俺の顔をとんでもないイケメンが覗き込んでいた。人の顔に対してとんでもない、という言葉を使うのはちょっとおかしいかもしれない。けど、そういう言葉を使いたくなるくらいのもっっっのすごいイケメン。センター分けの黒髪はさらさら。掘りの深い顔立ち。すっと通った鼻筋に、切れ長で、クールさを感じさせる夜の空みたいな瞳。とにかく整った、綺麗な顔立ちをしている。画面の向こうにいるアイドルとか青春恋愛映画の向こうにいるイケメンがそのまま出てきたような華やかな顔立ち。俺はそのイケメンの彼に、横抱きのようにして身体を支えられていた。まるで、お姫様の危機に王子様が助けに来た、というような体勢で。
「……先輩、大丈夫ですか? 怪我はないですか? 痛む箇所はないですか?」
その言葉で前後のことがようやく繋がる。俺が転び掛けた時に、彼が支えてくれたんだ、とようやく理解する。初対面のはずなのに、俺のことをひどく心配するような声色。表情も、それこそ最愛の姫が危機に遭った、みたいな顔をしている。まあ、俺に「お姫様」の比喩は似合わない。身長175のとにかくフツーの男。でも、ちょっとドキドキしてる。このドキドキは、恋のドキドキ、というよりは転びかけた時のドキドキなのかもしれないけれど……。
「は、はい……。怪我はないです……。痛くも、ないです。あ、ありがとうございます……」
答えた時は動揺してたからつい敬語になってしまったけど、先輩、って言ってたから、一年生で後輩なんだな、とぼんやり思った。彼の胸の部分に付けられている学年章も1の数字が記されているからやっぱり一年生。
「良かったです……先輩に何かあったらどうしようかと……」
「え……?」
彼が俺の答えに安心しきった表情を見せる。けど、その言葉と醸し出す雰囲気に戸惑った。なんというか彼のその声の響きは「転び掛けた初対面の先輩を助けて安心した」という雰囲気ではない。なんというか「想い人が絶体絶命の危機にさらされようとしていたのを間一髪で助けて安心した」みたいな雰囲気。そもそも、彼とは初対面のはず。どうして……?
「そういえば、まだ名乗ってなかったですね。俺は一年の神原晴也(かんばらはるや)って言います」
「かんばら、くん……」
名前を口にしながら、記憶の中を辿る。かんばら、という名字の知り合いはいない。思い出せない、という顔をしてしまった。けれども、彼――神原くんは全く動じずに、真っ黒で綺麗な瞳で、俺の方を見つめている。うっとりと、とろけるような瞳で。
「僕はあの日から、ずーっとあなたと再会することだけを考えていたんです……。入試の日からずっと……」
「……あ!」
入試、という言葉が神原くんの口から出た瞬間、目の前の神原くんと、記憶の中の子が一致した。
「……先輩、大丈夫ですか? 怪我はないですか? 痛む箇所はないですか?」
その言葉で前後のことがようやく繋がる。俺が転び掛けた時に、彼が支えてくれたんだ、とようやく理解する。初対面のはずなのに、俺のことをひどく心配するような声色。表情も、それこそ最愛の姫が危機に遭った、みたいな顔をしている。まあ、俺に「お姫様」の比喩は似合わない。身長175のとにかくフツーの男。でも、ちょっとドキドキしてる。このドキドキは、恋のドキドキ、というよりは転びかけた時のドキドキなのかもしれないけれど……。
「は、はい……。怪我はないです……。痛くも、ないです。あ、ありがとうございます……」
答えた時は動揺してたからつい敬語になってしまったけど、先輩、って言ってたから、一年生で後輩なんだな、とぼんやり思った。彼の胸の部分に付けられている学年章も1の数字が記されているからやっぱり一年生。
「良かったです……先輩に何かあったらどうしようかと……」
「え……?」
彼が俺の答えに安心しきった表情を見せる。けど、その言葉と醸し出す雰囲気に戸惑った。なんというか彼のその声の響きは「転び掛けた初対面の先輩を助けて安心した」という雰囲気ではない。なんというか「想い人が絶体絶命の危機にさらされようとしていたのを間一髪で助けて安心した」みたいな雰囲気。そもそも、彼とは初対面のはず。どうして……?
「そういえば、まだ名乗ってなかったですね。俺は一年の神原晴也(かんばらはるや)って言います」
「かんばら、くん……」
名前を口にしながら、記憶の中を辿る。かんばら、という名字の知り合いはいない。思い出せない、という顔をしてしまった。けれども、彼――神原くんは全く動じずに、真っ黒で綺麗な瞳で、俺の方を見つめている。うっとりと、とろけるような瞳で。
「僕はあの日から、ずーっとあなたと再会することだけを考えていたんです……。入試の日からずっと……」
「……あ!」
入試、という言葉が神原くんの口から出た瞬間、目の前の神原くんと、記憶の中の子が一致した。


