伴藤家に軟禁されること約三ヶ月。

月読様にも会えず草花を愛でることもできず、今まで以上に使用人さながらの扱いを受けていた私が生きてこられたのは、月読様の子がお腹の中にいたからに他ならない。

辛くて苦しいと思っても、子が腹を叩くのだ。そしてどんどんと大きくなるお腹。ここに愛の証があるのだと思うと、頑張ることができた。それに手を当てれば月読様のぬくもりが思い出される。

元々月読様とは伴藤の嫁に戻ると約束をしたのだ。それを破って会いに行っていただけのこと。会えないことの覚悟くらいできていたはずだ。

五月蝿かった蝉もいつのまにかいなくなり、暑かった日差しも緩やかに秋の兆しを見せ始めてきた。季節を感じられたのも、子のおかげかもしれない。

「もうすぐ紅葉かしら。一緒に見たいわね」

大きくなったお腹に手を当てながら、子に話しかける。ぽこんぽこんと叩いてくれる反応がとても嬉しい。

伴藤家は後継ぎを望んでいるけれど、生まれてくる子は男でも女でもどちらでも構わないと思っている。

月読様に似たらいいのに。そうしたらきっととても綺麗な顔をしているだろう。

「あ、似たら困ってしまうわね」

もし月読様そっくりな子が生まれたら、伴藤家が一体誰の子だと騒ぎかねない。また面倒くさいことになる。それでもやっぱり――

「月読様に似ているといいなぁ」

そう思わずにはいられなかった。
ぱんぱんのお腹が痛み始めたのは、その日の夜のことだった。