—1—
氷堂との特訓を12時で切り上げ、オレは生徒会室へ。
ジャージ姿だし、天童先輩に挨拶をしたらすぐに帰るつもりだ。
「失礼します」
「春斗くん、来てくれたんだ!」
天童先輩の明るい声が室内に響く。
ちょうどお昼ご飯を食べようとしていたのかテーブルには弁当箱が開かれた状態で置かれていた。
それと室内にはもう1人。
「神楽坂くん、一昨日振りだね」
入り口近くに設けられた長机に座っていた西城が振り返って手を上げた。
手元に目をやると文化祭の出し物の申請書を書いている途中だということが分かった。
「文化祭の出し物の申し込みか?」
「うん、明智さんと千代田さんとかき氷のお店をやろうって話になってね」
「神楽坂くん、知り合いならちょうどいいから記入方法とか教えてあげて!」
練習も兼ねてさ! と天童先輩が微笑んだ。
確かにいきなり申請の受付けをするよりは知り合いを相手に経験を積んでいた方がいい。
天童先輩はスマホでソロアイドル『HIBIKI』の最新楽曲を流しながらお昼ご飯を食べ始めた。
「神楽坂くんは今日は学院に何か用事があったの?」
まあ、ジャージ姿を見れば疑問に思うだろうな。
「訓練ルームでちょっとな」
「まだ夏休み2日目なのに偉いね。他の生徒はショッピングモールとか娯楽施設の話で持ちきりだよ」
「別に自虐する訳じゃないが遊べるうちに遊んでおいた方がいいと思うぞ」
やらなければならないことが増えてしまってスケジュールが自然と埋まってきた。
しかもどれも優先順位が高いから後回しにはできない。
これがある意味充実してるってことなのだろう。
「文化祭の準備と文芸部で文芸誌も出すんだっけ? それじゃあ遊ぶ暇はないかな?」
「時間は作るものだからな。何かあれば無理矢理にでもこじ開ける」
「実は明智さんと千代田さんと文化祭の話をしていた時に神楽坂くんを誘って海に行きたいって話になってさ。あんまり遅いとクラゲも出ちゃうし、急だけど来週の水曜日とかどうかな?」
「そうだな」
スマホのカレンダー機能で予定を確認するも今のところは空白。
文芸誌に掲載する作品の執筆は夜にやれば問題ない。
「大丈夫そう?」
「ああ、時間と場所さえ指定して貰えればその日は空いてる」
「よかった。詳しいことは後でメッセージで送るね。外出許可証の手続きも僕の方でやっておくよ」
「ありがとう。助かる」
学院の生徒は基本的に寮での生活が義務付けられているが、長期休暇は例外として外出許可証を発行すれば申請した期日の外出が認められる。
実家に帰省したり、親戚の家に泊まりに行く生徒への配慮だろう。
「それじゃあ、書き終わったから確認してもらってもいいかな」
「ああ」
西城から出し物の申請書を受け取る。
目を通した感じ記入漏れは無さそうだが気になる箇所が1つ。
「天童先輩、出店者って後から追加できますか?」
申請書を提出してから文化祭まで1ヶ月以上期間がある。
それまでに出店者の増減が発生する可能性もあるはずだ。
「ん? うん、その都度報告して貰えれば大丈夫だよ」
「分かりました。ありがとうございます。西城、出店場所の希望はあるか?」
「校門の近くが人気なんだろうけど、倍率が高そうだからここは無難に少し離れたところにしようかな」
西城らしい冷静な分析。
校門近くを選んで抽選に外れたら人通りの少ない場所になってしまう。
そこを避けた安全策だ。
「もし、他と被ったら抽選することになるからその時は生徒会室まで来てくれ」
「うん、分かったよ。じゃあ、僕はこれで。神楽坂くん、またね」
用を済ませた西城が立ち去り、残されたオレと天童先輩。
流れに乗ってオレも帰ろうと天童先輩に視線を向けると天童先輩もこちらを見ていた。
「神楽坂くん、ゲームやるよ!」
手にはゲームのコントローラー。
生徒会室の隅に置いてあったテレビの電源を入れ、ゲーム画面を立ち上げる。
「あの、オレまだお昼ご飯を食べてないのでそろそろ帰ろうかと」
「えー、そんなつまんないこと言わないでさ、1回だけ対戦やろうよー」
天童先輩はゲームのコントローラーをこちらに突き出し、早く早くとその手を手招きする。
こうなってしまっては諦めた方が良さそうだ。
「1回だけですからね」
コントローラーを受け取って天童先輩の隣に座る。
「今日新曲が追加されたばっかりだから楽しみなんだよねー」
以前は村を開拓するゲームに熱中していたみたいだが、今はリズムゲームにハマっているらしい。
熱中する趣味があるのは良いことだと思うが生徒会室でテレビを使ってゲームをするのはアリなのか?
夏休みだからギリギリセーフか?
