■美咲さんのインタビュー
私とあっくんは栃木県北部の田舎町にある絹〇川中学校で出会いました。
絹〇中学校は、少子化で子供が集まらないせいで、いくつかの小学校から寄せ集まった生徒で構成されていました。
生徒数は二十人の三クラスだから、学年全体で大体六十人ぐらいかな。
あっくんを入学式でみたとき、驚きました。
私の小学校にはいないタイプの男子だったから。
ヤンキーっていうんじゃないけど、
制服を着崩してる姿がスクールカーストの一軍なんだろうなってすぐにわかる雰囲気だったんです。
人の第一印象って顔と見た目でほぼほぼ決まるじゃないですか。
……ああ、すみません。で、あっくん、かっこよかったんです。
目はぱっちりじゃないし、むしろ一重で鋭いけどそういうところも男らしくて。
一年で同じクラスになって、しかも隣の席ですよ!
小学校時代の私は良く言えばいい子、悪く言えば地味で大人しい子だったんです。
いわゆるモブキャラです。
「お前、髪髪伸ばせば?」
ってあっくんに言われて、私嬉しくて嬉しくて。
だって、あっくんが私のこと見てくれたってことだから。
校則違反だったけど、眉毛もあっくん好みに細くしたし、髪の毛ももちろん伸ばしました。
スッピンは見せたくなくて、メイクして学校へ行くようになりました。
先生には怒られたし親にもブチ切れられたけど、それでもよかったんです。
だってあっくんが「前よりは可愛くなったな」って私を褒めてくれたから。
あっくんに出会ったおかげで私はモブを卒業することができたんです。
中二でも、私とあっくんは同じクラスでした。
あっくんはクラスどころか学年を牛耳り始めました。さすがあっくんですよね。
あっくんが廊下を歩けば、モブたちはみんな廊下をあける……想像つきます?
どの学校にもいるでしょう。そういうタイプのボス。
そう、あっくんはボスだったんです。唯一無二のね。
私はあっくんとちょこちょこおしゃべりできる女子だったんで、
なんか私まで偉くなったような気がして誇らしかったんです。
でも、あっくんってちょっと暴力的なところがあって。
『ぺきん』が……あ、ここでも分かりやすく『北京』って呼びますね。
あ、これは正式な名前じゃなくて北京原人にそっくりだから『北京』ってあだ名がついたんです。
それが今、私が探して欲しいって頼んだアイツです。
キッカケは思い出せないんですけど、あっくん、北京にちょっかいだすようになったんです。
ちょっかいっていうのは、廊下ですれ違いざまに蹴とばしたり肩パンしたり、
そんなぐらいです。よくあるじゃないですか、中学時代って。
男子同士が廊下でプロレスごっこして遊んだりするの。
それってイジメじゃなくて遊びでしょ?いじりともいうかな。
中二になって同じクラスになったんですけど、北京ってそういうところ頭固くて真面目だったんですよ。
しかも、要領悪いっていうか、バカ。そう、バカなんですアイツ。
プロレス技かけられて、鼻息荒くして顔真っ赤にして『こんな幼稚なことやめろよ!』ってボスのあっくんに盾突くんです。
マジで何様って感じでしたよ。だってそうでしょ?
北京は教室に友達もいないボッチで、いつもわけわかんないオカルトの本読んでるような奴だったんです。
『人を呪い殺すには』みたいな本を学校で読むとかキモすぎますよね。
見た目だって北京原人ですよ?
まーじで似てて、教科書見るたびに爆笑してましたもん。
そんなお前にあっくんがちょっかい出してやってんだから、マジ感謝しろって感じですよ。
お前みたいな奴じゃ、普通言葉も交わしてもらえないんだぞって。
本格的にあっくんがAを攻撃し始めたのは、給食当番を違う子にやらせたあっくんに「ずるっ」って呟いたからなんです。
普通、そんなこと言いませんよね?
マジで空気が読めないんですよ、アイツ。顔面なんてニキビまみれで、鼻のてっぺんなんてイチゴみたいでしたよ。
ぶつぶつの毛穴がマジできもくて。
みんな北京ってあだ名までつけていじってやってんのに、ホントノリ悪すぎでしょ。
ホント、信じられんない。あっ、すみません。
ちょっとしゃべりしすぎて喉乾いちゃった。飲んでいいですか?
……え?昼間からお酒飲むのかって?子供……?飲酒運転?
