「そう! この間のイベストよかったよねえ。あのキャラのさ、意外な過去が明かされてさあ」
「うん、今までのシナリオで示唆はあったけれど、あんなに丁寧に、しかもイベストで全部終わらせるとは思ってなかったな」
「だよねえ! あぁんもう、ほんっとうに好き!」
私と葉加瀬くんは、ソシャゲの話をするべく、たびたび大声でしゃべっても大丈夫なように屋上前の階段で落ち合ってしゃべるようになった。
意外なことに、その場所を教えてくれたのは葉加瀬くんだ。
「なんで?」と聞いたら、彼は気まずそうな顔で教えてくれた。
「……ソシャゲのイベントを走るとき、ここが一番フリーWi-Fiの電波が届くから……」
「よく気付いたね!?」
「電波求めて校内彷徨ってた。自分のスマホのギガ全部使い切る訳にもいかないから」
「なるほど、そりゃそうだ」
私も葉加瀬くんもBL語りや夢語りにならない限りは衝突せず、気楽に話をすることができた。ただ、私のBL妄想は葉加瀬くんからしてみれば予想が付かないらしく、逆に私も葉加瀬くんから教えてもらわなかったら夢妄想は全然想像つかないところから来るから驚きだ。
「ええ……男キャラふたりが出てきたら、付き合ってるとかって思わないの? 距離感近いのに?」
「いや、それくらい普通じゃないのか。女子だって必要以上にベタベタしてるじゃん」
「あれは普通に仲いいからだよ。友達同士の距離感」
「それが男同士になったらどうしてすぐBLになるんだよ」
「だって。男同士で格好付けてると、すぐかけ算が見えるんだよ」
「マジか。あれは虚勢張ってるからなんだけど、それがかけ算に見えるのか。男同士のほうがそりゃ虚勢張り合うだろ」
「そういうもんなの?」
「女子だって、彼氏とデートに行くよりも、友達と遊びに行くときのほうが服に気合い入れないか?」
「たしかにそれはあるかもしれない」
話せば話すほど、知らない話がたくさん出てきて、脳みそにたくさん皺が刻まれていくのがわかる。
一方、葉加瀬くんの夢妄想もなかなか私だと理解できないものが出てくる。
「……あそこまで可哀想がられるんだったら、もうちょっと運営も優しい子出してやればいいのに」
「駄目でしょ!? これヒーローものだよ!? 女性向けで女の子出したら炎上するじゃん!」
「いや、そういうんじゃなくって。ちょっとゲストでいいから、『ありがとう』のひと言でももらわないと、ヒーローだってやってられないだろ。頑張って立ってるからって、ずっと頑張って立ってられる訳じゃないんだしさ」
「そりゃそうだけど。それなら相手は既にいるじゃない!」
「だからそこですぐ男同士で矢印するなよ。ノンケだろうが」
「ノンケだなんて公式見解出てませんーっ」
「そもそも無茶苦茶ノンケで男が嫌って言ってるキャラまでかけ算するなよ。さすがに可哀想だろ」
ギャーギャー言っていると、昼休みもあっという間だ。
私たちふたりがそのまんま教室に帰ってくると、真知子ちゃんも夏姫ちゃんも怪訝な顔で「お帰り」と言ってくれた。
「最近葉加瀬くんと仲いいね?」
「そう? ただ買い物に行ってちょっと助けてもらっただけだよ」
「なになに? 成ちゃんに遂に恋バナ?」
「そんなんじゃないったら」
「まあそうだね。もし成ちゃんと葉加瀬くんがくっついたら、あまりにも二次元過ぎるもんね」
「妖精と二次元王子だからねえ。うん」
その言葉に、私は少しばかりげんなりする。
妖精っぽいって言われ続けているけれど、要は幼いってことだし。葉加瀬くんの場合は優等生が過ぎて、ソシャゲ好きなことも夢男子なことも周りに言えない。
差別してはいけません。皆それぞれ違うんです。
倫理教育で何度も何度も叩き込まれているものの。でもさあ、その差別ってどこからが差別? 私は妖精ではないし、腐女子だし。葉加瀬くんはノンケだし、でも夢男子だし。
