—1—
集団序列戦開始を知らせるピストルが鳴り響いてから40分が経ち、オレはただひたすらに生い茂る木々の中を歩いていた。
時間が経過するにつれて太陽も登っていくため、気温も上昇する。
加えて木の根や傾斜の関係で足場が安定していない分、余計な体力を消費してしまう。
ペットボトル2本だけではすぐに底をついてしまいそうだ。
戦闘面とサバイバル面、この両立に多くの生徒が苦しまされることになるだろうな。
序列戦開始直後はあちこちから激しい戦闘音が聞こえてきたのだが、今はその頻度も減ってきている。
とはいえ、想定よりも序盤から飛ばす生徒が多い印象だ。
今回の序列戦で上位を勝ち取るためには大きく分けて2通りの作戦を取ることができる。
1つ目は生存者が多い序盤でポイントを稼ぐだけ稼いで圧倒的な差を作ること。
時間が経てば経つほど、無人島に残るのは実力者ばかりになる。
となると、1度の戦闘で消費する体力も大きくなる。また、敗北する可能性も高くなる。
そう考えると1人倒せば1ポイントというルール自体は変わらないのだからポイントを獲得しやすい序盤に無理をしてでも行動に起こした方がいい。
しかし、これにはリスクもある。
序列戦3日目になるとポイント獲得数上位7人のGPSが常時発動してしまうので恰好の的となってしまう。
派手に目立つのも考え所だ。
そして、2つ目は中盤以降からスパートを掛けていく方法だ。
序盤はポイント獲得数上位に食い込まないようにセーブして戦い、教師が参加する2日目以降にポイントを狙っていく。
3日目突入時にGPSの対象者に入らない程度のポイント数を獲っておくことが理想だが、そこは生存者数と相談だろう。
ポイントの細かい調整が重要となってくるため、腕に自信のある生徒しかこの選択肢は取れない。
オレも序盤は様子を見るつもりだったが、思ったよりもハイペースな展開になったため、作戦を変更することも視野に入れなくてはならない。
「あれは明智か?」
前方に明智の姿を捉えた。
周囲を気にしている様子から誰かの跡をつけていることが窺える。
暗空が狙われている可能性がある以上、オレも見過ごすことはできない。
十分な距離を保ちながらオレは明智の跡をつけることにした。
—2—
南西から北東にかけて無人島を二分するように山が伸びているため、生徒がまず悩むのが山を越えて西エリアと北エリアを目指すか、山を越えずに森が広がっている東エリアを進み、迂回して北エリアを目指すかという点だ。
別に必ずしも北エリアを目指さなくてはいけないというルールは無いので、東エリアと砂浜エリアを軸に行動するのも作戦として悪くはない。
だが、山の中に比べたら視界が開けているため敵の目に掛かりやすいというデメリットがある。
どちらを取るかはグループのメンバーの異能力にも左右されるところだろう。
「ひ、卑怯だぞ、お前たち!」
南西の山中で尻を地面につきながら目の前の男2人に指をさす少年。
「卑怯? 生憎と俺にはお前が何を言ってるのかわかんねーな」
指をさされた浮谷直哉は、薄ら笑みを浮かべながら男の左胸に向かって手を伸ばす。
「く、来るな!!」
男は必死に抵抗しようと浮谷の手を振り払うが、それにイラついた浮谷が男を空中に投げ飛ばした。
木の枝にガサガサと音を立ててぶつかり、地面に叩きつけられる男。
これまで山道を走り回ってきたのか男に余力は残っていない。
「門倉、やれ」
「仰せのままに」
浮谷の指示を受け、背後に控えていた門倉が男のバッジを拳で叩き割った。
「この卑怯者め! こんなのチートじゃないか!」
「浮谷さん、こいつどうしやすか?」
「放っておけ」
敗者に興味などないと、浮谷が男から視線を外して歩き出した。
その後を門倉が追う。
「チートか。まあ、ある意味チートかもしれないな」
男の言葉を思い出し、浮谷が小さく笑った。
「そんなに俺の異能力ってやばいっすか?」
「少なくともお前が思ってる以上にはな」
「へへっ、優勝も夢じゃないっすね!」
門倉がペットボトルの水を豪快に頭から被った。
「おい、貴重な飲み水なんだから無駄にすんじゃねー」
「あ、いけね」
「ったく、その馬鹿がマシになれば良い線いくんだけどな」
「それはあれっすよ。浮谷さんの頭脳で補って頂ければ」
「チッ」
浮谷が短く舌打ちをした。
序列戦が始まってまだ1時間足らず。
得点獲得数上位7人の途中経過は1日目終了時と2日目終了時に発表されることになっている。
つまり、この時点ではまだ誰も知らない。
浮谷と門倉のグループが単独で首位に躍り出たという事実を。
