これが山崎との最初の出会いだった。第一印象は最悪に近い。この後に始まった自己紹介も何だか嫌な気分になったというか、癪に触った。
ホームルームで、担任教師は学年が上がった事による心構えと注意点を読み上げるように言い終わると簡潔に自己紹介を行った。それが終わると今度は生徒達の自己紹介の番となる。
俺は特に目立ったようなことはせずに、簡単に名前と趣味はサッカー観戦とだけ伝えてお辞儀をすると座った。他の奴らも似たようなものばかりで、単に名前だけ言う奴もいれば、趣味の代わりに何の部活に入っているか言うだけの奴も居た。俺よりも前に話した藍沢も似たような感じである。しかし山崎は違っていた。
山崎の番になると勢いよく立ち上がって脂肪に挟まって落ちもしない眼鏡をくいっと持ち上げた。見るたびに思う。本当に意味のない行動だと。
「えー、山崎千郎と申します。好きなものはアニメとゲーム。ゲームはどのジャンルでもとても上手いので何か低ランクなものが有れば一緒に上げて差し上げますので声をかけてもらえればと思います。あ、でもでも、これでも勉強はしてますのでそれも得意です。ハイ。学年トップとまではいかないけど、あー、あともうちょっとでトップだったかな?そんな感じなので、勉強でも分からない事があったら教えて差し上げましょう。運動は得意じゃないかな。この体型を見てもらえば分かると思うけど。ハハッ。だから何かスポーツには誘わないで欲しいかな。部活は入ってません。群れるのが嫌いなので。それなのでいつでも暇なので、どんどんと声を掛けてくれたらと思います。よろしく」
ぼそぼそとぎりぎり聞き取れる程度の声量で暗く、早口で山崎は言った。それをお経の様に聞き流していたら、いつの間にか終わっていて、様々な方向を見ながら頭を下げた後、着席していた。
教室の空気が固まったような気がした。山崎の自己紹介に誰も付いていけていない。しかし、それも一瞬の出来事で誰かが拍手をし始めると一気にクラス全員が行った。
この独りよがりなこの自己紹介に何だか苛立ちを覚えてしまったのである。
絶対にコイツとは馬が合わない。山崎という男とは距離を置こうと決めた。
俺は距離を置く事を決めたが、山崎がそうとは限らなかった。
新学期から数日経過したある日の事である。レトロゲームを詰め込んで小さくなったゲーム機の発売が発表された。当時小学生だった時に持っていたゲーム機でとても懐かしく感じ欲しくなってしまったのである。でもよくよく考えたら要らないような気もしていて、一人では決められず、教室で藍沢と相談する事にしたのである。
朝、登校して教室の席に座るとすぐに藍沢に話を持ち掛ける。何となく携帯端末を弄っている様子だったが、話をするとすぐに仕舞って俺の方へと向き合ってくれた。
「何だ、青木もあのゲーム機が気になっているのか。俺も懐かしく思ったぜ」
藍沢はそう返してくれて、嬉しくなった。やっぱりお前もか。感性が似ている。気分が高揚して声量も大きくなってしまう。
「懐かしいよな。よく友達とテニスのゲームとか、レースのゲームとか、やったよな」
「あったあった!懐かしい!あの大乱闘するゲームのソフト持ってるやつの家に集まって、みんなでやったよな。何ていうタイトルだったかな。あの――」
「何の話?何の話?」
盛り上がっていた所から割り込みが入る。振り向くと山崎がそこには居た。聞き耳立てて、近づいて来たのか。
思わず引いて声が出ない俺の代わりに藍沢が律儀に説明し始めた。
「いや、ホラさ。小学生の頃に持ってたゲーム機の小さい奴が出ることになっただろ?それの話だよ」
意味のない説明だった。だってコイツは全て聞いた上で近づいてきているのだから。
「あー、あれね!あれ、買うのかい?あんまりオススメ出来ないなぁ。あのラインナップだったら買う意味ないよ」
空気が固まったが、山崎の言葉は止まる気配なく続く。
「全然名作入ってないし。一体誰がセレクトしたのか全然センス無いよね。それに最新のゲーム機でダウンロードすれば三分の一のコストで出来るし、あの見た目だけで買うっていうのはどうかと思いますなぁ。買うのは懐古厨のおっさんだけだよ」
意気揚々に話す山崎が少し気持ち悪かった。
俺は気分を害した。相談と言いつつも面白そうだったから買うつもりだったのである。それを全て否定されたように感じた。それに藍沢と話したかったのであって、山崎のウンチクを聞きたいわけではなかった。
「あーそうかい」
俺はわざと低い声を出して、機嫌が悪くなった事をあからさまに伝えて突っぱねた。
藍沢は察して黙る。俺もこれ以上話す気が無かった。二人の沈黙に山崎も異様な空気を流石に察したのか、それ以上言ってこなくなり、自分の席へと戻って行った。
「最悪だよ、マジで」
別に聞かれてもかまわない声量で悪態を付くと藍沢もそれに同意してくれた。