ああ、大丈夫ですよ。
家まで園バスで帰ってくるし……。えっと、どこまで話したっけ……。
あ、そうそう。北京だ。
アイツあっくんになにかされるたびに「やめろって」とか言い返すんですよ。やられても黙ってればいいのに。
だからどんどんエスカレートしていっちゃったんです。
ああ、どんな風にイジメてたか?
まあ色々やってましたよ。
面白かったのが、北京が廊下に出たタイミングで追いかけて行って体操着のズボンを下ろすことですかね。
ズボンだけのはずが勢い余ってパンツまで下ろしちゃって。
しかも、北京のパンツ白いブリーフだったんですよ!
今時白いブリーフはいてる中学生なんています?
私とかあっくんは大爆笑でしたけど、それを見てた女子生徒はビックリした顔して『キャー!』って叫んで逃げてましたよ。
え、北京の反応ですか?
マジでキモいいんですけど、アイツ笑ってたんですよ。
人って防衛本能があって、恐怖とか苦痛を感じると笑っちゃうことがあるみたいなんですけど、それだったのかな。
ははっ、それか、そういう性癖あったんですかね?見られたい願望っていうの?
だけど、さすがに女子に下半身見られてショックだったんでしょうね。
その翌日は学校に来ませんでした。で、アイツそれを親にチクったみたいで。
親が学校に乗り込んできたせいで、先生にあれこれ聞かれて最悪でしたよ。
しかもアイツ、メンタルは鬼で。次の週、平然と学校に来たんですよ。
信じられます?普通、親や先生にチクったらさらにひどいことをされるって思いません?
頭お花畑なんですよ、アイツも。学校に来させる母親も。
だから、あっくんと当時仲の良かった友達……仮にAとBとしましょうか。
Aは典型的なヤンキーでBはサッカー部のお調子者でした。
あっくんとそのふたりは徹底的に北京をイジメるようになりました。
……は?
今なんか言いました?え、言ってない?
ちょっとやめてくださいよ。マジで怒りますよ。
あなた今、私に『死ね』って言いましたよね。
謝ってくださいよ。死ねって言ったんだから、ごめんなさいでしょ!?
……は?インタビュー中断?
……ああ、少し休憩をとるってことですね。
まあ、別にいいですけど。
私とあっくんは栃木県北部の田舎町にある絹〇川中学校で出会いました。
絹〇中学校は、少子化で子供が集まらないせいで、いくつかの小学校から寄せ集まった生徒で構成されていました。
生徒数は二十人の三クラスだから、学年全体で大体六十人ぐらいかな。
あっくんを入学式でみたとき、驚きました。
私の小学校にはいないタイプの男子だったから。
ヤンキーっていうんじゃないけど、
制服を着崩してる姿がスクールカーストの一軍なんだろうなってすぐにわかる雰囲気だったんです。
人の第一印象って顔と見た目でほぼほぼ決まるじゃないですか。
……ああ、すみません。で、あっくん、かっこよかったんです。
目はぱっちりじゃないし、むしろ一重で鋭いけどそういうところも男らしくて。
一年で同じクラスになって、しかも隣の席ですよ!
小学校時代の私は良く言えばいい子、悪く言えば地味で大人しい子だったんです。
いわゆるモブキャラです。
「お前、髪髪伸ばせば?」
ってあっくんに言われて、私嬉しくて嬉しくて。
だって、あっくんが私のこと見てくれたってことだから。
校則違反だったけど、眉毛もあっくん好みに細くしたし、髪の毛ももちろん伸ばしました。
スッピンは見せたくなくて、メイクして学校へ行くようになりました。
先生には怒られたし親にもブチ切れられたけど、それでもよかったんです。
だってあっくんが「前よりは可愛くなったな」って私を褒めてくれたから。
あっくんに出会ったおかげで私はモブを卒業することができたんです。
中二でも、私とあっくんは同じクラスでした。
あっくんはクラスどころか学年を牛耳り始めました。さすがあっくんですよね。
あっくんが廊下を歩けば、モブたちはみんな廊下をあける……想像つきます?
