■美咲さんとの会話

「そこの椅子に座ってもらえます?」
「はい」
「ミルクたっぷりのコーヒーでも淹れます?」
「いえ、お気遣いなく。それではインタビューをはじめさせて頂きます。これからの会話は全てこのレコーダーに記録されますのでご理解ください。それとこちら、謝礼となります。ほんの気持ちで恐縮ですがお納めください」
「お金なんていりません。とにかく、今すぐアイツを見つけて欲しいんです」
「あっ、でもこういうのはきちんとしておかないと、あとでトラブルに発展しますので……」
「いいんです、いりませんから。私はお金が欲しくてあなたにDMを送ったんじゃないの。アイツを見つけだしてほしかったんです!でも誰も返事をくれないし、受けてくれないから……だから……」
「あ、誰も……もしかしてDMを送ったのは私だけではない?」
「……すいません。でも、あなたのことは信用してますよ。イジメ問題の取材を専門に扱ってるってDMに書いてあったから」
「ええ、今まで何本も記事を書かせて頂いています。なので、美咲さんを責めてるわけじゃありません。正直、DMを頂けたことが不思議だったんです。大手のライターなら分りますが、私は知名度があるわけでもないし、フォロワーも少ないので」
「とにかく、お願いです。最後まで私の話を聞いて下さい」
「もちろん聞きますよ。これもなにかのご縁ですから。えっと、美咲さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、美咲さん。あそこのご遺影がご主人で間違いないですか?」
「はい。あれが敦也(あつや)です。あの遺影の写真は亡くなる一年前、中学の同級生たちと河原でバーベキューしたときに撮ったもので……。あのときはまだ、あっくん全然おかしくなくて。なのに突然……」
「以前のDMで新聞記事を送ってくださいましたよね?失礼ですが、山で見つかったあのご遺体は……」
「そうです、あっくんです。これ、当時の新聞記事です。全部とってあるので見てください」
「拝見させて頂きます。ちなみにこちらの新聞記事、スマホで写真に収めても構いませんか?」
「ええ、どうぞ」
「失礼します」