好きなこと、自分の趣味趣向を口に出せないっていうのは、結構しんどいんだ。
「うん、今までのシナリオで示唆はあったけれど、あんなに丁寧に、しかもイベストで全部終わらせるとは思ってなかったな」
「だよねえ! あぁんもう、ほんっとうに好き!」
私と葉加瀬くんは、ソシャゲの話をするべく、たびたび大声でしゃべっても大丈夫なように屋上前の階段で落ち合ってしゃべるようになった。
意外なことに、その場所を教えてくれたのは葉加瀬くんだ。
「なんで?」と聞いたら、彼は気まずそうな顔で教えてくれた。
「……ソシャゲのイベントを走るとき、ここが一番フリーWi-Fiの電波が届くから……」
「よく気付いたね!?」
「電波求めて校内彷徨ってた。自分のスマホのギガ全部使い切る訳にもいかないから」
「なるほど、そりゃそうだ」
私も葉加瀬くんもBL語りや夢語りにならない限りは衝突せず、気楽に話をすることができた。ただ、私のBL妄想は葉加瀬くんからしてみれば予想が付かないらしく、逆に私も葉加瀬くんから教えてもらわなかったら夢妄想は全然想像つかないところから来るから驚きだ。
「ええ……男キャラふたりが出てきたら、付き合ってるとかって思わないの? 距離感近いのに?」
「いや、それくらい普通じゃないのか。女子だって必要以上にベタベタしてるじゃん」
「あれは普通に仲いいからだよ。友達同士の距離感」
「それが男同士になったらどうしてすぐBLになるんだよ」
「だって。男同士で格好付けてると、すぐかけ算が見えるんだよ」
「マジか。あれは虚勢張ってるからなんだけど、それがかけ算に見えるのか。男同士のほうがそりゃ虚勢張り合うだろ」
「そういうもんなの?」
「女子だって、彼氏とデートに行くよりも、友達と遊びに行くときのほうが服に気合い入れないか?」
「たしかにそれはあるかもしれない」
話せば話すほど、知らない話がたくさん出てきて、脳みそにたくさん皺が刻まれていくのがわかる。
一方、葉加瀬くんの夢妄想もなかなか私だと理解できないものが出てくる。
「……あそこまで可哀想がられるんだったら、もうちょっと運営も優しい子出してやればいいのに」
「駄目でしょ!? これヒーローものだよ!? 女性向けで女の子出したら炎上するじゃん!」
「いや、そういうんじゃなくって。ちょっとゲストでいいから、『ありがとう』のひと言でももらわないと、ヒーローだってやってられないだろ。頑張って立ってるからって、ずっと頑張って立ってられる訳じゃないんだしさ」
「そりゃそうだけど。それなら相手は既にいるじゃない!」
「だからそこですぐ男同士で矢印するなよ。ノンケだろうが」
「ノンケだなんて公式見解出てませんーっ」
「そもそも無茶苦茶ノンケで男が嫌って言ってるキャラまでかけ算するなよ。さすがに可哀想だろ」
ギャーギャー言っていると、昼休みもあっという間だ。
私たちふたりがそのまんま教室に帰ってくると、真知子ちゃんも夏姫ちゃんも怪訝な顔で「お帰り」と言ってくれた。
「最近葉加瀬くんと仲いいね?」
「そう? ただ買い物に行ってちょっと助けてもらっただけだよ」
「なになに? 成ちゃんに遂に恋バナ?」
「そんなんじゃないったら」
「まあそうだね。もし成ちゃんと葉加瀬くんがくっついたら、あまりにも二次元過ぎるもんね」
「妖精と二次元王子だからねえ。うん」
その言葉に、私は少しばかりげんなりする。
妖精っぽいって言われ続けているけれど、要は幼いってことだし。葉加瀬くんの場合は優等生が過ぎて、ソシャゲ好きなことも夢男子なことも周りに言えない。
差別してはいけません。皆それぞれ違うんです。
倫理教育で何度も何度も叩き込まれているものの。でもさあ、その差別ってどこからが差別? 私は妖精ではないし、腐女子だし。葉加瀬くんはノンケだし、でも夢男子だし。
好きなこと、自分の趣味趣向を口に出せないっていうのは、結構しんどいんだ。



