わかっているのに拒むことなどできず、そもそも私に意見することは許されない。

「旦那様、喜与でございます」

「入れ」

「失礼いたします」

襖を開ける。瞬間、腕を引っ張られてそのままどさりと布団に倒れこんだ。ぐっとお腹に重みがかかる。旦那様がのしかかったのだ。そして乱暴に肌着を剥ぎ取られた。

「お前は子を身ごもらなければ、可愛げもない。少しは喘いで啼いたらどうなんだ。なあ?」

力任せにいろんなところを捻られる。
思わず苦痛で顔が歪んだ。

「い、いたっ……くっ」

「子ができず近所からは一人前の男と認められない。お前は傷付いている俺を慰める義務がある。今日こそ孕ませてやるからな!」

ギラついた目で襲いかかってくる旦那様に抵抗できるわけもなく、乱暴に、時に殴られながら受け入れるしか無かった。力では敵わない。力だけではない、全てにおいて敵うわけがない。

わかっていた。私は妻として伴藤家に嫁いだのではない。伴藤家にとって必要な跡取りを産む道具として、ここに嫁がされたのだ。それを、今まで考えないようにしていただけだ。

痛みで顔が歪もうが、悲痛な声が出ようが、旦那様が行為の手を緩めることはない。ただ獰猛な野獣のように気が済むまで私を犯し続け、ようやく解放されたのは夜が随分更けてからのことだった。

どこか遠くで、フクロウがホーホーと鳴く声がする。丑三つ刻だろうか。

なぜ私がこんな仕打ちを受けなければいけないのだろう。幼少の頃から実家でも疎まれ、嫁ぎ先でも蔑まれ、私は何のためにこの世に生まれてきたのか。

この世に、神様はいないのですか……!

絶望というよりは怒りがわいてきて、私は隠し持っていた藁人形と五寸釘を引っ掴んで着の身着のまま屋敷を飛び出した。