その翌日の昼休み、俺は一年二組の教室の前に立っていた。教室のドアが開き、廊下に出てきた人物は俺の顔を見て目を見開いた。
「弁当作ってきたから屋上行こう。寒いけど」
「え、あの……でも」
「ほら行くぞ、橋元」
返事を待たずに歩き出すと、橋元は躊躇いながらも俺についてきた。
誰もいない屋上で橋元の目の前に弁当箱を差し出した。
「これ、橋元の分」
「あの、戸倉先輩、これは……」
「初めて弁当作ってみたんだ。感想聞かせろよ」
「えっ!? せ、先輩の、初めて……ですか……!?」
「誤解を招く言い方はやめろ」
こいつのヤバさは健在なようだ。
橋元は震える手で弁当箱を受け取り、そっと蓋を開けた。そして中身を凝視しながら固まった。
今日の弁当は焦げたハンバーグと味が濃すぎる野菜炒め、水の量を間違えてカチカチになったご飯。誰がどう見ても失敗作だ。
「俺さ、正直に言うと橋元の弁当あんまりおいしくないと思ってた」
「えっ!? そ、そうだったんですか……」
「でも自分で作ってみたらすげー難しかった。こんなに大変なことやってくれてたんだなって分かったよ」
「戸倉先輩……」
その声は感極まったように掠れていた。橋元は一度ぎゅっと目を閉じ、すぐに笑顔になって箸を手に取った。
「いただきます」
一口大に切ったハンバーグが形の良い唇に消えていく。しばらくゆっくりと咀嚼し、喉仏が上下に動いた。
「焦げてて、苦いです」
「だよな」
「……あんまりおいしくないです」
橋元は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「俺も橋元も料理下手だよな」
「……そうですね」
「やっぱり一週間じゃ足りないと思うんだよ」
橋元の左手を握ると、橋元は手を二度見して真っ赤な顔になった。
「橋元は俺のこと色々知ってるだろうけど、俺が知ってるのは橋元の怖くてヤバいところばっかりなんだよ」
「と、戸倉先輩……っ」
「橋元のこと、今はまだ好きかどうか分からない。でもこれからもっと橋元の良いところを知れば、気持ちが変わるかもしれないだろ? だから一週間なんて言わないで、これからも一緒に飯食おう」
「……っ、はい……!」
何度も頷く橋元の目には涙が滲んでいた。
「ところで、お前本当に一週間で満足出来てたのか?」
「出来るわけないじゃないですか! 僕はいつか先輩と同じお墓に入りたいんですから」
「重……」
「それに、お付き合いが終わった後もずっと先輩のこと見てましたよ」
「え……全然気づかなかったんだけど。どこにいたんだよ」
「ふふふ」
「……うん、まずはそういうところから直していこうな」
「弁当作ってきたから屋上行こう。寒いけど」
「え、あの……でも」
「ほら行くぞ、橋元」
返事を待たずに歩き出すと、橋元は躊躇いながらも俺についてきた。
誰もいない屋上で橋元の目の前に弁当箱を差し出した。
「これ、橋元の分」
「あの、戸倉先輩、これは……」
「初めて弁当作ってみたんだ。感想聞かせろよ」
「えっ!? せ、先輩の、初めて……ですか……!?」
「誤解を招く言い方はやめろ」
こいつのヤバさは健在なようだ。
橋元は震える手で弁当箱を受け取り、そっと蓋を開けた。そして中身を凝視しながら固まった。
今日の弁当は焦げたハンバーグと味が濃すぎる野菜炒め、水の量を間違えてカチカチになったご飯。誰がどう見ても失敗作だ。
「俺さ、正直に言うと橋元の弁当あんまりおいしくないと思ってた」
「えっ!? そ、そうだったんですか……」
「でも自分で作ってみたらすげー難しかった。こんなに大変なことやってくれてたんだなって分かったよ」
「戸倉先輩……」
その声は感極まったように掠れていた。橋元は一度ぎゅっと目を閉じ、すぐに笑顔になって箸を手に取った。
「いただきます」
一口大に切ったハンバーグが形の良い唇に消えていく。しばらくゆっくりと咀嚼し、喉仏が上下に動いた。
「焦げてて、苦いです」
「だよな」
「……あんまりおいしくないです」
橋元は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「俺も橋元も料理下手だよな」
「……そうですね」
「やっぱり一週間じゃ足りないと思うんだよ」
橋元の左手を握ると、橋元は手を二度見して真っ赤な顔になった。
「橋元は俺のこと色々知ってるだろうけど、俺が知ってるのは橋元の怖くてヤバいところばっかりなんだよ」
「と、戸倉先輩……っ」
「橋元のこと、今はまだ好きかどうか分からない。でもこれからもっと橋元の良いところを知れば、気持ちが変わるかもしれないだろ? だから一週間なんて言わないで、これからも一緒に飯食おう」
「……っ、はい……!」
何度も頷く橋元の目には涙が滲んでいた。
「ところで、お前本当に一週間で満足出来てたのか?」
「出来るわけないじゃないですか! 僕はいつか先輩と同じお墓に入りたいんですから」
「重……」
「それに、お付き合いが終わった後もずっと先輩のこと見てましたよ」
「え……全然気づかなかったんだけど。どこにいたんだよ」
「ふふふ」
「……うん、まずはそういうところから直していこうな」



