ずっと、見ていたんだ。
ずっとずっと君の事だけを。

まだ誰もいないグラウンド。
11月の早朝、吐いた息が白く漂っている。
先輩たちが居なくなり、自分たちの時代が来るんだと息巻いていた俺たちだが秋季大会は不甲斐ない結果に終わってしまった。
俺はと言うと、2年の始めに肩を壊し退部しようとしていたところ先生やチームメイトから是非ともマネージャーを引き受けてくれないかと打診され今に至る。
当然女子のマネージャーもいるのだが、、、


朝練がある日は1番に行くと決めている。
マネージャーにはやる事が沢山あるからだ。
それに他にも理由がある。
部室の鍵を開け、バッドやボールを準備し部員が来たらすぐに練習できるようにしておく。軽いキャッチボールの相手をしたりする日もある。
「康太ー!!おはよう!!」
俺の次に来る奴はいつも同じ。
同級生の藍田遼平だ。
こいつは1年生からレギュラーで先輩にも好かれ、後輩にも慕われ陽の中の陽といっても過言ではない男。
「遼平いつも早いな。」
「お前のほうが早いじゃん。いつもありがとな。」
「うん。」
そんなちょっとした会話だけでも幸せなんだ。これはお前の為に準備しているようなものだし。
でも、そんな事を思っているなんて絶対に気付かれたくないから赤くなった顔をプイッと下へと向けた。
「じゃ、準備してくる。」
「おう。」
そう言うと遼平は小走りに走って行った。
遠くなっていく背中を見つめながらニヤニヤしている自分に気付き俺は両頬を手で隠した。