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砂浜エリアに停泊していた船に乗り込み、保健の鳴宮先生の治療を受けたオレは遅めの昼食をとるべくデッキに足を運んでいた。
ベンチに腰を掛け、ライフポイントで購入した梅干しのおにぎりを頬張る。
レストランを利用してもよかったのだが、集団序列戦の結果が発表された今となっては他人の視線が気になって食事が喉を通りそうになかった。
時刻は午後1時30分。
船を目指している最中に序列戦が終わり、その30分後である12時30分に集団序列戦の結果が『集団序列戦アプリ』で公開された。
「こんなところにいたんですか」
暗空に声を掛けられ、口の中に残っていたおにぎりをペットボトルの水で流し込む。
「すみません、急に話し掛けてしまって」
申し訳なさそうに頭を下げ、隣のベンチに腰を掛ける暗空。
手にはサンドイッチの袋を持っている。
「治療終わったんだな」
「はい、神楽坂くんは……重症みたいですね。私のせいで、すみません」
右手に巻かれた包帯を気にして再び謝罪をする。
戦闘中、クナイを素手で受ける選択を取ったのはオレだから気にしなくていいと言ったんだけどな。
「気にするなって言っただろ。それより食べないのか?」
「分かりました。そうですね、いただきます」
サンドイッチの包装を破り、両手で小さな口に運ぶ。
ふとビーチに目をやると、気分転換とばかりに生徒が水着で泳いでいた。
学院の予定到着時刻は明日の午前12時。
船内でも何度かアナウンスが入ったが消灯時間までは基本的に自由行動らしい。
夕方までビーチを解放。
深夜に出港して明日の朝には港に着く手筈になっている。
それまでの間は友人と過ごすも良し、船内の施設で序列戦の疲れを癒すも良し。
怪我を負っているオレは大人しく船内で休むつもりだ。
「神楽坂くん、結果は見ましたか?」
「ああ、ソロ序列戦のときと比べて随分と顔ぶれが変わったな」
一足先に食事を済ませ、スマホを眺めていると自然と話題は序列戦の順位の話へ。
しばらくは誰と話してもこの話題で持ち切りだろう。
【集団序列戦・上位7名】
1位・24得点 神楽坂春斗
2位・14得点 糸巻渚
3位・11得点 無名ななし
4位・10得点 暗空玲於奈
5位・9得点 門倉譲
6位・8得点 千炎寺正隆
7位・7得点 浮谷直哉
生徒を倒せば1得点獲得できるが、教師を倒せば一気に10得点が手に入る。
終盤でクロムとイレイナを倒したことがかなり効いたみたいだ。
ランキング画面から集団序列戦のルールが記載されているページに切り替え、報酬となるバトルポイントの内訳を計算する。
ランキングに対する報酬はソロ序列戦と変わらない。
変更点があるとすれば生存者に50バトルポイント、教師撃破ボーナスとして1000バトルポイントが支払われるということくらいだ。
オレの場合は得点数1位=3000バトルポイント。
教師撃破ボーナスが1000×2=2000バトルポイント。
生存ボーナスとして50バトルポイントの合計5050バトルポイントが支払われた。
「私と戦う前に教師2人を倒していたんですね。いつになったら神楽坂くんの底を見ることができるのでしょうか」
暗空が手に付いたサンドイッチのソースをぺろりと舐める。
「オレは常に全力でやっているつもりなんだがな」
「では、その強さの秘訣のようなものはあるのでしょうか?」
食べ終えたサンドイッチの包装を空の袋に入れ、正面に広がる雄大な海を見つめる暗空。
「幼少期の頃に父親に鍛えられたんだ。『来たるべき時に備えて技を磨く必要がある』と言っていたが、当時のオレには何のことだかさっぱり分からなかった」
「当時のということは答えは見つかったんですか?」
「いや、正直あの言葉が何を指しているのか今でも見当がつかない」
「そうですか。でも、良いお父さんだったんですね」
「どうだろうな」
オレの父親は夏蓮が誘拐されてから家に帰らなくなった。
母と2人で1番辛く、大変な時期を過ごしたからこそ家を空けていた父が良い人と言われても素直に頷くことはできない。
「オレの話よりもこれからの話だ。掲示板の件はオレと暗空と明智中心で動くことになると思うがいいか?」
「大丈夫です。生徒会にもどこまで報告するか決めておきましょうか」
「そうだな」
ここからの選択は1つ間違えれば致命傷となる。
生徒会に敵が潜んでいないとも限らないしな。
学院の闇を暴く為には学院の心臓と接触する必要がある。
異能力者育成学院の校長、陣内剛紀だ。
学院のトップなら一連の事件と関わっていても不思議ではない。
こちらの動きが悟られないよう慎重に行動しなくてはならない。
再び手元に目を落とし、学院のウェブサイトを開く。
トップページの新着欄の見出しには【1学年の序列の更新】とある。
すでに1度目を通しているが、改めて上位7人を上から見ていく。
【1学年序列上位7名】
1位・神楽坂春斗、8068BP
2位・暗空玲於奈、5275BP
3位・敷島ふさぎ、3337BP
4位・氷堂真冬、2100BP
5位・岩渕周、1510BP
5位・糸巻渚、1510BP
7位・無名ななし、1500BP
新たな実力者が顔を出し、序列が大きく入れ替わった。
7つの席を懸けた戦いはまだ始まったばかりだ。
第4章 集団序列戦in無人島編完結。
