五章
部屋の明るさで目が醒める。どうやら朝らしい。
まだ半覚醒の中、辺りを見回すとツインルームのホテルの一室で隣には俺が寝ているものとは別のベッドがあった。使用されていない状態で綺麗に掛け布団が掛けられている。さらに部屋の様子を見てみると真正面には部屋の広さに不釣り合いな大きなテレビがあった。それと申し訳ないくらいに備え付けられていた小さな机。どう見てもビジネスホテルだった。
こんな間取りだったかなと思う。入って来た時は意識が朦朧としていたので気が付かなかった。
上半身を起こすとさらに部屋の細部を見ながら同時に今現在置かれている状況も一緒に確認していった。
床にはキャリーケースのファスナーが開けられた状態で中身が散乱していた。普段着ている衣類と共に、男の荷物では似つかわしくないものも一緒に無造作に置かれていた。
女性物の制服。鳥井のものだ。バックの奥深くにしまっておいたのだが、見つかってしまったようだ。
これが原因で鳥井はこのホテルから飛び出して行ってそれ以降戻ってきていない。部屋の中には俺しか居らず、静寂で包まれていた。
俺はベッドから這い出るとふらつく足で立ち上がった。急がないと。まだ少し喉が痛くて頭もくらくらするが、だいぶ治ってきて動けない程ではない。それに久々にきちんとしたベッドで就寝した事もあり、いつもよりも身体は軽いくらいだ。
これなら動ける。これなら追う事が出来る。早く支度をしなければ。
このまま鳥井を放っておいたら、また死のうと思うかもしれない。それだけはダメだ。もう誰か死ぬのなんて、耐えられない。知っている誰かが死ぬなんてもう御免だった。
床に散乱している衣類をかき集めて、バッグに詰め込むとすぐに衣類に着替えて恰好を整える。そうすると急いで部屋から出ていった。
チェックアウトを行う際、財布の中身をチェックするとかなりの額が減っている事に気が付く。恐らく鳥井が持って行ったのだろう。今はそれでいい。お金がある内は鳥井も死のうとは思わないかもしれない。ならば、まだ猶予があるという事だ。
さっさとチェックアウトを済ませると急いで駅に向かった。すぐに到着するも、どうしたらいいか分からず、身体が硬直してしまう。
鳥井は一体何処へと向かったのだろうか。全くもって見当が付かなかった。このまま南の島に向かったのだろうか。それとも、また別の所か。
次第に焦ってくる。いやまだ大丈夫だ。間に合う。自分にそう言い聞かせた。
もうだれかを失うのは沢山だった。
とにかく、動かなければ。
部屋の明るさで目が醒める。どうやら朝らしい。
まだ半覚醒の中、辺りを見回すとツインルームのホテルの一室で隣には俺が寝ているものとは別のベッドがあった。使用されていない状態で綺麗に掛け布団が掛けられている。さらに部屋の様子を見てみると真正面には部屋の広さに不釣り合いな大きなテレビがあった。それと申し訳ないくらいに備え付けられていた小さな机。どう見てもビジネスホテルだった。
こんな間取りだったかなと思う。入って来た時は意識が朦朧としていたので気が付かなかった。
上半身を起こすとさらに部屋の細部を見ながら同時に今現在置かれている状況も一緒に確認していった。
床にはキャリーケースのファスナーが開けられた状態で中身が散乱していた。普段着ている衣類と共に、男の荷物では似つかわしくないものも一緒に無造作に置かれていた。
女性物の制服。鳥井のものだ。バックの奥深くにしまっておいたのだが、見つかってしまったようだ。
これが原因で鳥井はこのホテルから飛び出して行ってそれ以降戻ってきていない。部屋の中には俺しか居らず、静寂で包まれていた。
俺はベッドから這い出るとふらつく足で立ち上がった。急がないと。まだ少し喉が痛くて頭もくらくらするが、だいぶ治ってきて動けない程ではない。それに久々にきちんとしたベッドで就寝した事もあり、いつもよりも身体は軽いくらいだ。
これなら動ける。これなら追う事が出来る。早く支度をしなければ。
このまま鳥井を放っておいたら、また死のうと思うかもしれない。それだけはダメだ。もう誰か死ぬのなんて、耐えられない。知っている誰かが死ぬなんてもう御免だった。
床に散乱している衣類をかき集めて、バッグに詰め込むとすぐに衣類に着替えて恰好を整える。そうすると急いで部屋から出ていった。
チェックアウトを行う際、財布の中身をチェックするとかなりの額が減っている事に気が付く。恐らく鳥井が持って行ったのだろう。今はそれでいい。お金がある内は鳥井も死のうとは思わないかもしれない。ならば、まだ猶予があるという事だ。
さっさとチェックアウトを済ませると急いで駅に向かった。すぐに到着するも、どうしたらいいか分からず、身体が硬直してしまう。
鳥井は一体何処へと向かったのだろうか。全くもって見当が付かなかった。このまま南の島に向かったのだろうか。それとも、また別の所か。
次第に焦ってくる。いやまだ大丈夫だ。間に合う。自分にそう言い聞かせた。
もうだれかを失うのは沢山だった。
とにかく、動かなければ。
