白銀の家を出ていくつもりだったが、裕太は熱を出してしまい、一人暮らしは出来ないままになっていた。裕太は白銀のキングサイズのソファで横たわっていた。


 「ごめんなさい、白銀。ベッド占拠しちゃって・・・ ・・・」


 「いいんだよ裕太、早く治せよ」


 白銀は仕事が忙しくなってきたようだが、裕太の為に時間を割いて側にいてくれた。


 「・・・ ・・・ありがとう白銀、おかゆとか作ってくれて・・・ ・・・」


 白銀は献身的に裕太を看病した。


 「気にするなって。体調悪いと随分と素直だな、裕太」
 

 裕太は照れて、
 

 「べっ、別にいつもと変わらないよっ」


 と恥じらって、リモコンで大型テレビのスイッチを入れた。すると。


 『こんにちわ〜っす!タイガで〜す!』


 裕太を『淫乱』とバカにしたホワイトタイガーの半獣で、モデルのタイガが画面いっぱいに写った。


 「・・・ ・・・いやっ・・・ ・・・!」


 裕太はテレビの電源を消すのかと思いきや、リモコンを画面に向かって思い切りぶん投げた。条件反射のようだ。


 「おいおい、テレビを壊す気かな?」 


 「あ、ごめんなさい・・・ ・・・タイガが嫌すぎて・・・ ・・・」


 白銀はテレビの電源を消し、投げられて落ちたリモコンを拾った。液晶画面は裕太の力が弱くて傷付かなかったのは幸いだ。


 「裕太って意外にやんちゃだよな」 


 「やんちゃって・・・ ・・・」


 裕太はハリネズミの半獣なので大人しいイメージがあった白銀だが、好奇心旺盛というか、なかなか活発だった。活発に一人暮らしの家を探しすぎたのも、熱を出した理由だ。あとはタイガの暴言のストレスだろう。ハリネズミはストレスに非常に弱いので、タイガみたいな奴とは関わってはいけないのだ。


 「やっぱりここで暮らすのが一番いいんじゃないか?」


 「養われるのは嫌だし、白銀がえっちだから嫌です」


 裕太はキッパリと言い放った。


 「ははは、言われてしまったね。バイトをして家賃を少し入れてくれるのでも気が楽にならないかな?」


 「それでも養われてる感がするよっ‼白銀のいいところは、耳としっぽがもっふもふなところだけだし」


 「そこだけ⁉」


 「身請けの感謝とかはあるけど、それとこれとは別だもん」


 ぷいぷいと裕太はふてくされるが、本気ではない。 


 「でも、白銀が働いてる博物館には興味があるよ。絶滅危惧種の動物に関わる仕事って、興味があるもん」


 「そうか。じゃあ裕太が熱が下がったら、一緒に職場に行くか」


裕太はガバっとベッドから起きると、


 「行きたい‼」


 と目をキラキラさせた。


 コラ、まだ寝ていろと言われながら、裕太は博物館へ行くことが楽しみで仕方がなかった。