二章



 ショッピングセンターから逃げるように外に出ると駅に直行し、三・四時間程電車に揺られながら県外へと出て、目的もなくさらに南下していた。自然とこのあたりで一番栄えている都市に向かっていた。
 ここまで来て私の心はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。ようやく自分を守る心の殻を再形成出来るようになったのである。
 車内から目的の都市が近づいてきたアナウンスが聞こえたので青木と一緒に降りる準備をする。
 到着してホームに降り立つと、外の新鮮な空気を入れ込むように思いっきり深呼吸した。
 憧れの都市。一度来てみたかったんだ。一瞬嬉しくなるも、これから節約生活をしなくちゃいけないので、何処も行けない事に気が付いて気持ちが落ちていく。それにこれからホームレスと同じような生活をしなくてはいけない事を考えるとさらに鬱になってしまった。
 けれども、あの学校に通うより何百倍も良い気がした。
 すでに陽はとうに暮れていて真っ暗となっていた。それでも私が住んでいた場所と比べると街灯がとても多く、明るくて華やかであった。
 まずは手洗い場を見つけて中に入ってお洒落な服から着替える。黒くて地味な上着にズボン、さらに髪を隠すように帽子を被った。これで話さなければ一瞬女の子とは分からない筈だ。
 外で待っていた青木と合流すると、まずはコインロッカーで大きな荷物を預けて、スーパーに寄る事にする。
 スーパーでガムテープと総菜弁当を少し多めに買うと、自由に取って下さいと書いてあった段ボールを大量に抱えて店から出る。かなり常識外な数で怪しまれて声を掛けられないかヒヤリとしたけれど、店員に引き止められるような事は無かった。もう、あのスーパーには行かれないな。
 そのまま、大きな公園の中へと向かう。辺りは暗く目立たないけれども、人目を気にしながら、中へと入っていった。
 補正されている道から外れて、奥まで進んで茂みが強い所を探していく。良さそうな場所もあったけれどもすでに先客がいて使えなかった。
 ゆっくりと目立たないようにさらに進んでいき、公衆トイレも近くて、大きな木の下で茂みが強い良い場所を見つける。青木と相談しながらそこに決めると、段ボールで一人ずつ並んで横になれるスペースと屋根を作り、買ってきたガムテープを使って補強していく。
 補強が終わると青木がショッピングセンターで買ってきた床マットを敷き詰めて毛布と簡易枕を入れた。
 段ボール部屋の完成だ。うん、いい感じに作れたと思う。
 青木が私の顔をしっかりと見てくる。
「いいか、夜はなるべく一人で行動するな。トイレに行くのも必ず二人だ」
「えぇ。嫌なんだけど」
「身を守る為だ」
 青木が強く言うので聞く他無かった。仕方がないのでゆっくりと頷く。
「今日はもう寝た方はいいぞ。荷物は明日取りに行こう」
 彼に促されるままに段ボール部屋へと入った。一応段ボールで壁を作って仕切ってはあるけど、男の子の隣で寝るのは何だか気を使ってしまう。
 それにしても疲れた。思い返すと今日一日で色んなことが起こった。死のうと思った所を男の子に止められて、一緒に旅をする事になって、たくさん買い物をして、今までにないくらい電車に揺られた。
 そんな事があって疲れないわけがないのだ。床マットに重い身体は沈んでいく。
 すぐに意識が朦朧としてきて、脳みそが麻痺していった。そのまま瞳を閉じてしまうと深い眠りに落ちてしまった。