やっぱり、何かある、と思ったんですよ。
 死んだネコと同じ名前の福というラジオネームで「マオちゃんが大好きだよ。待ってる」っていう謎のメッセージが届いたんだから、きっと私を呼んでいるんじゃないか、ってね。
 ひょっとしたら、天国にいる福と出会えるかもしれないって、子どもみたいなことを考えていました。
 それで、そのメールに添付してあった神社の画像をよく見たんですけど、正直、場所がどこか分からないから、周りの人に聞きまくりました。もう必死に。
 ラジオ局のスタッフは誰も知らないって言うし、ご近所さんもさっぱりだし、困っていた時でした。
 地域のスーパーで買い物をしていたら、偶然、先日仕事でインタビューした伊藤さん、という男性に会ったんです。

 どうしてもあの神社の場所が知りたい私は、親しい間柄でもないのに、伊藤さんに図々しく神社の画像をスマホで見せて、場所を知っているか聞いてみました。
 すると、笑ったんです。そして「知っていますよ」と言ってくれました。
 その時、あれ? ってふと思ったんです。というのも先日インタビューした時に、この人、何か昔に、見たことがあるような……、って感じたんですが思い出せなくて……。でもこの笑顔は何か、記憶にあるんです。
 うーん、でも思い出せない。

 ただ、神社の場所を知っている人がようやく見つかりました。この神社は伊藤さんの近所だそうで、グーグルマップで神社の場所にピンを打って、そのアドレスをショートメールで私に送ってくれました。

 でも、一人で行くのは怖いんです。
 だから、カオリに死別した福の話ことを正直に話して、一緒に着いてきてもらうことにしました。
 カオリは、とても人付き合いがいいんです。
 私の仕事終わりにスタジオ前で待ち合わせて、車で神社に着いたら、辺りはすっかり暗くなっていました。

 境内に入ると、やっぱり怖かったです。
 でも「私はこんなの平気!」とカオリは楽しんでいました。
 そして、懐中電灯で照らしながら、「福ちゃん」なんて声をかけながら、本殿の周りをウロウロしました。
 すると、本殿に何やら生肉のようなものが供えてあるんですよね。気持ち悪いったらありゃしない。よく見ると、変な匂いがして、多分普通の牛肉とか豚肉じゃないと思います。

 
 その時です。
 ニャー、とネコの声が神社の奥の方から聞こえてきたんです。
 私は林になっている神社の奥へ、駆け込みました。
「福ちゃん、どこ?」
 もう、必死で懐中電灯を当てて声が聞こえた辺りを探しましたが、見つかりません。

 こんなことをしていた、私が悪いんです。

「きゃー! いやー」というカオリの声が鳥居の方からしたので、急いで戻りました。
 すると、カオリがいなくなっていて、そこにおびただしい血が地面に流れていました。

 私が悪いんです。
 カオリは一体、どこへ行ってしまったの?