俺は部活が大好きだ。
小さい頃から体を動かす事が好きで野球も小学生の時からやっている。筋トレやランニングも苦ではなく生活の一部のような感じになっている。
でもそんなことで部活が大好きなんじゃない。
康太のいる部活が大好きなんだ。
クラスが一緒な事も奇跡だったのに俺が誘ったにせよ同じ野球部に入ってくれた。こんな幸せな事はない。
そんな事を考えながら筋トレをしていると先輩達が絡んできた。適当に頷き愛想笑いをする。
先輩の先に康太がいてバッチリ目が合ってしまった。
俺は「ちゃんと筋トレやれよ」なんて思ってもない事を叫んだ。

先輩が怪我をしてしまい俺がマスクを付ける回数が多くなった。外野の康太とは練習内容も違うから同じ部活にいても少し遠くに感じてしまう。
でもこればかりは仕方がない。集中していれば康太の事を考えなくてすむ。部活が終われば話せるし。

9月の終わりにもなると部活が終わる頃にはだいぶ暗くなる。腹も減ったし今日は何を買おうか。部活終わりのこの時間も俺は大好きだ。他愛もない事をダラダラと喋る。この時間の公園には誰もいないから俺たち2人きり。唐揚げを食べ終わりブランコを漕ごうとした時、康太が言った。
「前に俺のファンだって言ってたのどういう事?」
あー、勢い余って前に言った記憶がある。
どうやって返せば気持ち悪く思われないかと考えていたら一瞬間があいてしまった。何が正解かなんて分からなかったから思ってた事をそのまま伝えた。
「綺麗だったから目が離せなかった」と。
康太の反応が怖かったけど「カッコいいの間違いだろ」と笑ってくれた。
少し赤くなっていた気がしたけど暗いから気のせいだろう。俺も1つお願い事をしてみることにした。
「康太、俺の事名前で呼んでよ。遼平って。」