『ママの大晦日大作戦』は2002年にカイコーから発売された家事シミュレーションゲームである。プレイヤーは「ママ」になって大掃除やおせち作りなどをこなし、完璧な状態で元旦を迎えることを目指す。そんなホラーとは縁遠いように見えるこのゲームにもとある不穏なバグが含まれている。それは通称「12月32日」と呼ばれるものだ。

 このバグはその名の通り、ゲームの最終日である12月31日をクリアすると通常1月1日を迎えてエンディングに行くところ、特定の条件下では12月32日となってゲームが継続されてしまうというもの。さらにはバグにより部屋の内装が真っ赤なものになったり、プレイヤーが操作するママの顔が崩壊していたりと、ビジュアルの不気味さも手伝って一躍有名なバグとなった。



 加えて、このバグに関してとある噂が流れていたようだ。それはこのママが12月31日で自殺したのはでないかというもの。1月1日が誕生日であるママにとって新年を迎えることはおめでたいことでもあり、同時に加齢することでもある。それがママには耐えられず自殺したという。

 これを読んで読者らはどう思うだろうか。正直私は荒唐無稽だと感じた。しかしよくよく調べてみると確かに作中のママは美容オタクであり、5年ほど前まではモデルとして活躍していたという設定がある。元々家事などに縁遠かったママが不慣れな料理や掃除に挑戦するというコンセプトのようだ。また娘に加齢を揶揄され過剰なほど怒る描写もある。「美貌にプライドとコンプレックスを持っている」というのがママというキャラクターらしい。

 12月32日になるとママの顔のテクスチャがバグってしまうこともこの噂に拍車をかけていたようだ。自分の顔が許せず自分の顔をぐちゃぐちゃに切りつけたというエピソードが支配的なようだが、中には顔面を焼いて自殺したというパターンも見つけることができた。成程、こういった設定とバグのマッチングの妙がこの噂を作り出したのだと思うと少しばかり不思議な感動を覚えた。

 私は男性ということもあり自分の容姿にはあまり頓着の無い方だが、近年のコンプレックスビジネスの過熱っぷりを見るとママのような女性が実在しないとも言い切れないのが恐ろしいところだ。

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[メモ]
大晦日大作戦調査のためにプレイしたけどこの手のゲームにしては難しすぎてゲロ萎えた
12月32日に行くのに二週間もかかったw