お正月を迎え、斉賀家は恵方詣の対応に明け暮れながら、忙しなく働いていた。

私は永真と真太にお手伝いしてもらいながら、食卓に御節料理を並べる。

「お豆食べていい?」

「今日はつまみ食いは駄目よ。皆でいただくんだから」

「えー。食べたい食べたい!」

「今日は特別なの。月読様もご招待しているのよ」

「月読様? 名月神社の御祭神だ!」

「月読様が来るの? 僕も見ることできる?」

「できたらいいわよね」

「うわぁ、楽しみー!」

ぴょんこぴょんこ楽しそうに飛び跳ねる子どもたち。月読様が見えなくても、名月神社を管理する斉賀家として、御祭神のことは教え込まれているらしい。そんな子どもたちは、月読様が来てくれることを喜んでくれる。それが何よりも嬉しい。

月読様に料理を振る舞う計画は、何を作ろうかと散々考えたけれど、せっかくお正月で御節料理をたくさん作るので、それを月読様にも堪能していただこうと考えた。斉賀家からも、御節料理はすべて任されている。だから斉賀家の皆さんにも振る舞うことになる。

永真と真太がよくお手伝いと言いながらつまみ食いをしていて、美味しいと言ってくれていたから大丈夫だとは思うけれど、やはり少し緊張する。皆さんのお口に合うといいのだけど。

やがて仕事を終えた皆さんがぞろぞろと居間に集まってきた。そして並べられた御節料理を見て感嘆の声を上げる。

「すごい! これ喜与さんが全部作ったのかい?」

「はい、畑で採れたお野菜も使わせていただきました」

「僕たちもお手伝いしたー」

紅白なますにお煮しめ、黒豆、田作り、昆布巻、伊達巻。焼物には、名月神社に奉納された鯛を焼かせてもらった。それらがところ狭しと並べてある。斉賀家は毎年御節料理を食べているらしいけれど、こんなに品数豊富なのは初めてということだった。