夏がきた。毎年暑さが更新されているような気がする。
汗ばんだ体に涼しい教室が天国かのように思えてくる。
僕は夏の暑さが嫌い。でも夏は好き。
忘れられない思い出があるから


「はなれてもずっと友だちでいてくれる?」
泣きながらそんなことを言った僕の初恋の人。
夏にこの町を離れることになった。
僕は泣かなかった。僕は強かったから。
でも内心は寂しかった。たくさん遊んだから。
「もちろんだよ」
そう言って、小指と小指を結び幼稚園生ながらに大きな
約束をした。
今思い返せば、それが初恋。
当時は小さすぎて、そんな感情なんてわからなかったけど
段々と成長していくにつれ、思い出すと自然に胸が高鳴る。
でも、もう会えることはきっとない。
きっと、彼女は僕のことを覚えていない。
それでも僕の大切な、大切な記憶が頭の片隅に残っている。
だから僕は夏が好き。