■イジメ被害者X君との会話
「初めまして、本日はお忙しい中ご足労頂きありがとうございます。こちら謝礼となります。気持ちで申し訳ありませんがどうぞお納めください」
「ああ、どうも。って……え、これだけ?冗談でしょ?」
「申し訳ありません。フリーランスで活動しているのでこれが限界でして……」
「ああ、そう。じゃあ、手短に。この程度しかもらえないんじゃ、一時間付き合うのが限度だから」
「……分かりました。早速ですが、絹〇川中学校の●●敦也さんはご存じですか?」
「ええ」
「今までの取材で、中学時代、敦也さんと仲の良いご友人の二人がイジメ行為を行っていたという情報を得ました。なにかご存じですか?」
「……あなたの言い方、なんか嫌らしいよね。ねちっこいっていうか。ライターってみんなそうなの?ご存じかって聞くけど、俺がアイツらにイジメられたの知ってて聞いてるよね?それで、わざわざそれを隠してこうやって俺に会いに来たんでしょ?小賢しいなぁ」
「申し訳ありません……。実は、そういった情報も入手しております。それは、事実なんでしょうか?」
「ああ、事実だよ。中学時代、俺はアイツらに徹底的にイジメられたよ。当時は容姿に気を遣っていなかったから。今とは違って太っててブサイクだったからさ」
「いえいえ、そんな。●●さん、イケメンですしね。女性にモテますよね?」
「まあね。有名私立大を卒業してるし、勤めてる会社も一流企業だから、こちらから寄っていかなくても女は喜んで俺に寄ってくるよ。ほら、さっき隣のボックス席の女たちも俺のことうっとりした目で見てたでしょ?気付いた?」
「ああ……」
「え、その反応気付いてなかった?あなた、ライターでしょ?周りのこと全然見えてないじゃん。もうちょっとしっかりした方がいいと思うけど。それに、その――」
「すみません、さきほどの話に戻させていただきます」
「……いてっ」
「あの、どうされました?」
「いや、最近、仕事のし過ぎなのか片頭痛が酷くてさ」
「……そうなんですね。心配ですね。病院には?」
「行ったよ。頭痛だけじゃなくて耳鳴りもするから、脳神経外科でCTも撮ったんだ。でも、どこにも異常はなくて」
「頭痛と耳鳴り……。すみません、つかぬ事をお聞きしますが、最近、身の回りで不思議なことが起こったりしていませんか?」
「不思議なこと?」
「例えば、おかしな手紙が送られてきたり……」
「え。なに、なにか知ってるの?」
「今、その件で取材を進めていて――」
「……ちょっと待って。これを見てもらいたい」
「え、これって……」
「その反応、まさか知ってるの?」
「これ、ポストに投函されていたんじゃありませんか?」
「ああ、そう。そうなんだよ。うちのマンションのポストに投函されてたんだ。薄気味悪くて捨てようと思ったんだけど、もしも俺の身になにかあればこれが証拠になるかと思って捨てられなくて」
「実はこの手紙、敦也さんだけでなくイジメ加害者の二人にも届いていたんです」
「……は?これが?」
「ええ、敦也さんのお宅でこの手紙を拝見しました。あっ、写真を撮らせてもらったので、見て頂けますか?えっと……どこだ……ああ、これ。これです。同じだと思いませんか?」
「ああ……間違いない。これと同じだ。どうして奴ら三人と俺の元に同じ手紙が?」
「すみません、正直に申し上げると……この手紙を出したのは●●さんだと思っていたのですが……」
「え、俺?いやいや、わざわざこんな手の込んだことしないよ。三人の住所だって知らないし。ていうか、もしかしてあなた、俺がその三人のこと殺したとか思ってる?」
「いえ、そんなことは。三人とも警察が自殺と断定しています」
「それならいいけど、犯人に仕立て上げられたらどうしようかと思ったよ。俺は確かに中学の時、奴らにイジメられてたし、今も恨んでるよ。でもさ、今成功してるのは俺だよ?今の俺とアイツらは立場がまったく違いから。まあ、死んだって聞いて、正直清々してるけど」
