本当にあった怖い話
これは僕が大学1年生のときの話です。
その日、僕は同じサークルの男四人と居酒屋で酒を飲んでいました。
同じサークルの女子の話などで大盛り上がり。
下戸な体質の僕は送迎係で、アルコールは一滴も飲みませんでした。
時刻は夜中の二時を回っていました。
そろそろ店を出ようという話になったとき、その中の一人が肝試しをしようと言い始めました。
全員ノリノリで、僕の車に乗り込むと付近にあるそれらしい場所を探し始めたのです。
正直、明日も授業があるしそろそろ帰りたいと思いました。
でも、口に出したら場が白けると思いぐっと我慢しました。
結局、車で十分ほどの場所にある東京の〇〇神社へ行くことになりました。
ネットでは、以前から恨みをかけられる神社だと噂されていました。
丑の刻参りをする人が後を絶たないというのです。
「マジでいたらどうすんの?」
「いやいや、ねーだろ」
僕たちはわちゃわちゃとおしゃべりをしながら鳥居を抜けて境内の方へと歩みを進めて行きました。
みんな千鳥足で酔っぱらっていました。
しばらく進むと、鬱蒼とした木々が生い茂るエリアへ着ました。
「おい、見ろ。誰かいるぞ」
そのとき、友人の一人が呟きました。
確かに暗闇の中一か所、オレンジ色の光が見えます。
静寂の中、カーンッカーンッと何かを叩くような音がします。
全身の血の気が引いていくのを感じました。
「ちょっとヤバいよ。これ以上近付くのはやめよう」
素面なのは僕だけです。
でも、酔っぱらっている友人たちは、面白がって近付いていきます。
僕の中の第六感が警告を発していました。ダメだ、近付いてはいけないと。
さらに近付くと、ついにその光と音の正体が判明しました。
友人の一人がスマホのライトで照らし出した先には人間がいました。
首からライトを下げた、丸々と太った人間でした。
背中まである長い黒髪は手入れされておらずボサボサで、
後ろから見ると男にも女にもどちらにも見えました。
その人間は木の前に立ち、藁人形に刺さった太い釘に一心不乱にトンカチを振り下ろしていました。
カーンッカーンッという音に混じって、その人はなにかを唱えています。
耳を澄ませると「死ね死ね死ね死ね死ね」と低い声で繰り返しているのが分かりました。
とてもまともな人間だとは思えませんでした。
「あれ、丑の刻参りじゃね?」と誰かが口にしました。
その声は明らかに震えていました。
丑の刻参りとは、夜中の一時から三時頃に神社の御神木に藁人形を打ち付けて呪いの言葉を唱える呪いの儀式です。
相手は釘を打ち付けるのに必死で、僕たちに気が付いていません。
「もう行こう」と囁くように言うと、全員静かに頷きました。
きっと酔いが覚めたのでしょう。
あんなにノリノリだったのがまるで嘘のようでした。
それぐらい、異様な光景だったのです。
そのままじりじりと距離を取っていたときでした。
友人の一人のスマホに電話がかかってきたのです。
陽気な着信音が響きました。ハッとしたとき、数メートル先にいた人間が振り返りました。
その顔は恐ろしい形相をしていました。憎しみと怒りに支配された顔といえば伝わるでしょうか。
うまく言葉では表現できません。
その人は、トンカチを振り上げてこちらへ足を踏み出しました。
「ぎゃーーーー!!!」
僕たちは叫びながら四方八方に散り散りに逃げました。
上ってきた階段を転がるように駆け下りて、息を切らしながら車まで走りました。
救いだったのは、全員が陸上サークルに所属していたことです。
全員が無事車に乗り込みました。
相手を振り切ったことにみんなはホッとした様子でしたが、
僕の心臓はまだバクバクと音を立てていました。
焦燥感が全身に広がり、震える手でなんとかエンジンをかけました。
見てはいけないものを見てしまったと、遊び半分で神社へやってきたことを後悔していました。
「なんなんだよ、あれ」
「やべー奴に遭遇しちゃったじゃん!」
「動画撮っとけばよかったな」
安堵感が漂う空気の中、僕は車の扉のロックを閉め忘れたことに気が付きました。
慌てて運転席のドアロックを掛けた瞬間、運転席側の窓ガラスをドンドンッと手のひらで叩かれました。
ヒュッと喉の奥から変な音がしました。
「ノロイコロシテヤル」
相手は先程の人間でした。片言ながら確かにそう言い、窓を叩きながらドアを外側からガシャガシ
ャと引っ張ってきました。
「正気じゃねぇよ!なんなんだよ、アイツ!!」
「ヤバいヤバいヤバい!」
「早く車出せ!」
車内は阿鼻叫喚でした。僕はハンドルをきつく握りしめ、アクセルを踏み込みました。
難を逃れバックミラー越しに相手を見ました。
その人間は執念深く、僕の乗る車を追いかけてきました。
後で知った話ですが、丑の刻参りを誰かに見られると失敗となり、自分自身が呪われてしまうようです。
だから、あの人はあんなにも必死に僕たちを追いかけてきたんでしょうか。
結局、今もあの人が男か女かは分かりません。
あの日を境に、僕たちは次々に不幸に見舞われました。
これを書いている今も、あの人の『呪い殺してやる』という言葉が耳にへばりついて離れてくれません。
僕たちは呪われてしまったんでしょうか?
