結局そのアトラクションには乗らなくて、丁度昼時も近かったので、近くにあったジャンクフード店で食事を済ませた後、その後、水をとにかく掛けまくるショーを見た。
 そのあたりで丁度パーク半分くらいを回った事になる。私は楽しくて仕方が無かった。まさに夢の国。次の宇宙学校のエリアでもどんな楽しいものが待ち構えているのかと想像するだけでワクワクしてしまう。
 そんな私とは裏腹に青木の顔は相変わらずに何処か暗かった。これだけ楽しい事が続けばちょっとは嬉しそうにしてもいいものなのに。
「あんまり、楽しそうじゃないのね」
 だから、思わずそう訊ねてしまった。
「そんな事はない。楽しいさ。でも……」
 でも、なんなのだろう。
「楽しければ楽しい程、不幸な事、不安な事を思い出してしまう。こういった場所はかえって現実を突きつけられる。夢みたいな場所だけど、夢じゃないんだ。何処までも現実なんだ。
「そんな事ないでしょ……あっ!」
 急に青木が立ち止まって遠くを見始めたので私も目線を追って見てしまった。
 ここは夢の世界だけれども、遠くに何台も車が走っているのが見えた。ああ、あれはきっと高速道路だ。夢の世界には高速道路なんてものはない。つまり、現実なのだ。
 先程の青木の言葉が胸に突き刺さる。そうか、どんなに楽しくて現実離れしたものばかりここにはあるけれど、でも人の手で人が楽しむように作られた現実なのだ。むしろ夢へと境界線がよりハッキリと見えてしまっている気がする。
「そうね……そうだね」
 そう、ここは現実。これから向かう宇宙学校のエリアだってどこまでも現実なのだ。
 こんな時に思い出さなくてもいいのに、明日入れたバイトの事を思い出してしまった。ここを出たらまたあの辛い日々の中に帰らなきゃいけないのだろうか。
 ずっとここに居たらダメなのだろうか。それが出来ないのは、ここが夢の世界では無いからなのだろう。
 気持ちが一気に萎えたのを感じた。
 ああ、ここは私の探している幸せのある場所ではない事が分かってしまう。こうなっては、もう心の奥底から楽しむ事なんて出来ず、その先は情勢で残っているエリアを回る他なかった。
 何だか疲れも出始めて、偽りの夢の世界を回るのもしんどくなっていた。青木は始めからこんな気持ちで回っていたのだろうか。そんなの全然楽しくなんてない。だから最初から浮かない顔をしていたの?
 それとも私がただ単に浮かれ過ぎていただけなの?