結局その後に宿題なんて手をつけられる状態ではなく、終わらないままに次の日となってしまう。唐突すぎて考えが全くまとまっていなかった。
とにかく真実が知りたかった。山崎の死と遺書に書かれている内容。知るには学校に行くしかない。俺は覚悟を決めて登校した。
教室に着くと、中の雰囲気は重く、誰が置いたのか分からないけれど山崎の机の上には花が綺麗に飾ってあり、それが異様に目立っていた。
机に向かおうと中に入って横切っていくと、すでに席に座っていた藍沢と視線が合い、俺に声を掛けてきた。
「大変なことになったな」
「ん?ああ、そうだな」
藍沢の言い方に引っかかりを覚えた。しかし、人が一人死んでいるのだ。妙な言い方になってしまうのも仕方がないような気がした。
藍沢とは一学期早々の席替えで離れ離れになってしまっていたので、話したのはそれっきりで俺は自分の席へと向かう。
荷物を机に置いた後、藍沢の所へ行っても良かったのだか、教室がそんな雰囲気ではなかった。
誰もが席に着いていて周りの話せる人と話しているだけで、ただ重い空気だけがのし掛かっていた。誰もがこの空気を取り除く事を望み、でも出来ないでいるようだった。
救いのような予鈴が鳴ってしばらくすると、担任教師が教室へと入ってきて教卓の前に立つ。着ているスーツが何だかいつもよくも黒く感じた。
誰もが担任教師の言葉を待っているようだった。俺以外にも自体を把握していない者達ばかりなのだろう。
担任教師はクラス全員が着席している事を確認するとまず、号令を命じた。終わると担任はゆっくりと口を開いた。
「皆さん、おはよう御座います」
口調はいつもと比べてとても暗くて重かった。
「皆さんも知っている通りですが、昨日山崎君が自殺をしました。非常に残念なりません」
担任教師が話すのを区切ると、手に持っていた細長い紙を上に掲げて、教室の後ろまで見せるようにする。
「ここに山崎君の遺書の写しがあります。本来ならば、読み上げるような物ではありませんが、遺書の中にこの内容を教室で読んで欲しいという要望があったので読みます。一度しか読みませんのでよく心得て聞いてください」
担任教師が遺書の写しを開く。教室には紙が広がる音だけが響いていた。
広げ終わるもいつまでも始まらない。疑問に思って担任教師の顔を見たら、今にも泣いてしまいそうな程に目が潤んでいた。それを誤魔化すように大きく息を吸った。
『最初に、この遺書の内容をクラス全員の前で読んで下さい。そして自分達が今まで行ってきた行為を悔いて反省して欲しいです。
俺にとって高校生活っていうのは最後のチャンスだった。今までの自分を払拭出来るような、何もかもがリセット出来るチャンスだった。でも、そのチャンスを俺は掴む事出来ませんでした。
勇気を持って話しかけにいったけれど、煙たがられ、相手にされず裏ではクスクスと、笑っていることは分かっていました。
ああ、もう無理だなって思いました。努力しても結局俺はツイていなくって、虐める人達は何処にでもいる。何処にいっても虐める人がいるので、俺はもう生きていく自信がありません。なので、死のうと思います。私が自分を殺したのではなく、クラスメイト全員が、私を死に追いやったのです。覚えておいてください。死んだ後に幽霊になれるとしたら、俺はクラスメイト全員を恨んでやりますから覚悟しておいて下さい。
特に青木智留二君。君が始めに俺を除け者にして、デブビーバーというあだ名を付けたことは死んでも忘れません。貴方がきっかけです。そして裏で糸を引いている事も分かっています。どうか、償いをして下さい。
そして最後にお父さん、お母さん本当にごめんなさい。
妹へ。世知辛い世の中だけど、俺の分まで頑張って生きてください。そして俺が入った高校には虐められるから間違っても行かないでほしいです』
「以上です」
担任教師が読み終わってもクラスの人達は誰一人話し出さなかった。沈黙の中、俺だけが戸惑っていた。
何で?俺が裏で手を引いている?除け者にした?いや違う。単に俺一人で山崎の事を嫌っていただけだ。あくまで個々に嫌っていただけで、それがクラスメイト全員の個々だったというだけだ。団結して一緒に虐めていたわけではない。いや、俺自身が虐めていたわけでもない。
新しい学年が始まって早々、話しかけられてウザかったから除け者にした。話の輪の中に入れなかった。それだけだ。あいつが関係ない話を一方的に話しかけてきたからだ。自業自得だ。それなのに。
勝手に名指して人の所為にするなんて。
「誰か、事情を知っている人は居ますか?」
担任教師が教室全体を見渡しながらそう言うも、誰も言い出さない。しかし、沈黙が俺の事を責めているように感じた。
「誰も知っている人は居ないのですね。分かりました。先生はこの後職員室に戻ります。皆さんはしばらく自習をして待っていて下さい」
担任はそう言うと教室から出ていってしまう。
出ていくと、そのタイミングを待っていたようにクラスメイトが話を始めて一気に騒がしくなった。
誰もが山崎の事、そして俺の事を話しているのが分かった。でも俺には直接言ってこない。腫れ物には触れたくないみたいだ。一気に気まずくなるも、その会話を止める方法が思いつかなかった。
そんな中、藍沢だけが席を立ち上がって俺の所へと向かってきた。流石、お前は分かっているよ。
きっと何か打開策か、俺のフォローをしてくれるに違いない。と思ったのだが、その予想は外れていた。
「お前、山崎の事、虐めてたのかよ」
放たれた言葉が信じられなかった。
「いや、何言ってるんだよ、やってないだろ」
近くで見ていたお前が一番良く知っているだろう。しかし藍沢は納得した様子はない。
「陰では何をしてるか分からんぞ?」
その言い方に驚いてしまう。藍沢、お前は俺を庇いに来たんじゃないのか?
