アカリはケイに昨夜の体験を語った。灰色の小道、耳元で聞こえた囁き、自分自身の声──それがどれほど異様だったかを、できるだけ正確に伝えた。

ケイはアカリの話を聞き終えると、深刻な表情で頷いた。

「僕の兄も……同じことを言っていました。」

ケイの声は低く、どこか遠くを見るような目をしていた。その目には、深い後悔と、どうしようもない喪失感が滲んでいるように見えた。

「5年前、兄と一緒に森で遊んでいたんです。その時、彼が『灰色の小道』に迷い込んで……戻ってきませんでした。」

アカリはその話を聞き、ケイがこの町に強い因縁を持っていることを理解した。同時に、彼がなぜこの町に留まっているのかも、少しだけ見えた気がした。

「私たちは、その小道を探すべきです。」アカリは思い切って言った。「そこに何があるのか、知りたいんです。」

「危険すぎますよ。」ケイは即座に反対した。「僕の兄がそうだったように、戻れなくなるかもしれないんです。」

「でも……放っておけません。」アカリは目を伏せながら言った。「私も、あの小道に囚われている気がするんです。」