寝不足と疲れが原因だったのか、一日何もせずにゆっくり休んだらそこそこ元気になっていた。その間にも神原くんからはLIMEのメッセージが来ていた。“どうかゆっくり休んでくださいね““何か欲しいものがあったら言ってくださいね。持っていきます“というメッセージがきた。嬉しかった。
あの日をきっかけに、俺も、俺の周りも、いろんなことが少しずつ変わってきた。
「ごめん、ほんっとーにごめん!」
教室に入るなり、佐山に土下座レベルで謝罪された。
「大丈夫か? 熱。ごめんな、日直、任せて。」
「久世くんにいろいろ任せっぱなしだったよね。ごめんね」
錦田に他のクラスメイト達も、俺に向かって謝罪の言葉をかけてくれる。
「……俺の方こそごめん。ちゃんとだめそうな時はだめって言うから」
「ああ、頼む……! 俺も、スポ大委員の仕事、これからは久世に頼らずにちゃんとやるから!」
佐山の「スポ大委員」という言葉で俺は思い出す。練習場所、確保出来てなかった
「…………そういえば、あの、練習場所ってどうなった?」
「ああ、それなら心配ないぜ!」
佐山が言うには、俺が熱を出して帰った後、佐山と陸上部の二人が一緒に山原先輩に直談判して、なんとか練習場所をねじ込んでもらったそう。そして、足りないところは錦田と笹本さんが協力して調整してくれたらしい。彼女はバドミントン部でかなりの権限を持っているらしく、それもあって、なんとかなったそうだ。ほっとする。
「久世……」
「ん?」
俺がほっとしたところで、陸上部の二人が声を掛けてきた。
「そういや、あの一年、俺達のこと何か言ってたか?」
「え……? 一年……神原くんのこと?」
まるで恐ろしいお化けでも見たのような口調で二人は言う。一年、という名前を出した瞬間、佐山の顔も引き攣って、びくりと身体が跳ねた。
「えっと、俺が休んでる時にお見舞いLIMEが来たくらいだけど……」
「そ、そっか……」
神原くんは俺にべっとりだけど、そんな怖がる要素あった……? ちょっと戸惑った。スマートフォンのLIMEを見返す。
“どうかゆっくり休んでくださいね““何か欲しいものがあったら言ってくださいね。持っていきます“ そんな気遣うメッセージ。その優しさ、そして神原くんのことを考えて心がふわ、と甘くなる。
「あの一年のガチギレ、すごかったよな……」
「ああ……」
俺が帰った後、神原くんがうちのクラスでガチギレした、らしい。神原くんのガチギレ姿……。あまり想像出来なかった。
そして、ようやく俺の生活にも余裕が出てきた。いつものベンチで二人並んでいる。
「先輩とお昼食べるの、久しぶりですね」
「うん、なかなか来れなくてごめんね」
「いえ。今日会えただけで十分です」
神原くんはにこにことしながら弁当袋を空ける。ちら、と神原くんの方を見る。綺麗な顔。俺に目を合わせると柔らかな表情を浮かべる。ちょっと怒ったような視線、みたいなのは向けられたことがあるけれど、ガチギレ、は全く想像がつかない。
「あの、怒ったってほんと……?」
「先輩に頼り過ぎだ、ってちょっとだけお説教だけですよ」
「そ、そっか……」
ちょっとだけお説教、って怯え方ではなかった。一体どんな怒り方したんだろう……。
「……そうだ、先輩」
「ん?」
「来週の土曜日、出かけませんか?」
「え……?」
「学校の最寄り駅のすぐ近くに、プラネタリウムが入っているショッピングモール、ありましたよね」
「う、うん……」
この学校のそばには大きいショッピングモールがある。プラネタリウムとか、水族館とか、そういうのが一緒になっていて、よくカップルとかを見かける。もしかして、これは、デートのお誘い……? 心が跳ねた。
「しばらく一緒にいられなかったので、先輩と、一日一緒にいたいな、と思いまして……」
「う、うん……」
神原くんの言葉に俺は頷いた。ちょっと頬が熱くなる。