「よし、いくよ!!」
もしダメだった場合、オレも怒られるんだろうな。
その後、天童先輩の「もう1回!」が続き、解放されたのは30分後だった。
氷堂との特訓を12時で切り上げ、オレは生徒会室へ。
ジャージ姿だし、天童先輩に挨拶をしたらすぐに帰るつもりだ。
「失礼します」
「春斗くん、来てくれたんだ!」
天童先輩の明るい声が室内に響く。
ちょうどお昼ご飯を食べようとしていたのかテーブルには弁当箱が開かれた状態で置かれていた。
それと室内にはもう1人。
「神楽坂くん、一昨日振りだね」
入り口近くに設けられた長机に座っていた西城が振り返って手を上げた。
手元に目をやると文化祭の出し物の申請書を書いている途中だということが分かった。
「文化祭の出し物の申し込みか?」
「うん、明智さんと千代田さんとかき氷のお店をやろうって話になってね」
「神楽坂くん、知り合いならちょうどいいから記入方法とか教えてあげて!」
練習も兼ねてさ! と天童先輩が微笑んだ。
確かにいきなり申請の受付けをするよりは知り合いを相手に経験を積んでいた方がいい。
天童先輩はスマホでソロアイドル『HIBIKI』の最新楽曲を流しながらお昼ご飯を食べ始めた。
「神楽坂くんは今日は学院に何か用事があったの?」
まあ、ジャージ姿を見れば疑問に思うだろうな。
「訓練ルームでちょっとな」
「まだ夏休み2日目なのに偉いね。他の生徒はショッピングモールとか娯楽施設の話で持ちきりだよ」
「別に自虐する訳じゃないが遊べるうちに遊んでおいた方がいいと思うぞ」
やらなければならないことが増えてしまってスケジュールが自然と埋まってきた。
しかもどれも優先順位が高いから後回しにはできない。
これがある意味充実してるってことなのだろう。
「文化祭の準備と文芸部で文芸誌も出すんだっけ? それじゃあ遊ぶ暇はないかな?」
「時間は作るものだからな。何かあれば無理矢理にでもこじ開ける」
「実は明智さんと千代田さんと文化祭の話をしていた時に神楽坂くんを誘って海に行きたいって話になってさ。あんまり遅いとクラゲも出ちゃうし、急だけど来週の水曜日とかどうかな?」
「そうだな」
スマホのカレンダー機能で予定を確認するも今のところは空白。
文芸誌に掲載する作品の執筆は夜にやれば問題ない。
「大丈夫そう?」
「ああ、時間と場所さえ指定して貰えればその日は空いてる」
「よかった。詳しいことは後でメッセージで送るね。外出許可証の手続きも僕の方でやっておくよ」
「ありがとう。助かる」
学院の生徒は基本的に寮での生活が義務付けられているが、長期休暇は例外として外出許可証を発行すれば申請した期日の外出が認められる。
実家に帰省したり、親戚の家に泊まりに行く生徒への配慮だろう。
「それじゃあ、書き終わったから確認してもらってもいいかな」
「ああ」
西城から出し物の申請書を受け取る。
目を通した感じ記入漏れは無さそうだが気になる箇所が1つ。
「天童先輩、出店者って後から追加できますか?」
申請書を提出してから文化祭まで1ヶ月以上期間がある。
それまでに出店者の増減が発生する可能性もあるはずだ。
「ん? うん、その都度報告して貰えれば大丈夫だよ」
「分かりました。ありがとうございます。西城、出店場所の希望はあるか?」
「校門の近くが人気なんだろうけど、倍率が高そうだからここは無難に少し離れたところにしようかな」
西城らしい冷静な分析。
校門近くを選んで抽選に外れたら人通りの少ない場所になってしまう。
そこを避けた安全策だ。
「もし、他と被ったら抽選することになるからその時は生徒会室まで来てくれ」
「うん、分かったよ。じゃあ、僕はこれで。神楽坂くん、またね」
用を済ませた西城が立ち去り、残されたオレと天童先輩。
流れに乗ってオレも帰ろうと天童先輩に視線を向けると天童先輩もこちらを見ていた。
「神楽坂くん、ゲームやるよ!」
手にはゲームのコントローラー。
生徒会室の隅に置いてあったテレビの電源を入れ、ゲーム画面を立ち上げる。
「あの、オレまだお昼ご飯を食べてないのでそろそろ帰ろうかと」
「えー、そんなつまんないこと言わないでさ、1回だけ対戦やろうよー」
天童先輩はゲームのコントローラーをこちらに突き出し、早く早くとその手を手招きする。
こうなってしまっては諦めた方が良さそうだ。
「1回だけですからね」
コントローラーを受け取って天童先輩の隣に座る。
「今日新曲が追加されたばっかりだから楽しみなんだよねー」
以前は村を開拓するゲームに熱中していたみたいだが、今はリズムゲームにハマっているらしい。
熱中する趣味があるのは良いことだと思うが生徒会室でテレビを使ってゲームをするのはアリなのか?
夏休みだからギリギリセーフか?
「よし、いくよ!!」
もしダメだった場合、オレも怒られるんだろうな。
その後、天童先輩の「もう1回!」が続き、解放されたのは30分後だった。



