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馬場会長がオレの肩に手を置き、そのまま吸い込まれるように地面へと倒れた。
肩に残った重みを感じながら呆然と視線を前に向ける。
馬場会長が残した言葉。その1つ1つを噛み締める。
オレはこれからどうしたらいいのか。
その答えは自分で見つけるしかない。
「馬場会長、見ていて下さい」
託された水の魔剣・蒼蛇剣を握り締め、全ての元凶である天魔咲夜に怒りの矛先を向ける。
グツグツと腹の底から湧き上がる怒りの感情。
もうそれは自分自身では制御することができない。
オレの大切なモノを平気な顔で次から次へと奪う悪魔。
ここで奴を逃したら復讐の機会がいつ訪れるか分からない。
遠くで正嗣が原初の刀・火之迦具鎚を武器に天魔と斬り合っている。
嵐山を庇うように立ち回る天魔。
それでも正嗣が攻め切れていないのは嵐山に異能力を無効化されているからだろう。
ここに駆けつけるとき、一部始終は見ていた。
なぜ、嵐山が天魔の味方をしているのか。
短時間で色々なことが起こり過ぎてまだ状況を整理し切れていない。
だから今は、今だけは感情に身を任せる。
そうしなければ体を前に動かすことができない。
「やれやれ、咲夜の奴、今回も派手に暴れたみたいだな」
「そのようですね」
歩き出した足を止めて声の主を特定する。
暗がりの中で陣内校長と深瀬教頭が荒れ果てた大地とそこら中に転がる死体を眺めて感想を漏らしていた。
「揉み消すこっちの苦労も考えて欲しいものだ」
「陣内校長、あそこに生存者が」
陣内と目が合う。
陣内は深瀬を率いて堂々と近づいてきた。
「神楽坂春斗、また君か。それは蒼蛇剣……そうか、そういうことか」
陣内が魔剣に視線を落としてから倒れている馬場会長に目を向け、全てを理解したように頷いた。
「陣内校長がなぜここに? 揉み消すと聞こえましたが、今回の件に関与しているということでしょうか?」
「咲夜と対峙したのなら身を持って理解したはずだ。彼と同じ目に遭いたくなければ無意味な詮索はしない方がいい。まあ、魔剣を手にした時点で運命からは逃れられないがな」
陣内が馬場会長の遺体に触れようと手を伸ばす。
が、オレは蒼蛇剣でそれを阻止した。
「何をする気ですか?」
「必要な犠牲だったとはいえ、我が校の生徒が事件に巻き込まれて命を落としたんだ。手を合わせてもいいだろう?」
「必要な犠牲? あなたはずっと何を言っているんですか? 命を何だと思ってるんですか?」
蒼蛇剣を陣内の首元に突きつける。
馬場会長の人生がこんなところで終わっていいはずがない。
必要な犠牲などというふざけた言葉で片付ける陣内に心底腹が立つ。
「陣内校長!」
深瀬が陣内に声を掛けるも陣内は軽く手を上げて余裕の笑みを見せた。
「理想郷の為ならば我々は何だってする。覚えておくといい。命の重さは平等ではない。人間が生きる為に動物を殺して食糧を得るように、今日亡くなった人々も明るい未来を築く上では必要な犠牲だったんだ」
まるで常人には理解できない。
どんな理由があろうと人を殺す行為を正当化してはならない。
誰にだって生きる権利がある。
「オレにはとても理解できません」
「今は分からなくてもいずれ分かる日が来る」
気が付けば視界の端に映っていた正嗣と天魔と嵐山の姿が完全に消えていた。
思えば会話の要所要所で陣内と深瀬も向こうの様子を気にしていた。
もしや、会話を引き延ばして嵐山の異能力の効果が切れるのを待っていた?
