おいら、バック! 悪戯好きな妖精だよ! 今日も小さな子供に酷い悪戯しちゃうからね(ニッチャア)!
 おっと! 早速おいら好みの子供が現れたよ!
 大きな口とズルズル這う胴体が超セクシー! 全身に開いた穴から茶褐色の液体をズビュッ! ズビュッ! と噴出させながら意味の分からない言語を爆音で叫び続ける、迷惑極まりない怪物だ! おいらよりずっと大きいけど、これで子供だってんだから驚きだぜ! やれやれ、人は見た目によらないね! まあ、こいつは人じゃないけどさ。
 さて、それじゃ性的な異常行動を始めようかな。え、こんなのに性的な異常行動しようとするなんて、おかしいんじゃないの? だってえ! そりゃあそうだよ。だって、おいら、異常者だもの。普通の奴には理解できない、おかしいことをやるのが当然さ!
 まずは、生殖器探しからスタート! 相手に気づかれないよう、そっと近づいて……う、うぎや!
 変質者退治のための囮が間抜けな妖精を捕らえたので、見に行くとフェルゲオが言った。一緒に付いて行くと粘液まみれで動けない妖精がいた。十センチくらいの身長に透明な羽の生えた、耳の尖った生き物だ。地面に落ちていた妖精を、フェルゲオはスコップで回収した。バケツに入れる。僕は尋ねた。
「どうするんだい、それは?」
 鋼鉄の義体をギシギシ言わせてフェルゲオが答える。
「牧場主に訊いてみる。話はそれからだ」
 フェルゲオは、彼女の雇い主である牧場主に忠実だ。その意に反することはしない。要するに、この変質者の命は牧場主の意向次第で決まるということだ。
 どうなるか分からないが一応、予想される結末を訊いてみる。
「こいつは殺されるのかな?」
 首を傾げてフェルゲオが答える。
「牧場の家畜を襲う変質者だから、許しはしないと思うよ。でも、それはスローライフを好む牧場主としての考えだ。冒険を好む二重人格者としての性格が強く現れたら、利用価値を見出して生かしておくかもしれない」
 僕はバケツの中の生き物を見た。この妖精に何か利用価値があるのだろうか? 分からない。答えは、機械生物フェルゲオの雇用主が現実的なスローライフ主義者か冒険好きな二重人格者であるかによって決まる。