「オイオイ、友達のお前までそんな事言うのか?」
「いや、俺は人を虐めるような奴は友達じゃないからさ」
突き放された言い方にイラついてしまう。
「何だよ!お前だって一緒じゃないかよ!一緒に除け者にしていただろうが!」
思わず立ち上がりながら叫んでしまい、それによって教室の中が静かになった。全員が俺達の事に注目したのが分かった。それでも藍沢は冷静だった。
「お前と一緒にするな」
「何だって!」
胸ぐらを掴む。コイツ、自分に火の粉が降りかからないように、俺の事を切りやがったんだ。
「おい、今度は藍沢がターゲットか?」
クラスメイトの誰かが俺に向かって言ってきた。
「誰だよ。そんな事言う奴はっ!」
「何だ、そういう事かよ。怖い怖い」
俺だけ熱くなっていて藍沢は何処までも冷静でいる。それがさらに俺を苛立たせた。
「何だと!」
殴ってやろうと思っていた矢先に藍沢に掴んでいた手を外されてしまう。
「止めろよ、いじめっ子」
そうだ止めろよ。藍沢まで殺す気か。飽きたらねーな、最低野郎。そんな、野次罵倒が飛んでくる。
藍沢までって。山崎を死に追いやったのは俺じゃないだろ?お前らだろう?
騒ぎは大きくなってしまうが、教室のドアが勢いよく開く音で一気に静かとなった。
見てみるとそこには、担任の先生が立っていた。
「青木くん、ちょっと一緒に来てもらってもいいかな?」
感情を感じさせない淡々とした言葉が冷たく恐ろしく感じた。
俺に拒否権はというものは存在せず、教室を離れて、着いていく他無かった。
とにかく真実が知りたかった。山崎の死と遺書に書かれている内容。知るには学校に行くしかない。俺は覚悟を決めて登校した。
教室に着くと、中の雰囲気は重く、誰が置いたのか分からないけれど山崎の机の上には花が綺麗に飾ってあり、それが異様に目立っていた。
机に向かおうと中に入って横切っていくと、すでに席に座っていた藍沢と視線が合い、俺に声を掛けてきた。
「大変なことになったな」
「ん?ああ、そうだな」
藍沢の言い方に引っかかりを覚えた。しかし、人が一人死んでいるのだ。妙な言い方になってしまうのも仕方がないような気がした。
藍沢とは一学期早々の席替えで離れ離れになってしまっていたので、話したのはそれっきりで俺は自分の席へと向かう。
荷物を机に置いた後、藍沢の所へ行っても良かったのだか、教室がそんな雰囲気ではなかった。
誰もが席に着いていて周りの話せる人と話しているだけで、ただ重い空気だけがのし掛かっていた。誰もがこの空気を取り除く事を望み、でも出来ないでいるようだった。
救いのような予鈴が鳴ってしばらくすると、担任教師が教室へと入ってきて教卓の前に立つ。着ているスーツが何だかいつもよくも黒く感じた。
誰もが担任教師の言葉を待っているようだった。俺以外にも自体を把握していない者達ばかりなのだろう。
担任教師はクラス全員が着席している事を確認するとまず、号令を命じた。終わると担任はゆっくりと口を開いた。
「皆さん、おはよう御座います」
口調はいつもと比べてとても暗くて重かった。
「皆さんも知っている通りですが、昨日山崎君が自殺をしました。非常に残念なりません」
担任教師が話すのを区切ると、手に持っていた細長い紙を上に掲げて、教室の後ろまで見せるようにする。
「ここに山崎君の遺書の写しがあります。本来ならば、読み上げるような物ではありませんが、遺書の中にこの内容を教室で読んで欲しいという要望があったので読みます。一度しか読みませんのでよく心得て聞いてください」
担任教師が遺書の写しを開く。教室には紙が広がる音だけが響いていた。
広げ終わるもいつまでも始まらない。疑問に思って担任教師の顔を見たら、今にも泣いてしまいそうな程に目が潤んでいた。それを誤魔化すように大きく息を吸った。
『最初に、この遺書の内容をクラス全員の前で読んで下さい。そして自分達が今まで行ってきた行為を悔いて反省して欲しいです。
俺にとって高校生活っていうのは最後のチャンスだった。今までの自分を払拭出来るような、何もかもがリセット出来るチャンスだった。でも、そのチャンスを俺は掴む事出来ませんでした。
勇気を持って話しかけにいったけれど、煙たがられ、相手にされず裏ではクスクスと、笑っていることは分かっていました。