「理想郷の鳥籠」
陣内が異能力を発動。
陣内を中心に半径50メートル程度の鳥籠の檻が展開された。
周囲を鳥籠で囲われた以外に特に変化は無い。
まるで異能力の効果が読めない。
「未来視の異能力は貴重だ。私が責任を持って管理する」
「馬場会長に触るな!」
蒼蛇剣で陣内の胴を斬り裂くも全く手応えが無い。
まるで幻影を相手にしているような感覚だ。
幻影だったはずの陣内が馬場会長の背中に触れ、深瀬も陣内のすぐ側まで移動する。
「神楽坂春斗、せいぜい運命に抗ってみせろ」
陣内はそう言い残し、次の瞬間光に包まれて姿を消した。
同時に深瀬と馬場会長もこの場から消え、周囲の鳥籠も消えていた。
時刻は20時を迎え、夜空に打ち上げ花火が上がった。
夜空に咲く満開の花火。
その鮮やかな光が悲惨な現実を映し出していた。
第5章 学院の闇との対峙、天魔降臨編完結。
馬場会長がオレの肩に手を置き、そのまま吸い込まれるように地面へと倒れた。
肩に残った重みを感じながら呆然と視線を前に向ける。
馬場会長が残した言葉。その1つ1つを噛み締める。
オレはこれからどうしたらいいのか。
その答えは自分で見つけるしかない。
「馬場会長、見ていて下さい」
託された水の魔剣・蒼蛇剣を握り締め、全ての元凶である天魔咲夜に怒りの矛先を向ける。
グツグツと腹の底から湧き上がる怒りの感情。
もうそれは自分自身では制御することができない。
オレの大切なモノを平気な顔で次から次へと奪う悪魔。
ここで奴を逃したら復讐の機会がいつ訪れるか分からない。
遠くで正嗣が原初の刀・火之迦具鎚を武器に天魔と斬り合っている。
嵐山を庇うように立ち回る天魔。
それでも正嗣が攻め切れていないのは嵐山に異能力を無効化されているからだろう。
ここに駆けつけるとき、一部始終は見ていた。
なぜ、嵐山が天魔の味方をしているのか。
短時間で色々なことが起こり過ぎてまだ状況を整理し切れていない。
だから今は、今だけは感情に身を任せる。
そうしなければ体を前に動かすことができない。
「やれやれ、咲夜の奴、今回も派手に暴れたみたいだな」
「そのようですね」
歩き出した足を止めて声の主を特定する。
暗がりの中で陣内校長と深瀬教頭が荒れ果てた大地とそこら中に転がる死体を眺めて感想を漏らしていた。
「揉み消すこっちの苦労も考えて欲しいものだ」
「陣内校長、あそこに生存者が」
陣内と目が合う。
陣内は深瀬を率いて堂々と近づいてきた。
「神楽坂春斗、また君か。それは蒼蛇剣……そうか、そういうことか」
陣内が魔剣に視線を落としてから倒れている馬場会長に目を向け、全てを理解したように頷いた。
「陣内校長がなぜここに? 揉み消すと聞こえましたが、今回の件に関与しているということでしょうか?」
「咲夜と対峙したのなら身を持って理解したはずだ。彼と同じ目に遭いたくなければ無意味な詮索はしない方がいい。まあ、魔剣を手にした時点で運命からは逃れられないがな」
陣内が馬場会長の遺体に触れようと手を伸ばす。
が、オレは蒼蛇剣でそれを阻止した。
「何をする気ですか?」
「必要な犠牲だったとはいえ、我が校の生徒が事件に巻き込まれて命を落としたんだ。手を合わせてもいいだろう?」
「必要な犠牲? あなたはずっと何を言っているんですか? 命を何だと思ってるんですか?」
蒼蛇剣を陣内の首元に突きつける。
馬場会長の人生がこんなところで終わっていいはずがない。
必要な犠牲などというふざけた言葉で片付ける陣内に心底腹が立つ。
「陣内校長!」
深瀬が陣内に声を掛けるも陣内は軽く手を上げて余裕の笑みを見せた。
「理想郷の為ならば我々は何だってする。覚えておくといい。命の重さは平等ではない。人間が生きる為に動物を殺して食糧を得るように、今日亡くなった人々も明るい未来を築く上では必要な犠牲だったんだ」
まるで常人には理解できない。
どんな理由があろうと人を殺す行為を正当化してはならない。
誰にだって生きる権利がある。
「オレにはとても理解できません」
「今は分からなくてもいずれ分かる日が来る」
気が付けば視界の端に映っていた正嗣と天魔と嵐山の姿が完全に消えていた。
思えば会話の要所要所で陣内と深瀬も向こうの様子を気にしていた。
もしや、会話を引き延ばして嵐山の異能力の効果が切れるのを待っていた?
「理想郷の鳥籠」
陣内が異能力を発動。
陣内を中心に半径50メートル程度の鳥籠の檻が展開された。
周囲を鳥籠で囲われた以外に特に変化は無い。
まるで異能力の効果が読めない。
「未来視の異能力は貴重だ。私が責任を持って管理する」
「馬場会長に触るな!」
蒼蛇剣で陣内の胴を斬り裂くも全く手応えが無い。
まるで幻影を相手にしているような感覚だ。
幻影だったはずの陣内が馬場会長の背中に触れ、深瀬も陣内のすぐ側まで移動する。
「神楽坂春斗、せいぜい運命に抗ってみせろ」
陣内はそう言い残し、次の瞬間光に包まれて姿を消した。
同時に深瀬と馬場会長もこの場から消え、周囲の鳥籠も消えていた。
時刻は20時を迎え、夜空に打ち上げ花火が上がった。
夜空に咲く満開の花火。
その鮮やかな光が悲惨な現実を映し出していた。
第5章 学院の闇との対峙、天魔降臨編完結。