楽しみだ。と同時にちょっとドキドキした感覚が走っていた。ただ、遊びに行くのが楽しみ、という感覚とは少し違っていた。
……これが、恋なのかもしれないな、とも。
あの日をきっかけに、俺も、俺の周りも、いろんなことが少しずつ変わってきた。
「ごめん、ほんっとーにごめん!」
教室に入るなり、佐山に土下座レベルで謝罪された。
「大丈夫か? 熱。ごめんな、日直、任せて。」
「久世くんにいろいろ任せっぱなしだったよね。ごめんね」
錦田に他のクラスメイト達も、俺に向かって謝罪の言葉をかけてくれる。
「……俺の方こそごめん。ちゃんとだめそうな時はだめって言うから」
「ああ、頼む……! 俺も、スポ大委員の仕事、これからは久世に頼らずにちゃんとやるから!」
佐山の「スポ大委員」という言葉で俺は思い出す。練習場所、確保出来てなかった
「…………そういえば、あの、練習場所ってどうなった?」
「ああ、それなら心配ないぜ!」
佐山が言うには、俺が熱を出して帰った後、佐山と陸上部の二人が一緒に山原先輩に直談判して、なんとか練習場所をねじ込んでもらったそう。そして、足りないところは錦田と笹本さんが協力して調整してくれたらしい。彼女はバドミントン部でかなりの権限を持っているらしく、それもあって、なんとかなったそうだ。ほっとする。
「久世……」
「ん?」
俺がほっとしたところで、陸上部の二人が声を掛けてきた。
「そういや、あの一年、俺達のこと何か言ってたか?」
「え……? 一年……神原くんのこと?」
まるで恐ろしいお化けでも見たのような口調で二人は言う。一年、という名前を出した瞬間、佐山の顔も引き攣って、びくりと身体が跳ねた。
「えっと、俺が休んでる時にお見舞いLIMEが来たくらいだけど……」
「そ、そっか……」
神原くんは俺にべっとりだけど、そんな怖がる要素あった……? ちょっと戸惑った。スマートフォンのLIMEを見返す。
“どうかゆっくり休んでくださいね““何か欲しいものがあったら言ってくださいね。持っていきます“ そんな気遣うメッセージ。その優しさ、そして神原くんのことを考えて心がふわ、と甘くなる。
「あの一年のガチギレ、すごかったよな……」
「ああ……」
俺が帰った後、神原くんがうちのクラスでガチギレした、らしい。神原くんのガチギレ姿……。あまり想像出来なかった。
そして、ようやく俺の生活にも余裕が出てきた。いつものベンチで二人並んでいる。
「先輩とお昼食べるの、久しぶりですね」
「うん、なかなか来れなくてごめんね」
「いえ。今日会えただけで十分です」
神原くんはにこにことしながら弁当袋を空ける。ちら、と神原くんの方を見る。綺麗な顔。俺に目を合わせると柔らかな表情を浮かべる。ちょっと怒ったような視線、みたいなのは向けられたことがあるけれど、ガチギレ、は全く想像がつかない。
「あの、怒ったってほんと……?」
「先輩に頼り過ぎだ、ってちょっとだけお説教だけですよ」
「そ、そっか……」
ちょっとだけお説教、って怯え方ではなかった。一体どんな怒り方したんだろう……。
「……そうだ、先輩」
「ん?」
「来週の土曜日、出かけませんか?」
「え……?」
「学校の最寄り駅のすぐ近くに、プラネタリウムが入っているショッピングモール、ありましたよね」
「う、うん……」
この学校のそばには大きいショッピングモールがある。プラネタリウムとか、水族館とか、そういうのが一緒になっていて、よくカップルとかを見かける。もしかして、これは、デートのお誘い……? 心が跳ねた。
「しばらく一緒にいられなかったので、先輩と、一日一緒にいたいな、と思いまして……」
「う、うん……」
神原くんの言葉に俺は頷いた。ちょっと頬が熱くなる。
楽しみだ。と同時にちょっとドキドキした感覚が走っていた。ただ、遊びに行くのが楽しみ、という感覚とは少し違っていた。
……これが、恋なのかもしれないな、とも。