ああ、もう無理だなって思いました。努力しても結局俺はツイていなくって、虐める人達は何処にでもいる。何処にいっても虐める人がいるので、俺はもう生きていく自信がありません。なので、死のうと思います。私が自分を殺したのではなく、クラスメイト全員が、私を死に追いやったのです。覚えておいてください。死んだ後に幽霊になれるとしたら、俺はクラスメイト全員を恨んでやりますから覚悟しておいて下さい。
特に青木智留二君。君が始めに俺を除け者にして、デブビーバーというあだ名を付けたことは死んでも忘れません。貴方がきっかけです。そして裏で糸を引いている事も分かっています。どうか、償いをして下さい。
そして最後にお父さん、お母さん本当にごめんなさい。
妹へ。世知辛い世の中だけど、俺の分まで頑張って生きてください。そして俺が入った高校には虐められるから間違っても行かないでほしいです』
「以上です」
担任教師が読み終わってもクラスの人達は誰一人話し出さなかった。沈黙の中、俺だけが戸惑っていた。
何で?俺が裏で手を引いている?除け者にした?いや違う。単に俺一人で山崎の事を嫌っていただけだ。あくまで個々に嫌っていただけで、それがクラスメイト全員の個々だったというだけだ。団結して一緒に虐めていたわけではない。いや、俺自身が虐めていたわけでもない。
新しい学年が始まって早々、話しかけられてウザかったから除け者にした。話の輪の中に入れなかった。それだけだ。あいつが関係ない話を一方的に話しかけてきたからだ。自業自得だ。それなのに。
勝手に名指して人の所為にするなんて。
「誰か、事情を知っている人は居ますか?」
担任教師が教室全体を見渡しながらそう言うも、誰も言い出さない。しかし、沈黙が俺の事を責めているように感じた。
「誰も知っている人は居ないのですね。分かりました。先生はこの後職員室に戻ります。皆さんはしばらく自習をして待っていて下さい」
担任はそう言うと教室から出ていってしまう。
出ていくと、そのタイミングを待っていたようにクラスメイトが話を始めて一気に騒がしくなった。
誰もが山崎の事、そして俺の事を話しているのが分かった。でも俺には直接言ってこない。腫れ物には触れたくないみたいだ。一気に気まずくなるも、その会話を止める方法が思いつかなかった。
そんな中、藍沢だけが席を立ち上がって俺の所へと向かってきた。流石、お前は分かっているよ。
きっと何か打開策か、俺のフォローをしてくれるに違いない。と思ったのだが、その予想は外れていた。
「お前、山崎の事、虐めてたのかよ」
放たれた言葉が信じられなかった。
「いや、何言ってるんだよ、やってないだろ」
近くで見ていたお前が一番良く知っているだろう。しかし藍沢は納得した様子はない。
「陰では何をしてるか分からんぞ?」
その言い方に驚いてしまう。藍沢、お前は俺を庇いに来たんじゃないのか?
「オイオイ、友達のお前までそんな事言うのか?」
「いや、俺は人を虐めるような奴は友達じゃないからさ」
突き放された言い方にイラついてしまう。
「何だよ!お前だって一緒じゃないかよ!一緒に除け者にしていただろうが!」
思わず立ち上がりながら叫んでしまい、それによって教室の中が静かになった。全員が俺達の事に注目したのが分かった。それでも藍沢は冷静だった。
「お前と一緒にするな」
「何だって!」
胸ぐらを掴む。コイツ、自分に火の粉が降りかからないように、俺の事を切りやがったんだ。
「おい、今度は藍沢がターゲットか?」
クラスメイトの誰かが俺に向かって言ってきた。
「誰だよ。そんな事言う奴はっ!」
「何だ、そういう事かよ。怖い怖い」
俺だけ熱くなっていて藍沢は何処までも冷静でいる。それがさらに俺を苛立たせた。
「何だと!」
殴ってやろうと思っていた矢先に藍沢に掴んでいた手を外されてしまう。
「止めろよ、いじめっ子」
そうだ止めろよ。藍沢まで殺す気か。飽きたらねーな、最低野郎。そんな、野次罵倒が飛んでくる。
藍沢までって。山崎を死に追いやったのは俺じゃないだろ?お前らだろう?
騒ぎは大きくなってしまうが、教室のドアが勢いよく開く音で一気に静かとなった。
見てみるとそこには、担任の先生が立っていた。
「青木くん、ちょっと一緒に来てもらってもいいかな?」
感情を感じさせない淡々とした言葉が冷たく恐ろしく感じた。
俺に拒否権はというものは存在せず、教室を離れて、着いていく他無かった。

