───裕太と初めて会った時、白銀の胸は高鳴った。確かにハリネズミカフェと勘違いしていた自分もいるが、そのハリネズミの半獣、貴重な『干支シリーズ』の裕太と出逢えるなんて。白銀は自分の友人に感謝した。


 きっと、自分が同性の半獣しか愛せない事を知っている友人が、気を聞かせてハリネズミカフェと言ったのだろう。それまで白銀は金で相手を買う事に嫌悪感を抱いていた。


 特定のパートナーがいない時期は、一夜限りの関係で良いと思っていた。そんな遊び方をする友人に狼の半獣・[[rb:海斗 > かいと]]は心配した。


 そんな時に、この高級男妓楼『華月』の噂を耳にした。特権階級の者しか店に行く事が出来ない、麗しく美形の人間や半獣、獣人の男が奉仕する楽園。


 中でも一番の売れっ子は、ハリネズミの半獣だという。海斗は白銀がハリネズミ好きな事を思い出し、どうせなら特定の相手とだけ身体を重ねる方が良いのでは?と思った。高級妓楼なら病気の心配も限りなく無いだろう。


 いくら気を付けているといっても、一夜限りの関係なんてリスクが多過ぎる。余計なお世話と思いつつも、権力のあるニホンオオカミの半獣である白銀にハリネズミカフェと言って『華月』を紹介した。


 ハリネズミ自体絶滅危惧種なのに見事に騙される白銀。海斗はハリネズミの半獣が実際にいるのなら、きっと白銀は気に入るだろうと思っていた。

 
 海斗の予想通り、白銀は裕太を見た瞬間に心を奪われた。愛らしい容姿に控えめで、怯えがちな性格。この場所が性的な店だと知らなかった白銀だが、密かに股間を熱くした。裕太を組み敷いたら・・・ ・・・と考えるだけで、自身が昂っていくのを感じた。


 しかし裕太の置かれている状況を目の当たりにして、怒りで楼主を殴りそうになった。可愛い裕太を殴る、蹴るだけではなく、日常的に性的暴行もしているのだろう。怒りを通り越して憎しみが芽生えた。同時に裕太を抱く事の出来る楼主に密かに嫉妬している自分がいて、恐怖を覚えた。


 愛らしい裕太を手籠めにしたくなる気持ちも分かる。裕太は困った顔も美しく、より乱暴にしたくなる。それでは周りと変わらないので、この感情は隠さないといけないと白銀は思った。