■美咲さんインタビュー
北京を探し出してくれたのに後出しじゃんけんみたいになってごめんなさい。
このままじゃヤバいんで、白状します。
実は、私たちがイジメてたのは北京だけじゃないんです。
同じクラスの『傳井茉奈』のこともイジメてました。
え、どうして黙ってたのかって?ああ、それにはちょっと事情があって。
それは後で話しますよ。
で、茉奈って悔しいけどめちゃくちゃ可愛い子だったんです。
このあたりにはいない美少女でした。
ただ、口数が少なくて大人しい子だったので、クラスのカーストは最底辺でした。
茉奈の母親は未婚で茉奈を産んだと聞きました。
母親の家系は代々小さな神社の管理を任されていたみたいで。
ていっても、神社は古くてくたびれてたし、参拝にくる人なんてほとんどいなかったと思いますよ。
うちのお母さんて神社のこととか結構詳しいんですよ。
で、あの神社はしめ縄が逆向きだって。
知ってました?しめ縄って向きがあるんですって。普通は太い部分を右側にするのに、あの神社は左側だって。
そんなことも知らなかったんですかね。今考えても笑っちゃう。
で、茉奈って大人しいんですけど妙に正義感が強い子だったんです。
北京がイジメられてるときにもひとりだけ絶対に笑ったりしませんでした。
北京が体操着を窓から放り投げられた時なんて、わざわざ階段を下りて拾いに行ってあげていたんです。
信じられます?あの北京にですよ?
そのとき北京は庇ってもらって心底嬉しそうに口をモゴモゴさせてましたけど。
でも、なんか……そういうのってムカつきません?
ああ……もしかしたら、あなたには分からないかもしれませんね。あなたってなんか……そう、正義感が強そうですし。
輪を乱す奴って大体嫌われるじゃないですか?なんかすっごい鼻についたんですよ。
顔が可愛いからって男子にも人気で。それでいて、スッと困ってる人に手を差し出すみたいなことして。自分のこと天使だとでも思ってんのって。マジで。
まあ古びた神社の娘ですけどね。
で、茉奈に告った奴も何人かいるらしくて。
でも、誰が告ってもって断ってたみたいで。その中にあっくんもいました。
あっくんってすごいプライドが高くて。
だから、どんな手を使っても茉奈を自分のものにしたかったんだと思います。
これは私がBに聞いた話だけど……、あっくん……中二の秋に……北京を使って茉奈のことを山に連れ出したって。
そこで、まあ無理矢理しちゃいけないことをしたみたいです。
どんなことかって?そんなの知りませんよ!でも、まあ想像はできますよね?
もちろん最後までじゃないらしいですけどね。ちょっとした悪戯ってやつです。
その場にはいたのは、あっくんとAとB……それに見張り役の北京。
北京は見張りもできず、ずっとごめんって茉奈に謝りながら泣いてたって聞きました。
自分が呼び出したせいで茉奈が大変な目にあってるのに。
泣けば許されるとでも思ってたんですかね。マジで馬鹿。
しかも、北京ってば、泣いてるくせに下半身が■ってたらしくて。チラチラ茉奈のことを見てはニヤニヤしてたって聞きました。
ホント、最低の変態ですよね。
でも、なにが最低って自分のことを庇ってくれた唯一のクラスメイトである茉奈をこっぴどく裏切ったことですよね。
あっくんたちは茉奈の裸の写真を撮って脅したようです。
その日からちょこちょこ茉奈のことを呼び出して、北京を見張りにして同じようなことを繰り返したらしいです。
AとBが自殺したっていう廃病院でもそういうことをしたって聞きました。
あっくんたちのイジメで、茉奈は日に日にやつれていきました。
そのまま朽ち果てて死んでくれたらいいって私ずっと思ってたんです。
だって、あっくんにあんなことやこんなことをされてズルいから。
私なら喜んであっくんとそういうことをするのに。なんでアイツなんだろうってずっと思ってました。
だから、私もあっくんに気付かれないように……徹底的に茉奈をイジメましたよ。
アイツの持ち物全部ゴミ箱に捨てて、上履きはトイレの便器に押し込みました。
教科書に『死ね』って書いたり、ビリビリに破いたりしました。
茉奈を体育館裏の倉庫に閉じ込めたこともありました。
『死ね』って言って蹴っ飛ばすと、『ごめんなさい』って体を震わせるんです。
でも、きっと、茉奈が私に屈したことは一度もありませんでした。
いつもいつも私を真っ黒な瞳でじっと見つめていました。
軽蔑されてるって思いました。なんでこんなに酷いことをするんだっていう非難の目でした。
自分でもね、こんなことしたらダメだって分かってたんですよ。
だけど、止められなかった。
茉奈は中学卒業後、栃木ではなく東京の学校に進学する予定のようでした。
あっくんが一度だけ『俺、東京行こうかな』ってぽろっと口にしたんですよ。
独り言だったと思うんですけど、私には確かにそう聞こえました。
このままじゃ茉奈にあっくんをとられるって不安になりました。