「初めまして、本日はお忙しい中ご足労頂きありがとうございます。こちら謝礼となります。気持ちで申し訳ありませんがどうぞお納めください」
「ああ、どうも。って……え、これだけ?冗談でしょ?」
「申し訳ありません。フリーランスで活動しているのでこれが限界でして……」
「ああ、そう。じゃあ、手短に。この程度しかもらえないんじゃ、一時間付き合うのが限度だから」
「……分かりました。早速ですが、絹〇川中学校の●●敦也さんはご存じですか?」
「ええ」
「今までの取材で、中学時代、敦也さんと仲の良いご友人の二人がイジメ行為を行っていたという情報を得ました。なにかご存じですか?」
「……あなたの言い方、なんか嫌らしいよね。ねちっこいっていうか。ライターってみんなそうなの?ご存じかって聞くけど、俺がアイツらにイジメられたの知ってて聞いてるよね?それで、わざわざそれを隠してこうやって俺に会いに来たんでしょ?小賢しいなぁ」
「申し訳ありません……。実は、そういった情報も入手しております。それは、事実なんでしょうか?」
「ああ、事実だよ。中学時代、俺はアイツらに徹底的にイジメられたよ。当時は容姿に気を遣っていなかったから。今とは違って太っててブサイクだったからさ」
「いえいえ、そんな。●●さん、イケメンですしね。女性にモテますよね?」
「まあね。有名私立大を卒業してるし、勤めてる会社も一流企業だから、こちらから寄っていかなくても女は喜んで俺に寄ってくるよ。ほら、さっき隣のボックス席の女たちも俺のことうっとりした目で見てたでしょ?気付いた?」
「ああ……」
「え、その反応気付いてなかった?あなた、ライターでしょ?周りのこと全然見えてないじゃん。もうちょっとしっかりした方がいいと思うけど。それに、その――」
「すみません、さきほどの話に戻させていただきます」
「……いてっ」
「あの、どうされました?」
「いや、最近、仕事のし過ぎなのか片頭痛が酷くてさ」
「……そうなんですね。心配ですね。病院には?」
「行ったよ。頭痛だけじゃなくて耳鳴りもするから、脳神経外科でCTも撮ったんだ。でも、どこにも異常はなくて」
「頭痛と耳鳴り……。すみません、つかぬ事をお聞きしますが、最近、身の回りで不思議なことが起こったりしていませんか?」
「不思議なこと?」
「例えば、おかしな手紙が送られてきたり……」
「え。なに、なにか知ってるの?」
「今、その件で取材を進めていて――」
「……ちょっと待って。これを見てもらいたい」
「え、これって……」
「その反応、まさか知ってるの?」
「これ、ポストに投函されていたんじゃありませんか?」
「ああ、そう。そうなんだよ。うちのマンションのポストに投函されてたんだ。薄気味悪くて捨てようと思ったんだけど、もしも俺の身になにかあればこれが証拠になるかと思って捨てられなくて」
「実はこの手紙、敦也さんだけでなくイジメ加害者の二人にも届いていたんです」
「……は?これが?」
「ええ、敦也さんのお宅でこの手紙を拝見しました。あっ、写真を撮らせてもらったので、見て頂けますか?えっと……どこだ……ああ、これ。これです。同じだと思いませんか?」
「ああ……間違いない。これと同じだ。どうして奴ら三人と俺の元に同じ手紙が?」
「すみません、正直に申し上げると……この手紙を出したのは●●さんだと思っていたのですが……」
「え、俺?いやいや、わざわざこんな手の込んだことしないよ。三人の住所だって知らないし。ていうか、もしかしてあなた、俺がその三人のこと殺したとか思ってる?」
「いえ、そんなことは。三人とも警察が自殺と断定しています」
「それならいいけど、犯人に仕立て上げられたらどうしようかと思ったよ。俺は確かに中学の時、奴らにイジメられてたし、今も恨んでるよ。でもさ、今成功してるのは俺だよ?今の俺とアイツらは立場がまったく違いから。まあ、死んだって聞いて、正直清々してるけど」

