『HoneyPie』の噂を確かめるため、私は大阪は道頓堀に来ていた。道頓堀は都会であるが故か殺人事件も何件か発生している。軽く調べただけでも1998年〜2002年までの期間で3件発生しているようだ。霊界探偵ゆかりと違い、HoneyPieに関しては個人を特定する手立てが非常に少ない。

 商店街を抜け戎橋に差し掛かると大きく開けた空間が川の上を一直線に貫いており、そこを一気に冷たい空気が通り抜ける。関西は関東に比べ多少暖かいと言うが、それでも12月の道頓堀の夜の風はなかなか骨身に沁みる。戎橋は真ん中が丸い円形になっており、その端っこに缶コーヒーなどが置かれている一角を見つけた。

 誰かがここで亡くなったのだろうか。それともHoneyPieの噂から派生してゲーマーたちがありもしない霊を弔っているのだろうか。道頓堀で殺人事件の発生例とこの缶コーヒーの小山を発見できたところでこの件を終わらせたいところではあったが、一応のライターの矜持として通行人を対象に多少の聞き込み調査を行うことにした。

 とある同様の証言を3件得ることができた。通行人への聞き込みはすぐにその大半が何も知らない観光客であることが分かったので、近くの喫茶店の店主などに尋ねる方針に切り替えたのだが、これが正解だったようだ。この辺りで働く人の中で広まったとある噂があるらしい。それは道頓堀に飛び込んで亡くなったとある女性の噂だ。特筆すべきはその女性がダンサーであったこと、そして『密井』という名前であったらしいということだ。密井という苗字は近畿地方を中心に100人ほどだけ存在するとても珍しい苗字だ。

 HoneyPie。蜜井。あまりにギャグではなかろうか。頭の中で組み立てた筋書きの珍妙さに思わずにやけ、そんな私を見て初老の店主は不思議そうにコーヒーカップをテーブルに置いた。

 もう一つダンサーという点もHoneyPieと共通する点である。最もHoneyPieが行っているモーションは『ダンス2』という名称ではあるもののダンスと呼ぶには滑稽な、腕を上に広げゆらゆらと揺れているだけのものだ。私はダンスには明るくないが、ダンサーが仮に亡くなったとしてゆらゆらと腰を揺らすだけの霊になるだろうか?最早HoneyPieを元ネタとしてこの噂が創作されたと考える方が妥当ではないか。

 しかし残念ながら密井氏の情報をそれ以上得ることは叶わなかった。ゲーム業界の七不思議を真実たらしめる決定的な証拠にはなり得ないものであったが、面白い噂と美味しいアメリカンに出会えたことで一先ずの成果はあったということにしたい。

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[メモ]
大阪さむ
金ないのに新幹線乗るんじゃなかった…。

全部本当にあった事件っての本当か?
この時点でまぁまぁ苦しいんだけどw

本当にあったって言ってもあったって言われてるだけだし
サクッと調べてみたけど調べても出てこなかったしな…
いや出てきたら俺が本にする意味ないんだけど
ぶっちゃけ全部本当な保証ないんだよな

来月で失業手当が切れる。
住民税と国民保険を抜いたら残ってるのは50万ほど
何ヶ月生活できるか…
→つらいことを考えて執筆の手が止まるのはやめたい