澄んだ空に花が舞う。
粛々と婚儀が執り行なわれたこの良き日。
二十ニ歳になった私は晴れやかな気持ちに、これからの新婚生活が地獄の始まりになるとは、まったく想像もしていなかった――

「不味い」

冷たく一言、突き放すように言われた言葉がグサリと胸を刺す。

「ほんっとに、料理も掃除も手際が悪いったらありゃしない」

旦那様とお義母様が箸と茶碗を投げつける。反論することを許されない私は、畳に手をついて「申し訳ございません」と頭を下げた。

どんなに辛くて苦しくても、助けてくれる人は誰もいない。伴藤(ばんどう)家と結婚したのが運の尽き……。いや、結婚したことで大嫌いな実家から出られた。どちらが良かったのだろう。きっと、どちらでも変わりはしないのだろうな。

「せめて男子を産んでちょうだいね。それくらいならできるでしょう?」

お義母様は吐き捨てるように言うと、機嫌悪く部屋を出ていった。旦那様も私の味方をしてくれることはなく、「男子だからな」と釘を差してからお義母様の後を追った。

残された私は、ただ黙々と後片付けに励む。
毎日がしんどいけれど、もう慣れた。慣れたらいけないような気はしているけれど、そうやって自分に言い聞かせないと、ここでは過ごしていけない。

せめて男子を身籠ることができたなら、何か変わるだろうか。褒められるだろうか。大切にしてもらえるだろうか。

下腹をさする。
今回もまた、だめだった。