—1—
午後3時過ぎ、穏やかだと思われていた無人島の天候も雲行きが怪しくなり始めていた。
厚い雲が太陽を覆い隠すと森の中は一気に暗くなる。
2日目になり教師が参戦したとはいえ、敵は教師だけではない。
西エリアでは初日に息を潜めていた氷堂真冬が怒涛の快進撃をみせていた。
教師を警戒して他のエリアから逃げたきた生徒を撃退。
物陰に身を潜めていた生徒の動きを封じて校章を砕く。
西エリアは海水が細い道のように複数流れ込んできているため、地形さえ頭に入れておけば敵を追い込むことも可能だ。
また、西の端にはちょっとした砂浜もある。
開けた場所での戦闘に持ち込みたいのなら砂浜まで誘い込むのも戦略としてありだろう。
しかし、そう事が上手く運ばないところが集団序列戦の面白いところ。
氷堂と同じく西エリアを拠点としていた千炎寺と鉢合わせる形となったのだ。
「はぁぁぁぁぁ!!」
振り下ろされた緋炎を氷剣で振り払い、突きを放つ。
千炎寺は身体を逸らして回避し、後方に跳んだ。
「何度も剣を合わせてきたが、真剣勝負となると痺れるな」
体勢を整え直した千炎寺が口角を上げる。
「勝率は私の方が上だったはず。負けないよ」
特待生で入学した2人は生徒会長馬場裕二からの依頼を受けて反異能力者ギルドの襲撃を退けるメンバーに選出された過去がある。
つい1ヶ月前の出来事だが、スキル向上のために共に切磋琢磨して来た仲でもある。
戦闘時の思考や技の種類など、お互いがお互いをよく知っている中で最善の一手を選択しなくてはならない。
「円炎斬」
千炎寺が緋炎を横に薙ぎ、炎の斬撃を放つ。
氷堂は両手に握った氷剣で斬撃を受け止めると、回転をしながら後方に斬撃を受け流した。
自身の回転二連撃『氷華連牙』は主に攻撃を断ち切る場合に用いることが多いが、今回は受け流すためだけに力を割いた。
氷堂は初日の浮谷、門倉戦で腕に怪我を負っている。
氷の異能力で負傷箇所を冷やして応急処置はしたが、完治はしていない。
故に力押しとなると、腕に若干痛みが走ってしまう。
だが、相手が千炎寺となるとそんなことは言ってはいられない。
多少の痛みに目を瞑ってでも勝利を勝ち取らなくてはならない。
「氷柱吹雪」
氷柱を複数展開し、それを千炎寺に向かって放つと同時に氷堂も氷剣を構えて飛び出す。
氷柱に紛れ込むようにして氷剣の切っ先が千炎寺の胸元を狙う。
選択を迫られる千炎寺。
千炎寺の脳内には父、正嗣の言葉と神楽坂の言葉が再生されていた。
「異能力を磨くことだけに時間を使え」
「今は刀よりも異能力を伸ばした方がいい」
幼少期から父の背中を間近で見てきたため、刀に対する強いこだわりがあった。
刀で父を超える。
しかし、自分が認めた強者は口を揃えて刀では無く、異能力を磨けと言う。
千炎寺はそう言われる度に自分自身が否定されているような感覚に陥っていた。
だが、言葉の意味を自分なりに咀嚼することで変化しようとしていた。
緋炎を右手に持ち、左手は前に突き出す。
「掌炎の業火道!」
ぷすぷすと音を立て、物凄い爆炎が放出された。
一瞬で氷柱を蒸発させ、氷柱に紛れていた氷堂をも捉える。
氷堂は瞬時に『氷盾』を展開するが、炎の勢いに押されて押し返されてしまう。
これまでの千炎寺であれば氷柱を片っ端から刀で切り裂き、氷堂と刀を合わせていただろうが、今回は異能力を使うことを選んだ。
受け身を取りながらゴロゴロと地面を転がる氷堂にトドメを刺すべく、千炎寺が地面を駆ける。
敵を、氷堂を知っているからこそ一切の油断はしない。
腕から湧き出る炎を緋炎に流し込み、全身全霊で振り下ろす。
と、そのとき、2つの重量感のある足音が近づいてきた。
「生徒発見! 行くぞイレイナ!」
「クロム、私に命令しないで下さい。言われなくてもやりますから」
レーザー銃を構えたイレイナが千炎寺と氷堂に照準を合わせると、躊躇なく引き金を引いた。
緋炎を振り下ろすモーションに入っていた千炎寺は急遽ブレーキを掛けて体を反転し、銃弾を斬り払った。
突風と共に左右に銃弾が弾ける。
「私の銃弾を防ぐなんて、そこそこできるみたいですね」
「目標とは違うみたいだが、我輩も楽しむことができそうだな」
距離を詰めてきたイレイナとクロムと対峙する千炎寺。
「目標ってのがなんなのかわからないが負ける気はないね。教師が相手なら一気に1位になるチャンスだ」
「ビックリするくらいポジティブなのね。いいわ、どうせ1度死んだ命だし、ここは一時休戦ってことで共闘しましょう」
倒れていた氷堂が立ち上がり、千炎寺の隣に並ぶ。
2人の視線と2体のロボットの視線が交わる。