茉奈なんて、いっそ死んでくれたらいいのにって心で強く願いました。
だから、卒業式の前の日、私は茉奈があっくんに呼び出されている隙をついて神社へ行きました。
神社には本殿を挟む様に左右に大きな石がありました。
鳥居と左右の石は三角形にように配置されていて、しめ縄が結界のように張られていました。
茉奈が死んでくれることを願いながら賽銭箱の中にペットボトルの炭酸ジュースを流し込んだり、鳥居に油性ペンで落書きもしました。
当時、実家で飼っていた犬を連れて行っておしっこやウンチもさせました。
しめ縄も持ってきたカッターで時間をかけて切り裂いてやりました。
タブーっていわれてることを全部やってやりましたよ。
でもね、なにをやっても気持ちが晴れなくて。
だけどやってる途中で体が急に重たくなって疲れてきちゃったんです。いくら寂れた神社とはいえ、
私に荒らされて神様が怒ったのかも。
でも、私幽霊とかそういうオカルト系って全然信じてないし、まったく怖くありませんでした。
で、卒業式当日。
その日、茉奈は学校へ現れませんでした。
なんでって?神社の境内で首吊ったんですって。
その日の先生たちはみんなソワソワしてて落ち着かない様子でしたね。
まあ、卒業式に生徒が自殺したって聞いたら焦りますよね。
あの学校って隠蔽大好きでしたから。イジメを苦に自殺した可能性があると誰かが苦情を言っても、ありがたいことに平謝りするだけで先生たちは何もしなかったらしくて。
だから、茉奈のイジメも北京のイジメも黙殺されました。
ああ、茉奈?生きてますよ、多分。
一生介護生活だって聞きましたけど。
植物人間になっちゃったみたいです。
その後、茉奈がどうなったのかは知りません。
一時は同級生の間で話題に上がってましたけど、すぐにみんな興味を失ったので。
そんなものですよ、人間なんてみんな薄情なんだから。
もちろん、私もです。中学卒業後、あっくんと正式に付き合えるようになってあの女のことなんて頭から吹っ飛んでました。
罪悪感……?まさか。ありませんよ。だってもうずっと前の話ですよ?
どの学校にも多かれ少なかれイジメはありますもん。
まあ確かにちょっと酷いことはしましたけどね。でも、私だけじゃないし。
私の友達の瑠香も彩華も凛々子もみんな茉奈のことイジメてましたし。
そんなもんでしょ。
北京を探し出してくれたのに後出しじゃんけんみたいになってごめんなさい。
このままじゃヤバいんで、白状します。
実は、私たちがイジメてたのは北京だけじゃないんです。
同じクラスの『傳井茉奈』のこともイジメてました。
え、どうして黙ってたのかって?ああ、それにはちょっと事情があって。
それは後で話しますよ。
で、茉奈って悔しいけどめちゃくちゃ可愛い子だったんです。
このあたりにはいない美少女でした。
ただ、口数が少なくて大人しい子だったので、クラスのカーストは最底辺でした。
茉奈の母親は未婚で茉奈を産んだと聞きました。
母親の家系は代々小さな神社の管理を任されていたみたいで。
ていっても、神社は古くてくたびれてたし、参拝にくる人なんてほとんどいなかったと思いますよ。
うちのお母さんて神社のこととか結構詳しいんですよ。
で、あの神社はしめ縄が逆向きだって。
知ってました?しめ縄って向きがあるんですって。普通は太い部分を右側にするのに、あの神社は左側だって。
そんなことも知らなかったんですかね。今考えても笑っちゃう。
で、茉奈って大人しいんですけど妙に正義感が強い子だったんです。
北京がイジメられてるときにもひとりだけ絶対に笑ったりしませんでした。
北京が体操着を窓から放り投げられた時なんて、わざわざ階段を下りて拾いに行ってあげていたんです。
信じられます?あの北京にですよ?
そのとき北京は庇ってもらって心底嬉しそうに口をモゴモゴさせてましたけど。
でも、なんか……そういうのってムカつきません?
ああ……もしかしたら、あなたには分からないかもしれませんね。あなたってなんか……そう、正義感が強そうですし。
輪を乱す奴って大体嫌われるじゃないですか?なんかすっごい鼻についたんですよ。
顔が可愛いからって男子にも人気で。それでいて、スッと困ってる人に手を差し出すみたいなことして。自分のこと天使だとでも思ってんのって。マジで。
まあ古びた神社の娘ですけどね。
で、茉奈に告った奴も何人かいるらしくて。
でも、誰が告ってもって断ってたみたいで。その中にあっくんもいました。
あっくんってすごいプライドが高くて。
だから、どんな手を使っても茉奈を自分のものにしたかったんだと思います。
これは私がBに聞いた話だけど……、あっくん……中二の秋に……北京を使って茉奈のことを山に連れ出したって。
そこで、まあ無理矢理しちゃいけないことをしたみたいです。
どんなことかって?そんなの知りませんよ!でも、まあ想像はできますよね?
