このゲームにまつわるエピソードはそのソースコードに関するものだ。取り分け昔のゲームのソースコードにはなかなか面白いコメントが多いように感じるが、それはユーザーに発見されることを前提とした遊び心のあるメッセージから、ユーザーに発見されることを前提としていないつぶやきまで様々だ。

 例えば2001年に『Half-Life』の拡張版としてGearbox Softwareがリリースした『Half-Life: Blue Shift』のソースコードではwhydoihavetothis(訳:何で俺がこんなことをしなきゃいけないんだ)やuhavetobekidding(訳:バカなこと言うな)など当時のスタッフの悲痛な叫びを垣間見ることができる。時に過酷なスケジュールでの業務も多くなることの多いこの業界にはそういった状況を指す『デスマーチ』という言葉があるほどであり、こういった愚痴を書きたくなる状況はおおよそ想像できる。

 しかしこのゲームで話題になっているコメントは次のようなものである。



 行方不明者に関する情報を募るコメントである。Half-Life: Blue Shiftの例と比べると場違いというか、その背景を推察しにくい文章である。失踪した時期は発売日の約5年前となっており、開発時期に書き込んだコメントとしては時系列的にも齟齬がない。しかしながらこの文章を怪奇たらしめているのは文章の要領の得なさである。情報が非常に曖昧であり、主観的で人物特定にあまり役立つとは思えないものが多い。

 ちなみにこのゲームに相良牧子という人物はが登場しているわけではない。というよりもこのゲームにはネームドキャラクターがいない。舞台も現代日本を舞台としているわけではなく、特にゲーム内との関連を示唆するような噂も発見することができなかった。

 マイナーなものではあるがこんな噂もある。それは牧子ちゃんの失踪にこのゲーム、もしくは開発会社が関わっているという噂だ。つまり行方不明者の情報を募るという目的の他に、暗にこの会社が関連しているのではないかということを告発していると言うのだ。どのように関わっているかなど具体的なエピソードはそれ以上出てこなかった。

 かつて下請けのゲーム開発会社で働いていた時にあまりに長引くデスマーチに気が狂い突然業務中に尿を漏らしたことがあるほど気が触れた経験がある筆者としては、単に頭がおかしくなったエンジニアが現実逃避のために書いた虚言か幻覚である説を推したい。

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[メモ]
こういう系のエピソードデスマーチの記憶が蘇ってくるぐぎぎぎぎ