白銀がぐっと裕太の細い腰を抱きしめるので、ポケットにしまってあった小ぶりの折り畳みナイフが落ちてしまった
「・・・ ・・・‼」
裕太はしまった、と思って慌ててナイフを拾おうとした。が、白銀に裕太の細い手首を掴まれてしまった。
「‼」
白銀はナイフを拾うと、素早く遠くに放り投げた。
「危ないじゃないか。裕太が怪我したらどうするんだ。リンゴの皮でも剥くつもりか?」
「か、返して下さい、使うんです・・・ ・・・」
「・・・ ・・・客でも殺すつもりか・・・ ・・・?」
「ち、違います、自分に使うんです‼」
ナイフを持っていた事が楼主に伝われば折檻をも超える激しい暴力や暴行をされる事は分かり切っていた。白銀は手首を離してくれないままだ。
「返して、早くぼくは死なないとまた乱暴される・・・ ・・・‼」
裕太は身体を売る事も辛かったが、店の人間や半獣、獣人達にも犯される事が何よりも辛かった。裕太はパニック状態になって、
「嫌だ、お客にも店の人達にも乱暴にされるの・・・ ・・・死なせて、死なせて‼っうう・・・ ・・・」
「裕太⁉」
裕太は持病のパニック発作で崩れ落ちてしまった。ぜえはあと苦しそうに呼吸をし、身を丸くして身体を震わせた。裕太の大声を聞きつけ、妓主や店の者が駆けつけてきた。
「失礼致します、何か不都合がありましたか⁉」
真っ先に楼主は倒れている裕太よりも客の白銀の心配をした。
「私の心配じゃなくて裕太の心配だろう⁉こんなに苦しんでいて・・・ ・・・救急車を!」
「そんな必要はございません」
ぴしゃりと言い放つ楼主を白銀は疑問に思った。
「発作はこの子の持病です。何かにつけてパニックになって・・・ ・・・倒れてしばらくすれば治るので、しばしお待ちください」
そう言い放つと、楼主は倒れて苦しんでいる裕太の腹を思い切り蹴った。
「・・・ ・・・うっ・・・ ・・・!」
「何さぼっているんだ。仕事に戻りなさい。ん?あれは・・・ ・・・」
目の前で起こる行為が信じられず呆然としてしまった白銀だが、楼主が飛ばされたナイフを見つけた様だ。まずいと思った。裕太が隠し持っていたと分かれば、これ以上の暴力や暴行をされるに違いない。
「ああ、私のナイフです。持ってきた果物でも剥こうと思いまして。お店の方に頼めばよかった。危険な事に使うつもりは無かった。申し訳ない」
「そんな・・・ ・・・白銀さまにはこの様なご無礼を申し訳ございません‼ほら裕太、起きるんだよ!」
楼主は裕太の肩まである癖でウエーブがかった髪をわし掴みにして起こそうとした。
「ちょっと、乱暴はよして下さい‼いつもこんな事をしているんですか⁉」
白銀は未だに呼吸を乱して涙目の裕太を見て叫んだ。
「いつもの事ですよ。早くこっちも借金を返してもらわないと・・・ ・・・」
あまりにも乱暴な仕打ちを目の当たりにして、白銀は裕太を一刻も早く自由にしてあげたくなった。
「いくらです?」
「・・・ ・・・はあ?」
「裕太の借金はいくらですか?」
白銀は裕太を自分の方に引き寄せ、抱きしめた。
「かなりな金額です。利子があるので到底返しきれないでしょう。返しきる前に死なれてしまわないか心配です」
金の事しか考えない楼主に白銀すら殺意を感じた。このままでは、裕太は店にいいように利用されるだけだ。
「裕太の借金を返せば、この子は自由になれるのか?」
「・・・ ・・・身請けですか?裕太は一番の売れっ子ですし、『干支シリーズ』なので店への損害も大きいのでお断りしているんですよ。お客様には末永く通って頂く方が店も盛り上がりますし・・・ ・・・」
とことん金に執着する楼主。白銀は可愛い裕太が傷付くところをこれ以上見たく無かった。
「裕太は私が貰う。好きなだけ金を持っていくといい」
白銀は、楼主に向かって財布からカードを投げつけた。金の亡者は嬉しそうにそれを拾い、顔を強張らせた。
「・・・ ・・・これは・・・ ・・・プラチナブラック・・・ ・・・‼」
プラチナブラックのカードとは、限度額の無い社会的地位の非常に高い者にしか与えられないカードだった。国家に関連する者や、裏社会をまとめているほんの一部の者・・・ ・・・法で裁きを与える力を持つ者など、人口の一%以下が所持しているカードだ。
「・・・ ・・・あまりニホンオオカミを怒らせない方がいい。一族代々国と癒着がある」
「・・・ ・・・ひいっ・・・ ・・・せ、せめてお情けを‼・・・ ・・・」
高級男妓楼と言っても非人道的な店は多い。白銀が出るところに訴えたら、逮捕以上の・・・ ・・・今度は楼主が拷問される事になるだろう。
ニホンオオカミの半獣がここまで権力を持っている事を想定してなかった楼主は、
「どうか、どうかお助けを・・・ ・・・!」
と見苦しく白銀に懇願してきた。
「さっさと希望の金額を言え。裕太は貰う」
楼主は震えながら、金の亡者らしからぬ正当な金額を白銀に伝えた。これで裕太は自由の身。裕太をぎゅっと抱きかかえると、白銀は足早に店を後にした。