この苦い経験から、安易な気持ちで肝試しや心霊スポットへ行くのは、絶対におススメしません。
これは僕が大学1年生のときの話です。
その日、僕は同じサークルの男四人と居酒屋で酒を飲んでいました。
同じサークルの女子の話などで大盛り上がり。
下戸な体質の僕は送迎係で、アルコールは一滴も飲みませんでした。
時刻は夜中の二時を回っていました。
そろそろ店を出ようという話になったとき、その中の一人が肝試しをしようと言い始めました。
全員ノリノリで、僕の車に乗り込むと付近にあるそれらしい場所を探し始めたのです。
正直、明日も授業があるしそろそろ帰りたいと思いました。
でも、口に出したら場が白けると思いぐっと我慢しました。
結局、車で十分ほどの場所にある東京の〇〇神社へ行くことになりました。
ネットでは、以前から恨みをかけられる神社だと噂されていました。
丑の刻参りをする人が後を絶たないというのです。
「マジでいたらどうすんの?」
「いやいや、ねーだろ」
僕たちはわちゃわちゃとおしゃべりをしながら鳥居を抜けて境内の方へと歩みを進めて行きました。
みんな千鳥足で酔っぱらっていました。
しばらく進むと、鬱蒼とした木々が生い茂るエリアへ着ました。
「おい、見ろ。誰かいるぞ」
そのとき、友人の一人が呟きました。
確かに暗闇の中一か所、オレンジ色の光が見えます。
静寂の中、カーンッカーンッと何かを叩くような音がします。
全身の血の気が引いていくのを感じました。
「ちょっとヤバいよ。これ以上近付くのはやめよう」
素面なのは僕だけです。
でも、酔っぱらっている友人たちは、面白がって近付いていきます。
僕の中の第六感が警告を発していました。ダメだ、近付いてはいけないと。
さらに近付くと、ついにその光と音の正体が判明しました。
友人の一人がスマホのライトで照らし出した先には人間がいました。
首からライトを下げた、丸々と太った人間でした。
背中まである長い黒髪は手入れされておらずボサボサで、
後ろから見ると男にも女にもどちらにも見えました。
その人間は木の前に立ち、藁人形に刺さった太い釘に一心不乱にトンカチを振り下ろしていました。
カーンッカーンッという音に混じって、その人はなにかを唱えています。
耳を澄ませると「死ね死ね死ね死ね死ね」と低い声で繰り返しているのが分かりました。
とてもまともな人間だとは思えませんでした。
「あれ、丑の刻参りじゃね?」と誰かが口にしました。
その声は明らかに震えていました。
丑の刻参りとは、夜中の一時から三時頃に神社の御神木に藁人形を打ち付けて呪いの言葉を唱える呪いの儀式です。
相手は釘を打ち付けるのに必死で、僕たちに気が付いていません。
「もう行こう」と囁くように言うと、全員静かに頷きました。
きっと酔いが覚めたのでしょう。
あんなにノリノリだったのがまるで嘘のようでした。
それぐらい、異様な光景だったのです。
そのままじりじりと距離を取っていたときでした。
友人の一人のスマホに電話がかかってきたのです。
陽気な着信音が響きました。ハッとしたとき、数メートル先にいた人間が振り返りました。
その顔は恐ろしい形相をしていました。憎しみと怒りに支配された顔といえば伝わるでしょうか。
うまく言葉では表現できません。
その人は、トンカチを振り上げてこちらへ足を踏み出しました。
「ぎゃーーーー!!!」
僕たちは叫びながら四方八方に散り散りに逃げました。
上ってきた階段を転がるように駆け下りて、息を切らしながら車まで走りました。
救いだったのは、全員が陸上サークルに所属していたことです。
全員が無事車に乗り込みました。
相手を振り切ったことにみんなはホッとした様子でしたが、
僕の心臓はまだバクバクと音を立てていました。
焦燥感が全身に広がり、震える手でなんとかエンジンをかけました。
見てはいけないものを見てしまったと、遊び半分で神社へやってきたことを後悔していました。
「なんなんだよ、あれ」
「やべー奴に遭遇しちゃったじゃん!」
「動画撮っとけばよかったな」
安堵感が漂う空気の中、僕は車の扉のロックを閉め忘れたことに気が付きました。
慌てて運転席のドアロックを掛けた瞬間、運転席側の窓ガラスをドンドンッと手のひらで叩かれました。
ヒュッと喉の奥から変な音がしました。
「ノロイコロシテヤル」
相手は先程の人間でした。片言ながら確かにそう言い、窓を叩きながらドアを外側からガシャガシ
ャと引っ張ってきました。
「正気じゃねぇよ!なんなんだよ、アイツ!!」
「ヤバいヤバいヤバい!」
「早く車出せ!」
車内は阿鼻叫喚でした。僕はハンドルをきつく握りしめ、アクセルを踏み込みました。
難を逃れバックミラー越しに相手を見ました。
その人間は執念深く、僕の乗る車を追いかけてきました。
後で知った話ですが、丑の刻参りを誰かに見られると失敗となり、自分自身が呪われてしまうようです。
だから、あの人はあんなにも必死に僕たちを追いかけてきたんでしょうか。
結局、今もあの人が男か女かは分かりません。
あの日を境に、僕たちは次々に不幸に見舞われました。
これを書いている今も、あの人の『呪い殺してやる』という言葉が耳にへばりついて離れてくれません。
僕たちは呪われてしまったんでしょうか?
この苦い経験から、安易な気持ちで肝試しや心霊スポットへ行くのは、絶対におススメしません。

