「おい、律哉。そんな勢いよく飲んだら、酔いが回るの早いぞ?」
「お前らには言われたくない」

 すっかり出来上がった三人を見つめつつ、律哉はため息をつく。

「大体、お前らに俺の気持ちなんてわかるわけがない」

 悪態をついてしまったのは、側にいるのが気の許せる友だからなのか。

 それは定かではないものの、律哉は頬杖をつく。思い返せばここ三年。エリート軍人としても、華族の人間としても。全く華々しく出来なかった。元々華々しく生きるのは好きではない。が、月一くらいの贅沢さえもできない状況が、律哉にとっては不本意でしかない。

「別に華々しく生きたいわけじゃないんだ。……ただ、それなりに。つつましく幸せに生きたかっただけなんだ」

 自然と口から言葉が漏れる。

 律哉だって好きで守銭奴になったわけじゃない。合わせ、女性から『一時期の遊び相手』として見られたかったわけじゃない。

 好きになった女性と添い遂げて、普通の家庭を築きたかっただけなのだ。

「なのに、ふたを開けてみれば借金の返済ばかりだ。……正直、もう疲れている」

 それは紛れもない律哉の本音。日々身を粉にして働いて、働いて、働いて。使用人にも一人残らず暇を出したので、たまにの休みは邸宅の掃除をはじめとした家事でつぶれる。

 こんなエリート軍人がいるだろうか? いや、絶対にいない。