満たされた気持ちのまま目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋だった。着物もはだけていない。きちんとした格好でいつも通り布団で寝ていた。

昨夜は随分遅くまで名月神社にいた気がする。けれど眠気などはまったくなく、夜もまだ明けきっていないようだ。

『夜を少しばかり長くしておいた』

月読様がそんなことを言っていた気がする。

体を起こすとギスギスしていた痛みが消えている。胸のあたりを見てみると、痣はあるものの薄くなっていた。月読様の力だろうか。

一生のお願いを聞いてほしいと言ったのは私。抱いてほしい、愛されている証がほしいと言ったのも私。それに躊躇いながらも応えてくれた月読様。

人を愛すること、愛されることを知らなかった私が、初めて知った愛の味は、花の蜜のように甘かった。幸せでたまらなくて、涙が止まらなかった。

下腹を手で(さす)る。旦那様に犯されたときとは違う、あたたかい感覚がある。もしや子が宿ったのでは……?

けれど、旦那様に何度犯されようと子ができなかった私に、そうやすやすと身ごもることができようか。月読様との子がほしいと言ったものの、それは希望的観測であり、現実はそんなに甘くないのだと、どこか頭の片隅で思っていた。