高校は何となく決めた。
3歳離れた兄が通っていたから。
進学校でそこそこ強い野球部があるから。
勉強は出来る方だったので特に頑張った記憶はない。野球はやってもいいし、やらなくても良かった。

入学式。快晴。
真っ青な空と散ってしまいそうなピンクの桜が俺たち新入生を迎えてくれている。
教室の席に着き窓の外をぼーっと眺めていると教室の前の方から視線を感じた。
その方向を見てみると長身の男がこちらを見ている。目を合わせないようにしていたのにズンズンと俺の方へやって来て話し掛けてきた。
「お前、片岡中で野球やってた?外野。」
「俺、藍田遼平。野球部入るからお前も一緒に入ろうぜ。な!」
答えを言う隙が無いほどのマシンガンで畳み掛けてくるこいつ、、何なんだ、、と思いながら俺は作り笑いを浮かべるしかなかった。

次の日も、その次の日も野球部への勧誘は続いた。俺は帰宅部でもいいなぁと思っていたのに、この藍田遼平は毎日毎日俺を野球部へ誘う。
「何でそこまで俺に入って欲しいんだ?」
「俺、中学の頃からお前のファンだから一緒に野球やりたい。」
「ファン?何だそれ。」
藍田遼平はそれ以上は言わなかった。
長身でイケメンの部類に入るだろうこいつにファンと言われて俺も悪い気はしない。
その一言で俺は野球部に入る事を決めたのだった。