集団序列戦開始を知らせるピストルが鳴り響いてから40分が経ち、オレはただひたすらに生い茂る木々の中を歩いていた。
時間が経過するにつれて太陽も登っていくため、気温も上昇する。
加えて木の根や傾斜の関係で足場が安定していない分、余計な体力を消費してしまう。
ペットボトル2本だけではすぐに底をついてしまいそうだ。
戦闘面とサバイバル面、この両立に多くの生徒が苦しまされることになるだろうな。
序列戦開始直後はあちこちから激しい戦闘音が聞こえてきたのだが、今はその頻度も減ってきている。
とはいえ、想定よりも序盤から飛ばす生徒が多い印象だ。
今回の序列戦で上位を勝ち取るためには大きく分けて2通りの作戦を取ることができる。
1つ目は生存者が多い序盤でポイントを稼ぐだけ稼いで圧倒的な差を作ること。
時間が経てば経つほど、無人島に残るのは実力者ばかりになる。
となると、1度の戦闘で消費する体力も大きくなる。また、敗北する可能性も高くなる。
そう考えると1人倒せば1ポイントというルール自体は変わらないのだからポイントを獲得しやすい序盤に無理をしてでも行動に起こした方がいい。
しかし、これにはリスクもある。
序列戦3日目になるとポイント獲得数上位7人のGPSが常時発動してしまうので恰好の的となってしまう。
派手に目立つのも考え所だ。
そして、2つ目は中盤以降からスパートを掛けていく方法だ。
序盤はポイント獲得数上位に食い込まないようにセーブして戦い、教師が参加する2日目以降にポイントを狙っていく。
3日目突入時にGPSの対象者に入らない程度のポイント数を獲っておくことが理想だが、そこは生存者数と相談だろう。
ポイントの細かい調整が重要となってくるため、腕に自信のある生徒しかこの選択肢は取れない。
オレも序盤は様子を見るつもりだったが、思ったよりもハイペースな展開になったため、作戦を変更することも視野に入れなくてはならない。
「あれは明智か?」
前方に明智の姿を捉えた。
周囲を気にしている様子から誰かの跡をつけていることが窺える。
暗空が狙われている可能性がある以上、オレも見過ごすことはできない。
十分な距離を保ちながらオレは明智の跡をつけることにした。
—2—
南西から北東にかけて無人島を二分するように山が伸びているため、生徒がまず悩むのが山を越えて西エリアと北エリアを目指すか、山を越えずに森が広がっている東エリアを進み、迂回して北エリアを目指すかという点だ。
別に必ずしも北エリアを目指さなくてはいけないというルールは無いので、東エリアと砂浜エリアを軸に行動するのも作戦として悪くはない。
だが、山の中に比べたら視界が開けているため敵の目に掛かりやすいというデメリットがある。
どちらを取るかはグループのメンバーの異能力にも左右されるところだろう。
「ひ、卑怯だぞ、お前たち!」
南西の山中で尻を地面につきながら目の前の男2人に指をさす少年。
「卑怯? 生憎と俺にはお前が何を言ってるのかわかんねーな」
指をさされた浮谷直哉は、薄ら笑みを浮かべながら男の左胸に向かって手を伸ばす。
「く、来るな!!」
男は必死に抵抗しようと浮谷の手を振り払うが、それにイラついた浮谷が男を空中に投げ飛ばした。
木の枝にガサガサと音を立ててぶつかり、地面に叩きつけられる男。
これまで山道を走り回ってきたのか男に余力は残っていない。
「門倉、やれ」
「仰せのままに」
浮谷の指示を受け、背後に控えていた門倉が男のバッジを拳で叩き割った。
「この卑怯者め! こんなのチートじゃないか!」
「浮谷さん、こいつどうしやすか?」
「放っておけ」
敗者に興味などないと、浮谷が男から視線を外して歩き出した。
その後を門倉が追う。
「チートか。まあ、ある意味チートかもしれないな」
男の言葉を思い出し、浮谷が小さく笑った。
「そんなに俺の異能力ってやばいっすか?」
「少なくともお前が思ってる以上にはな」
「へへっ、優勝も夢じゃないっすね!」
門倉がペットボトルの水を豪快に頭から被った。
「おい、貴重な飲み水なんだから無駄にすんじゃねー」
「あ、いけね」
「ったく、その馬鹿がマシになれば良い線いくんだけどな」
「それはあれっすよ。浮谷さんの頭脳で補って頂ければ」
「チッ」
浮谷が短く舌打ちをした。
序列戦が始まってまだ1時間足らず。
得点獲得数上位7人の途中経過は1日目終了時と2日目終了時に発表されることになっている。
つまり、この時点ではまだ誰も知らない。
浮谷と門倉のグループが単独で首位に躍り出たという事実を。