午後3時過ぎ、穏やかだと思われていた無人島の天候も雲行きが怪しくなり始めていた。
厚い雲が太陽を覆い隠すと森の中は一気に暗くなる。
2日目になり教師が参戦したとはいえ、敵は教師だけではない。
西エリアでは初日に息を潜めていた氷堂真冬が怒涛の快進撃をみせていた。
教師を警戒して他のエリアから逃げたきた生徒を撃退。
物陰に身を潜めていた生徒の動きを封じて校章を砕く。
西エリアは海水が細い道のように複数流れ込んできているため、地形さえ頭に入れておけば敵を追い込むことも可能だ。
また、西の端にはちょっとした砂浜もある。
開けた場所での戦闘に持ち込みたいのなら砂浜まで誘い込むのも戦略としてありだろう。
しかし、そう事が上手く運ばないところが集団序列戦の面白いところ。
氷堂と同じく西エリアを拠点としていた千炎寺と鉢合わせる形となったのだ。
「はぁぁぁぁぁ!!」
振り下ろされた緋炎を氷剣で振り払い、突きを放つ。
千炎寺は身体を逸らして回避し、後方に跳んだ。
「何度も剣を合わせてきたが、真剣勝負となると痺れるな」
体勢を整え直した千炎寺が口角を上げる。
「勝率は私の方が上だったはず。負けないよ」
特待生で入学した2人は生徒会長馬場裕二からの依頼を受けて反異能力者ギルドの襲撃を退けるメンバーに選出された過去がある。
つい1ヶ月前の出来事だが、スキル向上のために共に切磋琢磨して来た仲でもある。
戦闘時の思考や技の種類など、お互いがお互いをよく知っている中で最善の一手を選択しなくてはならない。
「円炎斬」
千炎寺が緋炎を横に薙ぎ、炎の斬撃を放つ。
氷堂は両手に握った氷剣で斬撃を受け止めると、回転をしながら後方に斬撃を受け流した。
自身の回転二連撃『氷華連牙』は主に攻撃を断ち切る場合に用いることが多いが、今回は受け流すためだけに力を割いた。
氷堂は初日の浮谷、門倉戦で腕に怪我を負っている。
氷の異能力で負傷箇所を冷やして応急処置はしたが、完治はしていない。
故に力押しとなると、腕に若干痛みが走ってしまう。
だが、相手が千炎寺となるとそんなことは言ってはいられない。
多少の痛みに目を瞑ってでも勝利を勝ち取らなくてはならない。
「氷柱吹雪」
氷柱を複数展開し、それを千炎寺に向かって放つと同時に氷堂も氷剣を構えて飛び出す。
氷柱に紛れ込むようにして氷剣の切っ先が千炎寺の胸元を狙う。
選択を迫られる千炎寺。
千炎寺の脳内には父、正嗣の言葉と神楽坂の言葉が再生されていた。
「異能力を磨くことだけに時間を使え」
「今は刀よりも異能力を伸ばした方がいい」
幼少期から父の背中を間近で見てきたため、刀に対する強いこだわりがあった。
刀で父を超える。
しかし、自分が認めた強者は口を揃えて刀では無く、異能力を磨けと言う。
千炎寺はそう言われる度に自分自身が否定されているような感覚に陥っていた。
だが、言葉の意味を自分なりに咀嚼することで変化しようとしていた。
緋炎を右手に持ち、左手は前に突き出す。
「掌炎の業火道!」
ぷすぷすと音を立て、物凄い爆炎が放出された。
一瞬で氷柱を蒸発させ、氷柱に紛れていた氷堂をも捉える。
氷堂は瞬時に『氷盾』を展開するが、炎の勢いに押されて押し返されてしまう。
これまでの千炎寺であれば氷柱を片っ端から刀で切り裂き、氷堂と刀を合わせていただろうが、今回は異能力を使うことを選んだ。
受け身を取りながらゴロゴロと地面を転がる氷堂にトドメを刺すべく、千炎寺が地面を駆ける。
敵を、氷堂を知っているからこそ一切の油断はしない。
腕から湧き出る炎を緋炎に流し込み、全身全霊で振り下ろす。
と、そのとき、2つの重量感のある足音が近づいてきた。
「生徒発見! 行くぞイレイナ!」
「クロム、私に命令しないで下さい。言われなくてもやりますから」
レーザー銃を構えたイレイナが千炎寺と氷堂に照準を合わせると、躊躇なく引き金を引いた。
緋炎を振り下ろすモーションに入っていた千炎寺は急遽ブレーキを掛けて体を反転し、銃弾を斬り払った。
突風と共に左右に銃弾が弾ける。
「私の銃弾を防ぐなんて、そこそこできるみたいですね」
「目標とは違うみたいだが、我輩も楽しむことができそうだな」
距離を詰めてきたイレイナとクロムと対峙する千炎寺。
「目標ってのがなんなのかわからないが負ける気はないね。教師が相手なら一気に1位になるチャンスだ」
「ビックリするくらいポジティブなのね。いいわ、どうせ1度死んだ命だし、ここは一時休戦ってことで共闘しましょう」
倒れていた氷堂が立ち上がり、千炎寺の隣に並ぶ。
2人の視線と2体のロボットの視線が交わる。