どの学校にもいるでしょう。そういうタイプのボス。
そう、あっくんはボスだったんです。唯一無二のね。
私はあっくんとちょこちょこおしゃべりできる女子だったんで、
なんか私まで偉くなったような気がして誇らしかったんです。
でも、あっくんってちょっと暴力的なところがあって。
『ぺきん』が……あ、ここでも分かりやすく『北京』って呼びますね。
あ、これは正式な名前じゃなくて北京原人にそっくりだから『北京』ってあだ名がついたんです。
それが今、私が探して欲しいって頼んだアイツです。
キッカケは思い出せないんですけど、あっくん、北京にちょっかいだすようになったんです。
ちょっかいっていうのは、廊下ですれ違いざまに蹴とばしたり肩パンしたり、
そんなぐらいです。よくあるじゃないですか、中学時代って。
男子同士が廊下でプロレスごっこして遊んだりするの。
それってイジメじゃなくて遊びでしょ?いじりともいうかな。
中二になって同じクラスになったんですけど、北京ってそういうところ頭固くて真面目だったんですよ。
しかも、要領悪いっていうか、バカ。そう、バカなんですアイツ。
プロレス技かけられて、鼻息荒くして顔真っ赤にして『こんな幼稚なことやめろよ!』ってボスのあっくんに盾突くんです。
マジで何様って感じでしたよ。だってそうでしょ?
北京は教室に友達もいないボッチで、いつもわけわかんないオカルトの本読んでるような奴だったんです。
『人を呪い殺すには』みたいな本を学校で読むとかキモすぎますよね。
見た目だって北京原人ですよ?
まーじで似てて、教科書見るたびに爆笑してましたもん。
そんなお前にあっくんがちょっかい出してやってんだから、マジ感謝しろって感じですよ。
お前みたいな奴じゃ、普通言葉も交わしてもらえないんだぞって。
本格的にあっくんがAを攻撃し始めたのは、給食当番を違う子にやらせたあっくんに「ずるっ」って呟いたからなんです。
普通、そんなこと言いませんよね?
マジで空気が読めないんですよ、アイツ。顔面なんてニキビまみれで、鼻のてっぺんなんてイチゴみたいでしたよ。
ぶつぶつの毛穴がマジできもくて。
みんな北京ってあだ名までつけていじってやってんのに、ホントノリ悪すぎでしょ。
ホント、信じられんない。あっ、すみません。
ちょっとしゃべりしすぎて喉乾いちゃった。飲んでいいですか?
……え?昼間からお酒飲むのかって?子供……?飲酒運転?
ああ、大丈夫ですよ。
家まで園バスで帰ってくるし……。えっと、どこまで話したっけ……。
あ、そうそう。北京だ。
アイツあっくんになにかされるたびに「やめろって」とか言い返すんですよ。やられても黙ってればいいのに。
だからどんどんエスカレートしていっちゃったんです。
ああ、どんな風にイジメてたか?
まあ色々やってましたよ。
面白かったのが、北京が廊下に出たタイミングで追いかけて行って体操着のズボンを下ろすことですかね。
ズボンだけのはずが勢い余ってパンツまで下ろしちゃって。
しかも、北京のパンツ白いブリーフだったんですよ!
今時白いブリーフはいてる中学生なんています?
私とかあっくんは大爆笑でしたけど、それを見てた女子生徒はビックリした顔して『キャー!』って叫んで逃げてましたよ。
え、北京の反応ですか?
マジでキモいいんですけど、アイツ笑ってたんですよ。
人って防衛本能があって、恐怖とか苦痛を感じると笑っちゃうことがあるみたいなんですけど、それだったのかな。
ははっ、それか、そういう性癖あったんですかね?見られたい願望っていうの?
だけど、さすがに女子に下半身見られてショックだったんでしょうね。
その翌日は学校に来ませんでした。で、アイツそれを親にチクったみたいで。
親が学校に乗り込んできたせいで、先生にあれこれ聞かれて最悪でしたよ。
しかもアイツ、メンタルは鬼で。次の週、平然と学校に来たんですよ。
信じられます?普通、親や先生にチクったらさらにひどいことをされるって思いません?
頭お花畑なんですよ、アイツも。学校に来させる母親も。
だから、あっくんと当時仲の良かった友達……仮にAとBとしましょうか。
Aは典型的なヤンキーでBはサッカー部のお調子者でした。
あっくんとそのふたりは徹底的に北京をイジメるようになりました。
……は?
今なんか言いました?え、言ってない?
ちょっとやめてくださいよ。マジで怒りますよ。
あなた今、私に『死ね』って言いましたよね。
謝ってくださいよ。死ねって言ったんだから、ごめんなさいでしょ!?
……は?インタビュー中断?
……ああ、少し休憩をとるってことですね。
まあ、別にいいですけど。