NEXT→第5章 学院の闇との対峙、天魔降臨編。
砂浜エリアに停泊していた船に乗り込み、保健の鳴宮先生の治療を受けたオレは遅めの昼食をとるべくデッキに足を運んでいた。
ベンチに腰を掛け、ライフポイントで購入した梅干しのおにぎりを頬張る。
レストランを利用してもよかったのだが、集団序列戦の結果が発表された今となっては他人の視線が気になって食事が喉を通りそうになかった。
時刻は午後1時30分。
船を目指している最中に序列戦が終わり、その30分後である12時30分に集団序列戦の結果が『集団序列戦アプリ』で公開された。
「こんなところにいたんですか」
暗空に声を掛けられ、口の中に残っていたおにぎりをペットボトルの水で流し込む。
「すみません、急に話し掛けてしまって」
申し訳なさそうに頭を下げ、隣のベンチに腰を掛ける暗空。
手にはサンドイッチの袋を持っている。
「治療終わったんだな」
「はい、神楽坂くんは……重症みたいですね。私のせいで、すみません」
右手に巻かれた包帯を気にして再び謝罪をする。
戦闘中、クナイを素手で受ける選択を取ったのはオレだから気にしなくていいと言ったんだけどな。
「気にするなって言っただろ。それより食べないのか?」
「分かりました。そうですね、いただきます」
サンドイッチの包装を破り、両手で小さな口に運ぶ。
ふとビーチに目をやると、気分転換とばかりに生徒が水着で泳いでいた。
学院の予定到着時刻は明日の午前12時。
船内でも何度かアナウンスが入ったが消灯時間までは基本的に自由行動らしい。
夕方までビーチを解放。
深夜に出港して明日の朝には港に着く手筈になっている。
それまでの間は友人と過ごすも良し、船内の施設で序列戦の疲れを癒すも良し。
怪我を負っているオレは大人しく船内で休むつもりだ。
「神楽坂くん、結果は見ましたか?」
「ああ、ソロ序列戦のときと比べて随分と顔ぶれが変わったな」
一足先に食事を済ませ、スマホを眺めていると自然と話題は序列戦の順位の話へ。
しばらくは誰と話してもこの話題で持ち切りだろう。
【集団序列戦・上位7名】
1位・24得点 神楽坂春斗
2位・14得点 糸巻渚
3位・11得点 無名ななし
4位・10得点 暗空玲於奈
5位・9得点 門倉譲
6位・8得点 千炎寺正隆
7位・7得点 浮谷直哉
生徒を倒せば1得点獲得できるが、教師を倒せば一気に10得点が手に入る。
終盤でクロムとイレイナを倒したことがかなり効いたみたいだ。
ランキング画面から集団序列戦のルールが記載されているページに切り替え、報酬となるバトルポイントの内訳を計算する。
ランキングに対する報酬はソロ序列戦と変わらない。
変更点があるとすれば生存者に50バトルポイント、教師撃破ボーナスとして1000バトルポイントが支払われるということくらいだ。
オレの場合は得点数1位=3000バトルポイント。
教師撃破ボーナスが1000×2=2000バトルポイント。
生存ボーナスとして50バトルポイントの合計5050バトルポイントが支払われた。
「私と戦う前に教師2人を倒していたんですね。いつになったら神楽坂くんの底を見ることができるのでしょうか」
暗空が手に付いたサンドイッチのソースをぺろりと舐める。
「オレは常に全力でやっているつもりなんだがな」
「では、その強さの秘訣のようなものはあるのでしょうか?」
食べ終えたサンドイッチの包装を空の袋に入れ、正面に広がる雄大な海を見つめる暗空。
「幼少期の頃に父親に鍛えられたんだ。『来たるべき時に備えて技を磨く必要がある』と言っていたが、当時のオレには何のことだかさっぱり分からなかった」
「当時のということは答えは見つかったんですか?」
「いや、正直あの言葉が何を指しているのか今でも見当がつかない」
「そうですか。でも、良いお父さんだったんですね」
「どうだろうな」
オレの父親は夏蓮が誘拐されてから家に帰らなくなった。
母と2人で1番辛く、大変な時期を過ごしたからこそ家を空けていた父が良い人と言われても素直に頷くことはできない。
「オレの話よりもこれからの話だ。掲示板の件はオレと暗空と明智中心で動くことになると思うがいいか?」
「大丈夫です。生徒会にもどこまで報告するか決めておきましょうか」
「そうだな」
ここからの選択は1つ間違えれば致命傷となる。
生徒会に敵が潜んでいないとも限らないしな。
学院の闇を暴く為には学院の心臓と接触する必要がある。
異能力者育成学院の校長、陣内剛紀だ。
学院のトップなら一連の事件と関わっていても不思議ではない。
こちらの動きが悟られないよう慎重に行動しなくてはならない。
再び手元に目を落とし、学院のウェブサイトを開く。
トップページの新着欄の見出しには【1学年の序列の更新】とある。
すでに1度目を通しているが、改めて上位7人を上から見ていく。
【1学年序列上位7名】
1位・神楽坂春斗、8068BP
2位・暗空玲於奈、5275BP
3位・敷島ふさぎ、3337BP
4位・氷堂真冬、2100BP
5位・岩渕周、1510BP
5位・糸巻渚、1510BP
7位・無名ななし、1500BP
新たな実力者が顔を出し、序列が大きく入れ替わった。
7つの席を懸けた戦いはまだ始まったばかりだ。
第4章 集団序列戦in無人島編完結。
NEXT→第5章 学院の闇との対峙、天魔降臨編。



