「野球部を辞めようと思う。」
康太の言葉を遮るように俺は「辞めるな。」と叫んでいた。怪我がそこまで深刻なものだとは思っていなかった。この3日間康太なりにいろいろ考えて出した答えなのだろう。1番悔しい思いをしているのは康太自身だ。俺が康太と一緒に居たいが為に「辞めるな。」なんていうのはワガママだと自分でも分かっている。でも引き止めずにはいられなかった。

最初に「マネージャーをやって欲しい。」と言ったのは俺だ。女子のマネージャーは何人かいるが、選手だった康太がやってくれたら俺たちも助かるし女子では分からない事もあるかもしれない、、なんていうのは建前で本当は変わらずずっと俺の事を見ていて欲しかったから。
でも野球が出来なくなって悔しい思いをしている康太が引き受けてくれるだろうか。
俺はチームメイトや先生に康太がマネージャーをやってくれたらどんなに助かるかを熱弁し、みんなからも康太にマネージャーを引き受けてもらえるようお願いしてもらったりもした。

肩の状態もだいぶ良くなった康太がマネージャーとし
て復帰したのは夏休みが明けたころだった。

久しぶりにあの公園へ2人で行く事にした。
康太に無理をさせていないか聞きたかったから。
「康太、俺お前に無理させてないか?」
「無理って?なんの事?」
「野球部辞めたいって言ったのに俺が引き止めてマネージャーまでさせちゃってる事。」
「あぁ、マネージャーは俺が好きでやってる事だから。逆に遼平には感謝してる。こんな俺にやりがいを見つけてくれて。ありがとな。」
「そっか。良かった。」
「俺が野球部入る決めてになったのは遼平が俺のファンだって言ってくれたからだし。俺は別に野球部に入らなくても本当はよかったんだ。お前の喜ぶ顔が見たくて野球部に入ったようなものだし。」
康太がそんな事を言ったものだから俺も
「それって俺の事が好きで野球部入ったみたいじゃん。」と冗談ぼく言った。
康太は「そうだよ。」と笑い返した。
康太は冗談でそう言ったのかもしれないけど、そんな康太がとても愛おしくて俺は康太の事を力いっぱい抱きしめた。