◇とあるブログ~自死で逝った愛する我が子へ思いを馳せる~2022年2月8日~
このブログを開いたのはおよそ七年ぶりとなります。
きっともうどなたの記憶にも残っていない事でしょう。
この七年間ずっと、私はただひたすらに息子をイジメた人間への憎悪を募らせました。
この手で殺めようと考えたこともありましたが、それでは息子に顔向けできません。
そんなとき、このブログにコメントをくださった方がいました。
■■令子さんです。
このブログには誹謗中傷が殺到しましたが、
彼女だけは私を温かい言葉で励まし、心の支えとなってくださりました。
私は彼女と意気投合し、個人的に連絡を取り合うようになりました。
直接お会いしたことはありませんが、メッセージのやり取りは細々と続けていました。
彼女には娘さんがいらっしゃいましたが、イジメを苦に自殺しました。
一命は取り留めましたが、2022年の1月に懸命な看病の甲斐もなく天国へ旅立たれたそうです。
娘さんは2015年の卒業式当日の朝、神社で首を吊りました。見つけたのは令子さんだったそうです。
足元には彼女のメモ書きが残されていたそうです。
娘さんは、亡くなる直前までいわゆる植物人間でした。
食事をとることもできず、鼻から胃まで管を通して、そこに液状の食事を直接胃に注入していました。
二時間置きの体位交換もかかせません。
同じ場所に圧がかかると、褥瘡ができたり拘縮が酷くなってしまうんだそうです。
筋肉や骨は固く縮み、体はどんどん動かなくなります。
意識があるのかないのか分からない娘さんを献身的に介護した令子さんには頭が上がりません。
こうやって令子さんもまた、私と同じようにイジメをキッカケに最愛の娘を亡くしたのです。
この数年で私の精神状態は少しづつ落ち着いてきました。
霊媒師の先生に交霊術を頼むことも、夜な夜な丑の刻参りをすることも、
掲示板の書き込みに張り付くことも少なくなりました。
今まで令子さんが支えてくれた分、今度は私が彼女を支えようと考えていました。
でも、彼女は娘さんを殺した人間を呪い殺すと言い始めたのです。
彼女の家系は代々地元の小さな神社を守ってきました。
そもそも、その神社は邪気や穢れを封じ込めるところだというのです。
現に、令子さんは今までたくさんの曰くつきな物や悪霊を神社へ閉じ込め、
あの地域で暮らす人々の安泰を守ってきたのです。
令子さんは幼い頃から不思議な力を有していたといいます。そして、また娘さんも同じでした。
彼女は母のその思いに共鳴し、巷に溢れる邪気を神社へ取り込み人々を守ってきたのです。
けれど、娘さんはイジメに遭い徐々に心を蝕まれていった。
詳しくは知りませんが、酷い裏切りにもあったそうです。それでも彼女は必死に生きた。
母親の令子さんは大勢の人に助けを求めたようです。
先生や校長、娘さんと同じ学校のお友達。でも、誰も娘さんに救いの手を差し伸べてはくれなかった。
令子さんは娘さんのことを思い、栃木から離れた場所への進学を促しました。
神社は自分ひとりで守るから、あなたには新しい土地では友達をたくさんつくって楽しく幸せに暮らして欲しいと。
親心ですね、分かります。
けれど、悪意ある人間の手で必死に守っていた神社の結界が解かれた。
人間のありとあらゆる悪を詰め込んだ所業に、娘さんは絶望し、命を絶ちました。
最期は見るも無残にやせ細って、骨と皮になり苦痛の表情を浮かべてこの世を去ったそうです。
娘さんが亡くなり、令子さんはどうしても許せなくなったのです。
娘さんを死に追いやった人間を……。
イジメた人間を、イジメを許す人間を、イジメを見て見ぬふりする人間を。
令子さんは未婚の母で、娘さんはひとりだけでした。
もしも令子さんが亡くなれば、神社を守る者がいなくなる。
結界を解き、代々閉じ込めていた大量の邪気や穢れが出てきてしまえば、
確実に我々人間に悪影響を与えるというのです。
にわかには信じられない話でしたが、どうやら令子さんは本気のようでした。
娘さんをイジメた加害者……
いわば、呪い殺したい人間に彼女は呪いの手紙を送ったと教えてくれました。
全ての力をその手紙に込めたせいで、
令子さんの命はあと数日だろうとわざわざ丁寧に謝罪とお別れのメッセージまで送ってくれました。
『もしも回り回ってあなたを巻き込んでしまったら、本当にごめんなさい。結界を解くことで私が想像していないことが起こるかもしれません。呪いは伝染し、瞬く間に広がりさらに形を変えていくことでしょう。そうなったらもう止めるすべはありません』
半信半疑ながら、私は彼女に頼み込みました。
私の息子をイジメた加害者たちも一緒に呪い殺して欲しいと。
彼女からの最後の返信にはこう書かれていました。
『人を呪わば穴二つ。できれば、あなたには私のようにならず、真っ当に生きて欲しい』と。
そういえば、令子さんと同様に娘さんも言葉に強い呪いを込められると言っていました。
娘さんは誰かに呪いをかけたんでしょうか……?