うざったい。今度来たら強く否定して突っぱねてやろう。そう決意したのであった。
ホームルームで、担任教師は学年が上がった事による心構えと注意点を読み上げるように言い終わると簡潔に自己紹介を行った。それが終わると今度は生徒達の自己紹介の番となる。
俺は特に目立ったようなことはせずに、簡単に名前と趣味はサッカー観戦とだけ伝えてお辞儀をすると座った。他の奴らも似たようなものばかりで、単に名前だけ言う奴もいれば、趣味の代わりに何の部活に入っているか言うだけの奴も居た。俺よりも前に話した藍沢も似たような感じである。しかし山崎は違っていた。
山崎の番になると勢いよく立ち上がって脂肪に挟まって落ちもしない眼鏡をくいっと持ち上げた。見るたびに思う。本当に意味のない行動だと。
「えー、山崎千郎と申します。好きなものはアニメとゲーム。ゲームはどのジャンルでもとても上手いので何か低ランクなものが有れば一緒に上げて差し上げますので声をかけてもらえればと思います。あ、でもでも、これでも勉強はしてますのでそれも得意です。ハイ。学年トップとまではいかないけど、あー、あともうちょっとでトップだったかな?そんな感じなので、勉強でも分からない事があったら教えて差し上げましょう。運動は得意じゃないかな。この体型を見てもらえば分かると思うけど。ハハッ。だから何かスポーツには誘わないで欲しいかな。部活は入ってません。群れるのが嫌いなので。それなのでいつでも暇なので、どんどんと声を掛けてくれたらと思います。よろしく」
ぼそぼそとぎりぎり聞き取れる程度の声量で暗く、早口で山崎は言った。それをお経の様に聞き流していたら、いつの間にか終わっていて、様々な方向を見ながら頭を下げた後、着席していた。
教室の空気が固まったような気がした。山崎の自己紹介に誰も付いていけていない。しかし、それも一瞬の出来事で誰かが拍手をし始めると一気にクラス全員が行った。
この独りよがりなこの自己紹介に何だか苛立ちを覚えてしまったのである。
絶対にコイツとは馬が合わない。山崎という男とは距離を置こうと決めた。
俺は距離を置く事を決めたが、山崎がそうとは限らなかった。
新学期から数日経過したある日の事である。レトロゲームを詰め込んで小さくなったゲーム機の発売が発表された。当時小学生だった時に持っていたゲーム機でとても懐かしく感じ欲しくなってしまったのである。でもよくよく考えたら要らないような気もしていて、一人では決められず、教室で藍沢と相談する事にしたのである。
朝、登校して教室の席に座るとすぐに藍沢に話を持ち掛ける。何となく携帯端末を弄っている様子だったが、話をするとすぐに仕舞って俺の方へと向き合ってくれた。
「何だ、青木もあのゲーム機が気になっているのか。俺も懐かしく思ったぜ」
藍沢はそう返してくれて、嬉しくなった。やっぱりお前もか。感性が似ている。気分が高揚して声量も大きくなってしまう。
「懐かしいよな。よく友達とテニスのゲームとか、レースのゲームとか、やったよな」
「あったあった!懐かしい!あの大乱闘するゲームのソフト持ってるやつの家に集まって、みんなでやったよな。何ていうタイトルだったかな。あの――」
「何の話?何の話?」
盛り上がっていた所から割り込みが入る。振り向くと山崎がそこには居た。聞き耳立てて、近づいて来たのか。
思わず引いて声が出ない俺の代わりに藍沢が律儀に説明し始めた。
「いや、ホラさ。小学生の頃に持ってたゲーム機の小さい奴が出ることになっただろ?それの話だよ」
意味のない説明だった。だってコイツは全て聞いた上で近づいてきているのだから。
「あー、あれね!あれ、買うのかい?あんまりオススメ出来ないなぁ。あのラインナップだったら買う意味ないよ」
空気が固まったが、山崎の言葉は止まる気配なく続く。
「全然名作入ってないし。一体誰がセレクトしたのか全然センス無いよね。それに最新のゲーム機でダウンロードすれば三分の一のコストで出来るし、あの見た目だけで買うっていうのはどうかと思いますなぁ。買うのは懐古厨のおっさんだけだよ」
意気揚々に話す山崎が少し気持ち悪かった。
俺は気分を害した。相談と言いつつも面白そうだったから買うつもりだったのである。それを全て否定されたように感じた。それに藍沢と話したかったのであって、山崎のウンチクを聞きたいわけではなかった。
「あーそうかい」
俺はわざと低い声を出して、機嫌が悪くなった事をあからさまに伝えて突っぱねた。
藍沢は察して黙る。俺もこれ以上話す気が無かった。二人の沈黙に山崎も異様な空気を流石に察したのか、それ以上言ってこなくなり、自分の席へと戻って行った。
「最悪だよ、マジで」
別に聞かれてもかまわない声量で悪態を付くと藍沢もそれに同意してくれた。
うざったい。今度来たら強く否定して突っぱねてやろう。そう決意したのであった。

