ずっと好きだったのは俺の方

 ずっと、見ていたんだ。
 ずっとずっと君の事だけを。

 まだ誰もいない野球グラウンド。
 11月の早朝、吐いた息が白く漂っている。
 先輩たちが居なくなり、自分たちの時代が来るんだと息巻いていた俺たちだが秋季大会は不甲斐ない結果に終わってしまった。
 俺はと言うと、2年の始めに肩を壊し退部をしようとしていたところ先生やチームメイトから是非ともマネージャーを引き受けてくれないかと打診され今に至る。
 当然女子のマネージャーもいるのだが、、、


 朝練がある日は1番に行くと決めている。
 マネージャーにはやる事が沢山あるからだ。
 それに他にも理由がある。
 部室の鍵を開け、バッドやボールを準備し部員が来たらすぐに練習できるようにしておく。軽いキャッチボールの相手をしたりする日もある。
 「康太ー!!おはよう!!」
 俺の次に来る奴はいつも同じ。
 同級生の藍田遼平だ。
 こいつは1年生からレギュラーで先輩にも好かれ、後輩にも慕われ陽の中の陽といっても過言ではない男。
 「遼平いつも早いな。」
 「お前のほうが早いじゃん。いつもありがとな。」
 「うん。」
 そんなちょっとした会話だけでも幸せなんだ。これはお前の為に準備しているようなものだし。
 でも、そんな事を思っているなんて絶対に気付かれたくないから赤くなった顔を見られないよう下へと向けた。
 「じゃ、準備してくる。」
 「おう。」
 そう言うと遼平は小走りに走って行った。
 遠くなっていく背中を見つめながらニヤニヤしている自分に気付き俺は両頬を手で隠した。
 


 今日もまた1番に来ていた。
 家から学校までの距離は俺よりも遠いはずなのに毎日偉すぎ。俺はこの時間に来るだけで精一杯なのに。
 でも、こうやって康太と朝一で話せるのがめっちゃ嬉しいんだよな。

 こんな事を思っているなんて絶対に悟られまいと普通のフリをして俺は毎日話しかけている。

 康太の存在は中学の頃から知っていた。
 市内の別々の中学校に通っていた俺たちは公式戦の度に顔を合わせていた。
 「片岡中にめちゃくちゃ肩が良い外野がいるらしいから見にいこうぜ!」
 チームメイトが興奮気味に話している。
 試合の合間だった事もあり何気なく見に行ってみた。その肩が良い外野が康太だった。派手さは無いがひとつひとつの動作がとても綺麗で見惚れてしまったのを覚えている。その時から俺は康太のファンになった。

 部活を引退してからは勉強ばかりの毎日だった。行きたい高校は俺の頭ではかなり厳しかったから。進学校で野球部がそこそこ強くて、、、
 でも1番の理由は「片岡中の肩が強いあの外野が受験するらしい」と噂で聞いたから。
 本当にアイツが受験するかも分からないのに。一緒に野球がしたい。今思えばそれだけじゃなかったのかもしれない。もう1度会いたかったんだ。