ずっと好きだったのは俺の方

 藍田と仲良くなるのに時間はかからなかった。好きな事や嫌いな事、趣味、休日の過ごし方や家族構成まで。藍田にはいろいろと聞かれた。俺のどこにそんな興味があるのか疑問だったけど、ファンなら知りたいものなのかもしれない。

 放課後、入部届けの提出期間が終わるので入部届を出しに職員室へ向かう。すごく入りたい訳ではない野球部にこのまま入ってしまっていいのだろうか、、やっぱり帰宅部の方が、、なんていう思いが一瞬駆け巡ったが、藍田の事を思い出してしまい結局野球部への入部届を提出した。

 教室に戻ると仲の良いグループが待っていてくれた。俺の姿を見るなり藍田は駆け寄ってきて、俺が言葉を発するのを待っているようだった。
 「野球部へ入部届出してきた」
 「うぇーい!!マジか。俺泣きそうだわ」
 「康太、すごい悩んでたから」
 「俺も体動かさないとな。一緒に頑張ろうな藍田」
 嬉しそうな顔をしている藍田を見て俺も良い気分になった。ただ、急な名前呼びはやめてほしい。何だかくすぐったい感じがした。「一緒に野球がやりたい」なんて言ったけど、康太と仲良くなれたのが嬉しくて同じ部活だったらもっと長い時間一緒にいられると思った。これがどういう気持ちかなんてウスウス気付いていたけど、まさか自分が、、と驚いてはいる。高校へ入るまでのあの気持ちや最初に会った時のあの感情。今思えば納得のいくものだった。だけどこの気持ちは気付かれてはいけないもの。俺は康太とどうにかなりたいなんて思わない。一緒にいられればいい。友達くらいでいいんだ。
 そうやって俺は自分の気持ちに蓋をした。



 入部届けの提出期間が始まった。
 俺は早々に野球部へ入部届けを提出した。
 康太は野球部に入るか悩んでいる様だ。
 あんなにセンスがあるのに何を悩む事があるんだろう。もしかして俺と同じ部活に入りたくないんじゃ、、なんて考えて1人で勝手に落ち込んでいた。

 明日が入部届けの提出締切日。
 ホームルームが終わり友達と喋っていると康太が「職員室行くからちょっと待ってて」と言い教室を出て行った。部活の事かな、、いや違う事かも、、と考えているとソワソワしてしまう。周りの友達がそんな俺を見て「気持ち悪い動きすんな」と言った。
 康太が職員室から戻ってきた。
 俺はいてもたっても居られなくなって側へ駆け寄る。
 「野球部へ入部届け出してきた。」
 頭の中で誰かが万歳三唱している。
 嬉しすぎて「泣きそう」なんて言ったのは嘘じゃなくて本当の事だったから。