■栃木県●●町🔳🔳神社
翌日、医師と看護師に止められながらも、私は半ば無理矢理に退院しました。
予め美咲さんに神社の場所を聞いておいて正解でした。
コンビニでお金を下ろした後、私はひとり茉奈さんのお母様が代々受け継いできたという神社へ向かいました。
栃木県●町にある駅からバスを乗り継いだ場所にその神社はありました。
山の中にポツンっと私を迎え入れるように赤い鳥居が立ちそびえています。
奥へ進むと小さな神社を取り囲むように太く立派な古木が何本も立っていました。
そこはどこか異世界かのように少しだけ浮いている印象を受けました。
小さいながら由緒正しい神社ということが伺えます。
鬱蒼とした竹藪の中を進んでいくと、明らかに空気の淀みを感じました。
忌々しく穢れた雰囲気でしたが、ようやくここまでたどり着いたのです。
私は引っ張れるように歩を進めました。
辺りには恐ろしくなるほど静かでした。落ち葉を踏みしめて歩く私の足音と荒い呼吸だけが響いています。
しばらく歩くと、鳥居が見えてきました。
その先には賽銭箱を挟む様に大きな石が置かれています。
しめ縄は切れ、朽ち果てています。禍々しい雰囲気が漂う中、私は賽銭箱の前で両手を合わせました。
「願いが叶いました。ありがとうございます」
祈願成就のお礼の意味を込めて、帰りの電車賃とほんのわずかな生活費以外、今持っているすべてを私はこの神社の主へ捧げました。
そして、私は傳井茉奈さん、それからその母親である傳井令子さんのご冥福を心からお祈りしました。