令子さんとは残念ながらもう連絡はつきません。
解き明かすことはきっと一生できないでしょう。
このブログを開いたのはおよそ七年ぶりとなります。
きっともうどなたの記憶にも残っていない事でしょう。
この七年間ずっと、私はただひたすらに息子をイジメた人間への憎悪を募らせました。
この手で殺めようと考えたこともありましたが、それでは息子に顔向けできません。
そんなとき、このブログにコメントをくださった方がいました。
■■令子さんです。
このブログには誹謗中傷が殺到しましたが、
彼女だけは私を温かい言葉で励まし、心の支えとなってくださりました。
私は彼女と意気投合し、個人的に連絡を取り合うようになりました。
直接お会いしたことはありませんが、メッセージのやり取りは細々と続けていました。
彼女には娘さんがいらっしゃいましたが、イジメを苦に自殺しました。
一命は取り留めましたが、2022年の1月に懸命な看病の甲斐もなく天国へ旅立たれたそうです。
娘さんは2015年の卒業式当日の朝、神社で首を吊りました。見つけたのは令子さんだったそうです。
足元には彼女のメモ書きが残されていたそうです。
娘さんは、亡くなる直前までいわゆる植物人間でした。
食事をとることもできず、鼻から胃まで管を通して、そこに液状の食事を直接胃に注入していました。
二時間置きの体位交換もかかせません。
同じ場所に圧がかかると、褥瘡ができたり拘縮が酷くなってしまうんだそうです。
筋肉や骨は固く縮み、体はどんどん動かなくなります。
意識があるのかないのか分からない娘さんを献身的に介護した令子さんには頭が上がりません。
こうやって令子さんもまた、私と同じようにイジメをキッカケに最愛の娘を亡くしたのです。
この数年で私の精神状態は少しづつ落ち着いてきました。
霊媒師の先生に交霊術を頼むことも、夜な夜な丑の刻参りをすることも、
掲示板の書き込みに張り付くことも少なくなりました。
今まで令子さんが支えてくれた分、今度は私が彼女を支えようと考えていました。
でも、彼女は娘さんを殺した人間を呪い殺すと言い始めたのです。
彼女の家系は代々地元の小さな神社を守ってきました。
そもそも、その神社は邪気や穢れを封じ込めるところだというのです。
現に、令子さんは今までたくさんの曰くつきな物や悪霊を神社へ閉じ込め、
あの地域で暮らす人々の安泰を守ってきたのです。
令子さんは幼い頃から不思議な力を有していたといいます。そして、また娘さんも同じでした。
彼女は母のその思いに共鳴し、巷に溢れる邪気を神社へ取り込み人々を守ってきたのです。
けれど、娘さんはイジメに遭い徐々に心を蝕まれていった。
詳しくは知りませんが、酷い裏切りにもあったそうです。それでも彼女は必死に生きた。
母親の令子さんは大勢の人に助けを求めたようです。
先生や校長、娘さんと同じ学校のお友達。でも、誰も娘さんに救いの手を差し伸べてはくれなかった。
令子さんは娘さんのことを思い、栃木から離れた場所への進学を促しました。
神社は自分ひとりで守るから、あなたには新しい土地では友達をたくさんつくって楽しく幸せに暮らして欲しいと。
親心ですね、分かります。
けれど、悪意ある人間の手で必死に守っていた神社の結界が解かれた。
人間のありとあらゆる悪を詰め込んだ所業に、娘さんは絶望し、命を絶ちました。
最期は見るも無残にやせ細って、骨と皮になり苦痛の表情を浮かべてこの世を去ったそうです。
娘さんが亡くなり、令子さんはどうしても許せなくなったのです。
娘さんを死に追いやった人間を……。
イジメた人間を、イジメを許す人間を、イジメを見て見ぬふりする人間を。
令子さんは未婚の母で、娘さんはひとりだけでした。
もしも令子さんが亡くなれば、神社を守る者がいなくなる。
結界を解き、代々閉じ込めていた大量の邪気や穢れが出てきてしまえば、
確実に我々人間に悪影響を与えるというのです。
にわかには信じられない話でしたが、どうやら令子さんは本気のようでした。
娘さんをイジメた加害者……
いわば、呪い殺したい人間に彼女は呪いの手紙を送ったと教えてくれました。
全ての力をその手紙に込めたせいで、
令子さんの命はあと数日だろうとわざわざ丁寧に謝罪とお別れのメッセージまで送ってくれました。
『もしも回り回ってあなたを巻き込んでしまったら、本当にごめんなさい。結界を解くことで私が想像していないことが起こるかもしれません。呪いは伝染し、瞬く間に広がりさらに形を変えていくことでしょう。そうなったらもう止めるすべはありません』
半信半疑ながら、私は彼女に頼み込みました。
私の息子をイジメた加害者たちも一緒に呪い殺して欲しいと。
彼女からの最後の返信にはこう書かれていました。
『人を呪わば穴二つ。できれば、あなたには私のようにならず、真っ当に生きて欲しい』と。
そういえば、令子さんと同様に娘さんも言葉に強い呪いを込められると言っていました。
娘さんは誰かに呪いをかけたんでしょうか……?
令子さんとは残念ながらもう連絡はつきません。
解き明かすことはきっと一生できないでしょう。