「・・・ ・・・‼」
裕太はしまった、と思って慌ててナイフを拾おうとした。が、白銀に裕太の細い手首を掴まれてしまった。
「‼」
白銀はナイフを拾うと、素早く遠くに放り投げた。
「危ないじゃないか。裕太が怪我したらどうするんだ。リンゴの皮でも剥くつもりか?」
「か、返して下さい、使うんです・・・ ・・・」
「・・・ ・・・客でも殺すつもりか・・・ ・・・?」
「ち、違います、自分に使うんです‼」
ナイフを持っていた事が楼主に伝われば折檻をも超える激しい暴力や暴行をされる事は分かり切っていた。白銀は手首を離してくれないままだ。
「返して、早くぼくは死なないとまた乱暴される・・・ ・・・‼」
裕太は身体を売る事も辛かったが、店の人間や半獣、獣人達にも犯される事が何よりも辛かった。裕太はパニック状態になって、
「嫌だ、お客にも店の人達にも乱暴にされるの・・・ ・・・死なせて、死なせて‼っうう・・・ ・・・」
「裕太⁉」
裕太は持病のパニック発作で崩れ落ちてしまった。ぜえはあと苦しそうに呼吸をし、身を丸くして身体を震わせた。裕太の大声を聞きつけ、妓主や店の者が駆けつけてきた。
「失礼致します、何か不都合がありましたか⁉」
真っ先に楼主は倒れている裕太よりも客の白銀の心配をした。
「私の心配じゃなくて裕太の心配だろう⁉こんなに苦しんでいて・・・ ・・・救急車を!」
「そんな必要はございません」
ぴしゃりと言い放つ楼主を白銀は疑問に思った。
「発作はこの子の持病です。何かにつけてパニックになって・・・ ・・・倒れてしばらくすれば治るので、しばしお待ちください」
そう言い放つと、楼主は倒れて苦しんでいる裕太の腹を思い切り蹴った。
「・・・ ・・・うっ・・・ ・・・!」
「何さぼっているんだ。仕事に戻りなさい。ん?あれは・・・ ・・・」
目の前で起こる行為が信じられず呆然としてしまった白銀だが、楼主が飛ばされたナイフを見つけた様だ。まずいと思った。裕太が隠し持っていたと分かれば、これ以上の暴力や暴行をされるに違いない。
「ああ、私のナイフです。持ってきた果物でも剥こうと思いまして。お店の方に頼めばよかった。危険な事に使うつもりは無かった。申し訳ない」
「そんな・・・ ・・・白銀さまにはこの様なご無礼を申し訳ございません‼ほら裕太、起きるんだよ!」
楼主は裕太の肩まである癖でウエーブがかった髪をわし掴みにして起こそうとした。
「ちょっと、乱暴はよして下さい‼いつもこんな事をしているんですか⁉」
白銀は未だに呼吸を乱して涙目の裕太を見て叫んだ。
「いつもの事ですよ。早くこっちも借金を返してもらわないと・・・ ・・・」
あまりにも乱暴な仕打ちを目の当たりにして、白銀は裕太を一刻も早く自由にしてあげたくなった。
「いくらです?」
「・・・ ・・・はあ?」
「裕太の借金はいくらですか?」
白銀は裕太を自分の方に引き寄せ、抱きしめた。
「かなりな金額です。利子があるので到底返しきれないでしょう。返しきる前に死なれてしまわないか心配です」
金の事しか考えない楼主に白銀すら殺意を感じた。このままでは、裕太は店にいいように利用されるだけだ。
「裕太の借金を返せば、この子は自由になれるのか?」
「・・・ ・・・身請けですか?裕太は一番の売れっ子ですし、『干支シリーズ』なので店への損害も大きいのでお断りしているんですよ。お客様には末永く通って頂く方が店も盛り上がりますし・・・ ・・・」
とことん金に執着する楼主。白銀は可愛い裕太が傷付くところをこれ以上見たく無かった。
「裕太は私が貰う。好きなだけ金を持っていくといい」
白銀は、楼主に向かって財布からカードを投げつけた。金の亡者は嬉しそうにそれを拾い、顔を強張らせた。
「・・・ ・・・これは・・・ ・・・プラチナブラック・・・ ・・・‼」
プラチナブラックのカードとは、限度額の無い社会的地位の非常に高い者にしか与えられないカードだった。国家に関連する者や、裏社会をまとめているほんの一部の者・・・ ・・・法で裁きを与える力を持つ者など、人口の一%以下が所持しているカードだ。
「・・・ ・・・あまりニホンオオカミを怒らせない方がいい。一族代々国と癒着がある」
「・・・ ・・・ひいっ・・・ ・・・せ、せめてお情けを‼・・・ ・・・」
高級男妓楼と言っても非人道的な店は多い。白銀が出るところに訴えたら、逮捕以上の・・・ ・・・今度は楼主が拷問される事になるだろう。
ニホンオオカミの半獣がここまで権力を持っている事を想定してなかった楼主は、
「どうか、どうかお助けを・・・ ・・・!」
と見苦しく白銀に懇願してきた。
「さっさと希望の金額を言え。裕太は貰う」
楼主は震えながら、金の亡者らしからぬ正当な金額を白銀に伝えた。これで裕太は自由の身。裕太をぎゅっと抱きかかえると、白銀は足早に店を後にした。
