるぞ!」

盗賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

陽翔は少女に目を向けた。

「……怪我はないか?」

「あなたは……?」

少女は不安げな表情を見せた。

「旅の者だよ。ところで、君の名前は?」

少女は少し躊躇した後、答えた。

「……アリシア。アリシア・フォン・ルクセリアです。」

その名を聞いた瞬間、陽翔の脳裏にある情報がよぎる。

ルクセリア王国——この大陸において強大な軍事力を持つ王国。その王家の血を引く者が、この森で盗賊に襲われていた……?

「……王女、か。」

陽翔の言葉に、アリシアの表情が強張る。

「っ……どうして、それを?」

「単純な推測さ。君の衣装、雰囲気、それにその名前を聞けば、ある程度察しがつく。」

アリシアは一瞬、迷ったようだったが、やがてため息をついた。

「……そうです。私はルクセリア王国の王女。けれど、今は国に戻ることができません。」

「……ほう?」

「私は……“呪われた姫”なのです。」