その男子を「田中」と仮称しよう。新鮮な失恋の記憶をあけすけに語って、傷ついた乙女心に自ら塩を塗りたくはないので。
 昼休み、食堂へ行く途中で田中の姿を見かけた。背の小さな可愛らしい女子と手を繋いで歩いていた。へえ、そういう系統が好みなのか、と私は思った。確かに私とは全然違うタイプだった。
 彼への報復はあの日に済んだはずだった。
 それなのに、その光景になぜか少しだけ、切ない気持ちに私はなった。