(俺はなんのために軍人になったんだ……)

 そう思ってしまうほどに、律哉の現状はひどいものだった。

「ま、まぁ、律哉。……今日は俺らのおごりだし、パーッと飲もうぜ」
「そうそう。お前の苦労を、俺らはわかってるつもり……だし」

 苦笑を浮かべた同期たちが、酒を注いでくる。そのため、律哉はまた酒を口に運んだ。

(こいつらはこう言ってくれるけど、本当に苦労なんて理解してないだろ……)

 自分が作ったわけでもない多額の借金を返す苦しさも。女性から『一時期の遊び相手』としか見られない虚しさも。

 そんなもの、同期たちにわかるわけがない。いや、分からなくて構わない。

(こんな思いをするのは、俺一人で十分だ)

 結局、こういうところがお人好しなんだろう。

 士官学校時代。指導官たちから言われた「お前はお人好しが過ぎる」という言葉を、ふと思い出す。

(でも、俺だって友人じゃない奴らには、こんなこと思わないさ)

 ただ、友人だから。こうやって律哉を労わってくれて、苦労をわかろうとしてくれるから。

 こんな風に、思いやれるだけだ。

 そう思いつつ、律哉はまた酒を口に運んだ。