もちろん最後までじゃないらしいですけどね。ちょっとした悪戯ってやつです。
その場にはいたのは、あっくんとAとB……それに見張り役の北京。
北京は見張りもできず、ずっとごめんって茉奈に謝りながら泣いてたって聞きました。
自分が呼び出したせいで茉奈が大変な目にあってるのに。
泣けば許されるとでも思ってたんですかね。マジで馬鹿。
しかも、北京ってば、泣いてるくせに下半身が■ってたらしくて。チラチラ茉奈のことを見てはニヤニヤしてたって聞きました。
ホント、最低の変態ですよね。
でも、なにが最低って自分のことを庇ってくれた唯一のクラスメイトである茉奈をこっぴどく裏切ったことですよね。
あっくんたちは茉奈の裸の写真を撮って脅したようです。
その日からちょこちょこ茉奈のことを呼び出して、北京を見張りにして同じようなことを繰り返したらしいです。
AとBが自殺したっていう廃病院でもそういうことをしたって聞きました。
あっくんたちのイジメで、茉奈は日に日にやつれていきました。
そのまま朽ち果てて死んでくれたらいいって私ずっと思ってたんです。
だって、あっくんにあんなことやこんなことをされてズルいから。
私なら喜んであっくんとそういうことをするのに。なんでアイツなんだろうってずっと思ってました。
だから、私もあっくんに気付かれないように……徹底的に茉奈をイジメましたよ。
アイツの持ち物全部ゴミ箱に捨てて、上履きはトイレの便器に押し込みました。
教科書に『死ね』って書いたり、ビリビリに破いたりしました。
茉奈を体育館裏の倉庫に閉じ込めたこともありました。
『死ね』って言って蹴っ飛ばすと、『ごめんなさい』って体を震わせるんです。
でも、きっと、茉奈が私に屈したことは一度もありませんでした。
いつもいつも私を真っ黒な瞳でじっと見つめていました。
軽蔑されてるって思いました。なんでこんなに酷いことをするんだっていう非難の目でした。
自分でもね、こんなことしたらダメだって分かってたんですよ。
だけど、止められなかった。
茉奈は中学卒業後、栃木ではなく東京の学校に進学する予定のようでした。
あっくんが一度だけ『俺、東京行こうかな』ってぽろっと口にしたんですよ。
独り言だったと思うんですけど、私には確かにそう聞こえました。
このままじゃ茉奈にあっくんをとられるって不安になりました。
茉奈なんて、いっそ死んでくれたらいいのにって心で強く願いました。
だから、卒業式の前の日、私は茉奈があっくんに呼び出されている隙をついて神社へ行きました。
神社には本殿を挟む様に左右に大きな石がありました。
鳥居と左右の石は三角形にように配置されていて、しめ縄が結界のように張られていました。
茉奈が死んでくれることを願いながら賽銭箱の中にペットボトルの炭酸ジュースを流し込んだり、鳥居に油性ペンで落書きもしました。
当時、実家で飼っていた犬を連れて行っておしっこやウンチもさせました。
しめ縄も持ってきたカッターで時間をかけて切り裂いてやりました。
タブーっていわれてることを全部やってやりましたよ。
でもね、なにをやっても気持ちが晴れなくて。
だけどやってる途中で体が急に重たくなって疲れてきちゃったんです。いくら寂れた神社とはいえ、
私に荒らされて神様が怒ったのかも。
でも、私幽霊とかそういうオカルト系って全然信じてないし、まったく怖くありませんでした。
で、卒業式当日。
その日、茉奈は学校へ現れませんでした。
なんでって?神社の境内で首吊ったんですって。
その日の先生たちはみんなソワソワしてて落ち着かない様子でしたね。
まあ、卒業式に生徒が自殺したって聞いたら焦りますよね。
あの学校って隠蔽大好きでしたから。イジメを苦に自殺した可能性があると誰かが苦情を言っても、ありがたいことに平謝りするだけで先生たちは何もしなかったらしくて。
だから、茉奈のイジメも北京のイジメも黙殺されました。
ああ、茉奈?生きてますよ、多分。
一生介護生活だって聞きましたけど。
植物人間になっちゃったみたいです。
その後、茉奈がどうなったのかは知りません。
一時は同級生の間で話題に上がってましたけど、すぐにみんな興味を失ったので。
そんなものですよ、人間なんてみんな薄情なんだから。
もちろん、私もです。中学卒業後、あっくんと正式に付き合えるようになってあの女のことなんて頭から吹っ飛んでました。
罪悪感……?まさか。ありませんよ。だってもうずっと前の話ですよ?
どの学校にも多かれ少なかれイジメはありますもん。
まあ確かにちょっと酷いことはしましたけどね。でも、私だけじゃないし。
私の友達の瑠香も彩華も凛々子もみんな茉奈のことイジメてましたし。
そんなもんでしょ。

